KADOKAWA Technology Review
×
【春割】実施中!年間購読料20%オフ!
チャイナショック2.0——MIT教授が警告する米先端製造業の危機
Ryan Christopher Jones/The New York Times via Redux
ビジネス Insider Online限定
The latest threat from the rise of Chinese manufacturing

チャイナショック2.0——MIT教授が警告する米先端製造業の危機

マサチューセッツ工科大学(MIT)の経済学者デビッド・オーター教授は、10年前、中国からの輸入品によって数百万人の雇用が失われたことを初めて実証した。オーター教授は今、米国が先進製造業の競争に敗れた場合、さらに深刻な危機を迎えると考えている。 by David Rotman2025.09.09

この記事の3つのポイント
  1. 2013年にMIT研究者らが中国貿易拡大による米国製造業雇用240万人減少を実証し「チャイナショック」と命名した
  2. 従来の自由貿易理論に反し貿易影響地域では高賃金製造業が失われ低賃金サービス業に転換された
  3. 現在はAI・量子技術等の先端分野で「チャイナショック2.0」が進行し米国の技術的優位性が脅威にさらされている
summarized by Claude 3

10年前の研究結果は衝撃的なものだった。経済学の主流派はそれまでの長い間、自由貿易は総じて良いことだと主張していた。多少の勝者と敗者はいるかもしれないが、一般的には物価の低下と広範な繁栄をもたらすだろうというのが、その主張だった。その後、2013年に3人の学術研究者が説得力のあるエビデンスを持って、2000年代初頭から始まった中国との貿易拡大と、その結果もたらされた大量の安価な輸入品が、米国の多くのコミュニティにとって紛れもない災いとなり、欠かすことのできない大切な製造業を破壊してきたことを示した。

この研究者たちが2016年に「チャイナショック」と呼んだものの結果は、痛ましいものだった。2011年までに米国製造業で100万人、全体で240万人の雇用が失われたのだ。さらに悪いことに、そのような雇用の喪失は、経済学者たちが「貿易にさらされた」町や都市と呼ぶ場所に著しく集中していた。

今にして思えば、すべてはわかりきったことのように思える。だがそれはひとえに、マサチューセッツ工科大学(MIT)の労働経済学者デビッド・オーター教授たちによる研究結果が、しばしば歪曲されているとはいえ、最近の政治的ナラティブ(物語)として一般に受け入れられるようになったからである。つまり、「中国が私たちの製造業の雇用を破壊した!」ということである。この研究結果は微妙な意味合いが無視されることが多いものの、今日の政治不安の少なくとも一部を説明するのに役立つ。つまりこの研究結果が、米国の保護主義を求める声の高まりや、トランプ大統領の輸入品に対する広範な関税、そして失われてしまった国内製造業の栄光の時代への懐古の情に反映されているのだ。

当時のチャイナショックの影響は、いまだにこの国の多くに傷跡を残している。しかし、オーター教授は今、はるかに緊急性の高い問題と考えるものについて懸念している。その問題を、一部の人々は「チャイナショック2.0」と呼んでいる。オーター教授は、次の大きな製造業の戦いでは米国が敗れる危険性があると警告する。今回は、自動車や飛行機の他、人工知能(AI)、量子コンピューター、核融合エネルギーなどを作るための先端テクノロジーをめぐる戦いである。

私は最近、オーター教授にインタビューし、チャイナショックの長引く影響と、今日の製造業の課題に活かすことができる教訓について尋ねた。

——いまだに続くチャイナショックの影響はどのようなものでしょうか?

私は最近の研究論文で、2000年から2019年までの20年間のデータを検討しました。その中で、関連性のある2つの問いを立てようとしました。1つは、最も影響にさらされた場所に注目した場合、その場所はどのように適応したか?そして次に、最も影響にさらされた人々に注目した場合、彼らはどのように適応したか?という問いです。そして、この2つのことは互いにどのように関連しているのか検討しました。

その結果、2つのまったく異なる答えが得られました。最も影響にさらされた場所に注目する場合、そのような場所は大きな変貌を遂げました。製造業は、一度下り坂になると、決して元には戻りません。しかし、2010年以降、そのような貿易の影響を受けた地域の労働市場はちょっとした雇用回復を見せました。2010年以降、貿易の影響を受けた場所の雇用は、そうでない場所よりも急速に伸びたのです。多くの人々が入ってきたからです。しかし、そのほとんどは、低賃金部門での雇用です。たとえば、幼稚園から高校までの教育部門や、貿易対象ではない医療サービス部門。倉庫業や物流業。接客業や宿泊業、レクリエーション業など、低賃金の非製造業部門の雇用です。そして、そういった仕事は、実にさまざまな人々が担っています。

雇用の拡大は、女性、現地生まれのヒスパニック系米国人、外国生まれの成人、そして多くの若者たちの間で起こっています。この回復を演出しているのは、白人男性や黒人男性、とりわけ製造業の最も代表的な労働者だった白人男性とはまったく異なる人々のグループなのです。白人男性や黒人男性は、実際のところ、このルネッサンスには参加していません。

——雇用は拡大していますが、そのような地域は繁栄しているのでしょうか?

それらの地域はより低賃金の構造になっています。高賃金の雇用がより少なく、低賃金の雇用がより多い構造です。だから、「繁栄」の定義が所得の急速な上昇であるならば、繁栄していません。しかし、雇用は大きく増加しています。ゴーストタウンのようにはなっていません。しかし、製造業に最も集中していた人々、つまり、ほとんどが白人で、大卒ではない、現地生まれの男性に注目してみると、繁栄はしませんでした。そういった男性のほとんどは、製造業から非製造業に移行しなかったのです。

大きな驚きの1つは、人々が自分のいた場所を離れ、先に進むと、誰もが信じていたことです。しかし実際には、その逆でした。最も不利な状況にさらされている場所にいる人々が、そこから離れる可能性は低くなっています。流動性が落ちたのです。推定では、人々はより有利な …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中!年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. A new US phone network for Christians aims to block porn and gender-related content ポルノもLGBTも遮断、キリスト教徒向けMVNOが米国で登場
  2. Musk v. Altman week 1: Elon Musk says he was duped, warns AI could kill us all, and admits that xAI distills OpenAI’s models 「オープンAIを蒸留した」マスク対アルトマン第1週、法廷がざわめく
  3. Will fusion power get cheap? Don’t count on it. 核融合は本当に安くなるのか? 楽観論に「待った」をかける新研究
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
AI革命の真実 誇大宣伝の先にあるもの

AIは人間の知能を再現する。AIは病気を根絶する。AIは人類史上、最大にして最も重要な発明だ——。こうした言葉を、あなたも何度となく耳にしてきたはずだ。しかし、その多くは、おそらく真実ではない。現在地を見極め、AIが本当に可能にするものは何かを問い、次に進むべき道を探る。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る