気候も戦争も生活費も——
「ポリクライシス」世代を
支えようとする人たち
10カ国の子どもと若者1万人を対象にした2021年の調査では、56%が「人類は破滅する」という意見に同意した。彼らが不安を抱くのは気候だけではない。パンデミック、紛争、生活費の高騰、権威主義の台頭——複数の危機が重なる「ポリクライシス」の中で育つ世代を支えようと、支援ネットワークが生まれている。 by Sarah Scoles2026.09.04
- この記事の3つのポイント
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- 気候・経済・政治など複合的な危機に直面する若者の60%超が精神的困難を抱えており、その支援ニーズが急増している
- フォース・オブ・ネイチャーやGGN-Zは、不安を仲間と共有し行動へ転換するグループ型プログラムで数千人規模の若者を支援している
- こうしたプログラムの有効性を示す科学的エビデンスは乏しく、効果測定の体系化が実践者・研究者双方から求められている
2000年代後半のある日、ピム・サリバン=テイラーは、曾祖母が住むタイ南部の小さな町へ向かう車の後部座席に座っていた。窓の外には、大きな山々が次々と流れていく。彼女はまだ6歳だったが、まもなく大人さながらの気づきを突きつけられることになる。「山が採石されていたんです」と、サリバン=テイラーは言う。「山の半分が掘り取られて消えてしまったようで、巨大なオレンジ色の岩肌だけが残っていました」。
当時のサリバン=テイラーは、おそらく「採石場」という言葉さえ知らなかっただろう。それでも、目の前で起きていることが自然なものではないと感じた。また家族から、母親が若いころ近くの川で水浴びをしていたという話も聞いていた。川の水はガラスのように澄み、泳ぐ魚が見えるほどだったという。しかし、採石によって水は濁ってしまった。「私たちは物事を変えている」と、サリバン=テイラーは思った。「それは正しいことには思えませんでした」。
人間は世界を変えることができ、実際に変えている。それも悪い方向へ。彼女がそう気づいたのは、そのときが初めてだった。
サリバン=テイラーはその認識を胸に抱いたまま成長し、やがて家族とともに英国へ移住した。そこで彼女は、環境問題に取り組む団体を束ねる「スクールズ・サステナビリティ・ネットワーク(Schools Sustainability Network)」に参加し、他校の10代の若者たちと活動するようになった。
しかし、そうしたつながりがあっても、自分の学校では環境活動に関心を持つ人に出会えなかった。変化を起こしたいという思いを抱えながら孤独を感じ、一人で活動を続けることにも疲れ切っていた。「こういうことをやりたいと思っていたのは、ほとんど私だけでした」と、サリバン=テイラーは言う。
そんなとき、サリバン=テイラーは「フォース・オブ・ネイチャー(Force of Nature)」という別の取り組みを知った。英国を拠点とするこの団体は2021年、気候問題を心配する子どもや若者を対象に、「ビカミング・ア・フォース・オブ・ネイチャー(Becoming a Force of Nature)」という、一種の非公式なオンライン・グループセラピー・プログラムを立ち上げていた。サリバン=テイラーのような若者が抱える不安を行動へと変え、まさに彼女が感じていたような不安や燃え尽き感を和らげることを目指すものだった。
サリバン=テイラーは登録を済ませ、ほどなくZoom(ズーム)で初めてのセッションに参加した。画面には、数十カ国から集まった数十人の顔が並んでいた。「自分は一人ではないんだと気づきました」。
そして、自分の学校の子どもたちも、たとえ何も行動を起こしていなくても、実は自分と同じように感じているのではないかと思い始めた。
実際、サリバン=テイラーの考えは正しかった。世界各地で実施された調査によると、ほとんどの子どもたちが世界の現状に不安を感じている。しかも心配しているのは、海面や二酸化炭素排出量が今後も増え続けるかどうかだけではない。子どもたちは、一部の歴史家や政策立案者、経済学者が「ポリクライシス(複合危機)」と呼ぶ時代に育っている。地球は温暖化している。それだけでなく、パンデミックが起き、再び起きる可能性もある。紛争は次々と勃発し、核兵器は地下の発射施設に不気味に潜んでいる。住宅価格は手が届かないほど高騰し、食料品やガソリンさえぜいたく品のように感じられることがあり、医療費も急騰している。権威主義が台頭し、党派対立が社会を分断している。仕事は見つけにくく、AIがますます多くの仕事を奪うのではないかという不安も広がっている。そして、こうしたことすべて、さらにそれ以上のことについての通知が、分断を深めるデジタルのエコーチェンバーから24時間265日、休みなく届き続ける。
