未来の職種:ドローンでクマとの共生目指す「野生動物の緊急対応員」
米モンタナ州のウェスリー・サルメントは、絶滅が危惧されるハイイログマと人間のトラブルを避けるため、緊急対応要員としての役割を果たしてきた。だが、危険を回避するためドローンの活用に切り替えた。 by Emily Senkosky2026.04.14
- この記事の3つのポイント
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- モンタナ州東部でグリズリーベアの個体数が大幅回復し、2017年に初の草原地帯専門管理官が雇用された
- 管理官は人身事故の危険から、従来の直接対応からドローンを活用した遠隔管理手法に転換した
- AI画像認識との統合により、ドローンが自動的にクマを識別・誘導する次世代野生動物管理の実現を目指す
グリズリーベア(ハイイログマ。ヒグマの亜種)が米モンタナ州東部一帯で大きく個体数を回復したことを受け、同州は2017年、草原地帯を担当する初のグリズリー管理官として、野生生物学者のウェスリー・サルメントを採用した。
約7年にわたり、サルメントは、絶滅危惧種法の下で今なお「危機にさらされている種」に指定されているクマと、かつては野生だった空間へと広がりつつある人間の双方を、トラブルから遠ざける仕事に従事した。人口2553人の小都市コンラッドを拠点に、彼は一種の緊急対応要員のような役割を果たし、危険に発展しかねない状況の沈静化に努めた。自身がそうした事態に巻き込まれたことさえあったため、博士号取得のためにこの職を離れる前に、仕事の進め方をドローン活用へと切り替えた。
クマの必需品
サルメントが初めてクマと関わる仕事をしたのは、グレイシャー国立公園でマウンテンゴートを研究していたときだった。頂点捕食者にゴートがどう反応するのかをより深く理解するため、彼は3年以上にわたり、週に一度クマの着ぐるみを着た。
その後、グリズリー管理官に就くと、彼はしばしば長距離を車で移動して、農場からクマを追い払った。クマはこぼれた穀物や漏れ出した穀物に引き寄せられ、開いたサイロはたちまち餌場と化す。サルメントは通常、散弾銃、クラッカーシェル、クマ撃退スプレーを携えて現場に向かったが、ある日、危うく襲われかけて難を逃れたことで、方針転換の必要を悟った。
「そのとき、『このままでは自分が殺されてしまう』と思ったのです」。
鳥の目の視点
サルメントは当初、農場でクマを遠ざけることで知られる犬種、エアデール・テリア2頭を頼りにしたが、犬たちは気をそらされやすかった。一方でドローンは、鳥の個体数調査や生息地の地図化をはじめ、さまざまな活動において、生物学者の間で次第に一般的なツールになりつつあった。
彼が初めてドローンを野外で投入したのは2022年、町外れのサイロをあさっている母グマと2頭の子グマが見つかったときだった。ドローンの赤外線センサーはクマの位置をすばやく特定するのに役立ち、彼は機体の音を使ってクマたちを敷地から追い払った(研究者たちは、クマがブレードのうなり音を本能的に嫌うのは、それがハチの群れの羽音のように聞こえるためではないかとみている)。「一連の作業はとてもすっきりしていて、管理もしやすかったです。それに、私はずっとトラックの中の安全な場所から対応できました」と彼は言う。
それ以来、サルメントが4000ドルで購入したこの飛行機械は、熱画像カメラを搭載し、バッテリー駆動時間30分という比較的シンプルなモデルではあるものの、密生したやぶや近づきにくい川沿いの低地など、本来なら徒歩で接近しなければならない危険な地形でグリズリーを見つけ出すうえで、その有効性を示してきた。
新たな技術の土台
現在、モンタナ大学で野生生物生態学を学んでいるサルメントは、キャンパス警察が大学構内からツキノワグマを追い払うために使えるドローンを設計したいと考えている。将来的には、AIによる画像認識が自身の野生生物管理の仕事に広く組み込まれ、ドローンがクマを識別して、人通りの多い場所から自律的に誘導することさえ可能になることを期待している。
こうした取り組みはすべて、クマが人間との衝突につながる行動を学習してしまうのを防ぐ助けになる。そうした衝突は、たいていクマにとって不幸な結末を招き、ときには人間にとっても命に関わる。
「既製品としてすぐ使える技術はまだありませんが、応用の可能性を探り続けたいのです」と彼は言う。「ドローンは次のフロンティアです」。
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- エミリー・センコスキー [Emily Senkosky]米国版 寄稿者
- モンタナ大学で環境科学ジャーナリズムの修士号を取得したライター。