KADOKAWA Technology Review
×
日本発・世界を変える「U35 イノベーター」募集中!
ライダーが捉えたLA火災——衛星では見えない詳細な変化を測定
COURTESY OF THE RESEARCHERS
How lidar measures the cost of climate disasters

ライダーが捉えたLA火災——衛星では見えない詳細な変化を測定

ライダー(LiDAR)の活用により、断層線のずれ、火山噴火、土砂崩れなど、災害のより微細な影響を特定することが可能になる。ロサンゼルスの山火事の被害をライダー技術で精密測定すると、衛星画像では判別できない建物や植生の消失を詳細が浮かび上がった。 by Jon Keegan2025.08.26

この記事の3つのポイント
  1. ライダー技術で2025年LA山火事の被害を精密測定。地形データ比較により建物や植生の消失を可視化
  2. レーザー反射時間の測定により衛星画像では判別できない微細な標高変化まで特定できる
  3. 山火事後の地滑りや土石流など気候災害の連鎖的影響を追跡する手法として活用されている
summarized by Claude 3

2025年1月にロサンゼルス郡を襲った山火事は 南カリフォルニアの景観に消えない傷跡を残した。イートン火災とパリセーズ火災は24日間にわたって猛威を振るい、29人が死亡し、1万6000棟の建造物が破壊され、損失は600億ドルと推定されている。5万5000エーカー以上が焼失し、景観そのものが物理的に変化した。

研究者たちは現在、ライダー(LiDAR:レーザーによる画像検出・測距)テクノロジーを使用して、景観の幾何学的変化を正確に測定しており、これにより気候災害の影響を理解することに役立てている。

ライダーはレーザー光パルスが地表で反射して戻るまでの時間を測定する技術で、数十年にわたり地形図作成に利用されてきた。現在では、航空機やドローンによる空中ライダーが地球表面を高精細にマッピングしている。科学者たちはそのデータを「差分」処理し、災害前後のスナップショットを比較することで、断層の移動、火山噴火、土砂崩れなど、より微細な影響まで特定できる。

カリフォルニア大学サンディエゴ校の工学教授であるファルコ・キューステルは、リアルタイムのリモートセンシングを用いて山火事の検出を支援する公共安全プログラム「アラートカリフォルニア(ALERTCalifornia)」の共同ディレクターを務めている。キューステル教授は、ライダーのスナップショットは時間を通じて「物語を語る」ことができると述べている。

「これらは私たちに地形の現状を示してくれます」と彼は言う。「特定の地域がその時点でどのような状態であったかを把握できるのです。そして、その後も飛行を継続すれば“差分”が可能になります。『以前はどう見えていたのか』『今はどうなっているのか』『何が変化したのか』――建物が建設されたのか? 焼失したのか? 崩落したのか? 植生が成長したのか?」

2025年1月下旬に火災が封じ込められた直後、アラートカリフォルニアはイートン火災とパリセーズ火災の焼失地域上空で新たなライダー観測を実施した。検査・エンジニアリング企業のNV5がスキャンを実行し、現在は米国地質調査所(USGS)が公開データセットを提供している。

2016年のデータと2025年1月のデータのスナップショットを比較して、アリゾナ州立大学のカサンドラ・ブリガム博士研究員らのチームは標高変化を可視化し、消失した建物や樹木、構造物を明らかにした。

「山火事の終了から数週間後に実施しているので、人々にできるだけ早く届けられる有用なものは何だろうかと考えました」とブリガム博士は述べる。彼女のチームは古い低解像度データを整理し、再フォーマットした後、新しいデータとの差分を取った。結果として得られた可視化されたデータは、衛星画像では表現できない規模で被害の大きさを明らかにした。赤は失われた標高(建物が燃えた場合など)を示し、青は増加(樹木の成長や新しい構造物の建設など)を示している。

ライダーは、気候変動による災害の連鎖的影響を追跡するうえで科学者を支援している。山火事による構造物や植生の破壊から、しばしばその後に発生する地滑りや土石流に至るまで、その影響は多岐にわたる。「例えばイートン火災やパリセーズ火災では、丘陵地全体が焼失しました。つまり、植生がすべて失われたのです」とキューステル教授は述べる。「そこに大気の川が流れ込み、大量の雨をもたらすと、次に起こるのは土石流、泥流、地滑りです」。

気候災害のコストを定量化する上でのライダーの有用性は、将来の火災、洪水、地震に備える上でのその価値を浮き彫りにしている。しかし、政策立案者が科学研究への大幅な予算削減を検討する中、これらの重要なライダーによるデータ収集プロジェクトは不確実な未来に直面する可能性がある。

ジョン・キーガンはテクノロジーと人工知能(AI)について執筆しており、政府データセットの厳選されたコレクションであるBeautiful Public Data(beautifulpublicdata.com)を発行している。

人気の記事ランキング
  1. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2026 「Innovators Under 35 Japan」2026年度候補者募集のお知らせ
  2. The UK’s generational tobacco ban might not work. I’m supporting it anyway. 2009年以降生まれには一生売らない——英「たばこ根絶」への賭け
  3. Claude Science is Anthropic’s newest flagship product アンソロピックが「Claude Science」、創薬に照準
ジョン・キーガン [Jon Keegan]米国版 寄稿者
地方、州、連邦政府機関が収集した視覚的に興味深いデータセットを編集したニュースレター『ビューティフル・パブリック・データ(beautifulpublicdata.com)』を執筆している。
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る