あまりにも多い。だからこそ、フォース・オブ・ネイチャーのようなオンライン・ネットワークが登場してきた。世界中を席巻するほどの規模ではないものの、すでに数千人が参加している。そして現在は、気候問題を単独の課題としてではなく、さまざまな問題を抱える世界の一側面として捉えるようになっている。その目的は、以前の世代よりも高い割合でうつや不安の症状を抱える若者たちが、自分たちが成長していく先にある、さまざまな要因が同時に変化する未来への感情と向き合えるよう支援することだ。
ただし、こうしたネットワークがどれほど有効なのかを検証する科学研究は、まだ始まったばかりだ。心理学の研究者や一部の実践者は、今こそこの分野そのものが効果を測定すべきだと指摘する。そうすれば、学校や保護者、そして子どもたち自身が、若者の気持ちを実際に楽にするには、どのプログラムに時間や資金を投じるべきなのかを判断できるようになる。
厳しい時代
気候危機に伴う実存的な不安は、あまりにも広く見られるため、何年も前から「エコ不安症」という名前が付けられている。「米国心理学会はこれを『環境破壊への慢性的な恐怖』と呼んでいます」と、ノッティンガム大学医学部の助教授で心理学者のリザ・ヤケンズは言う。「人々が語る感情は、むしろ悲嘆に近いものです。本物の喪失感です。これから起きることへの恐怖だけではなく、すでに失われてしまったものを悼む気持ちなのです」。
精神科医のリーゼ・ヴァン・サステレンは、これを「トラウマ前ストレス」と呼び、一種の予期性トラウマと捉えている。ヴァン・サステレンは、全米野生生物連盟が2012年に発表した報告書『地球温暖化が米国に及ぼす心理的影響』の共同執筆者でもある。
しかし、気候以外も含めた、世界で起きている「あれもこれも」に対する感情を表す言葉は、これといって存在しない。ポーランドの研究者が2025年に発表した研究では、さまざまな危機が入り交じる中で成人期を迎えつつある若者たちに見られる「ポリクライシス症候群」を定義しようと試みた。研究者たちは「フローリッシング・インデックス(Flourishing Index)」や「感情制御困難性尺度(Difficulties in Emotion Regulation Scale)」など、感情面・精神面の症状を測定する既存の尺度を使って、多重危機に対する若者の反応を評価した。「私たちの研究に参加した若者の大半が、心理的な困難を抱えています」と著者らは記している。実際、60%以上が、感情を調整することの難しさ、うつ症状、心身の健康状態の悪化といった問題を報告し、それらを世界情勢による累積的なストレスと結び付けていた。
この結果は、より気候問題に焦点を当てた以前の研究とも一致する。いわば、「子どもたちは大丈夫ではない」ことを示した研究だ。2021年、研究者たちは『ランセット・プラネタリー・ヘルス(The Lancet Planetary Health)』誌に、10カ国の子どもと若者1万人を対象に気候不安を調べた画期的な研究を発表した。約60%が気候変動について「非常に」または「極めて」心配していると回答し、45%以上が、エコ不安症によって日常生活に支障が出ていると答えた。当時、「ポリクライシス」という言葉は今ほど広く使われていなかったが、それでも回答者の56%が「人類は破滅する」という意見に同意した。
とはいえ、人類の行く末を心配するのはZ世代が初めてではない。現在の若者が抱える不安と直接比較できる基準は学術文献には見当たらないが、過去の研究からある程度の背景はわかる。冷戦末期にあたる1980年代初頭、米国48州の130校を対象にした調査では、高校最上級生の約35%が、「おそらく自分が生きている間に、核兵器か生物兵器によって全人類は滅亡するだろう」という意見に同意していた。ほぼ同じ時期のギャラップ調査では、10代の49%が、核戦争の可能性が将来設計に影響していると答えている。
ただし、当時若者だったベビーブーマー世代や、年長のX世代は、全体としては現在の子どもたちより楽観的だった可能性がある。この高校生調査では、大半の生徒が「人類はこれまでも厳しい時代を乗り越えてきたし、これからも乗り越えるだろう」という意見に同意していた。
こうした研究を分析し、米国科学アカデミーが1986年に発表した報告書では、恐怖を抱える子どもたちの孤独感を和らげるにはどう支援すべきかについて、こう述べている。「教育に携わる者に必要なのは、この問題につ …
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