KADOKAWA Technology Review
×
Innovators Under 35 Japan 2026 候補者募集開始!
23andMe Pulls Off Massive Crowdsourced Depression Study

大規模DNAデータベースで
うつ病遺伝子発見

コンピューターによる大規模な遺伝子検索により、うつ病患者に特有の遺伝子が発見された。 by Antonio Regalado2016.08.02

遺伝子解析会社23andMeが40万人以上の顧客DNAを科学的に探求し、うつ病の原因となる遺伝的手掛かりについて、大発見があった。

23andMeの研究は、この分野では最大規模で、重いうつ病にかかるリスクの高さに関連する15の領域をヒトゲノムに発見した。研究は23andMeと提携している大手製薬会社ファイザーが実施した。23andMeは遺伝子解析サービスを提供するカリフォルニア州の会社で、サービスを利用した人は120万人以上に上る。

現在までに、うつ病の遺伝的リスクを特定する取り組みの大半は、恐らく、何かを発見するには小さすぎたため、失敗に終わっている。

「人数の問題だ、と皆が気付きつつあります」と語るのは、ファイザーに勤務していた神経科学者で今回の研究を指揮し、現在はペンシルベニア大学希少疾病センター神経遺伝学部のアシュリー・ウインズロー部長。

「23andMeとの研究のような人数を扱うチャンスは、不可能ではないにしても難しいことです」

12万1380人
うつ病と申告した23andMeの顧客の人数

研究結果は「ゲノム全般関連研究」で判明した。この手法では、病気にかかった多くの人のDNAを、コンピューター検索によって、対照群となる健康人と比較する。病気の人により多く見られる遺伝子の有無が、どの遺伝子が関係しているかが判明するきっかけになるのだ。

遺伝子捕獲戦術は、糖尿病や統合失調症など、一般的な疾病に関する重要な洞察につながった。だがうつ病は現在までほとんど手付かずのままで、従来は重度のうつ病にかかった6000人の中国人女性の研究で、ゲノムに2つの兆候が見つかった程度で、他の研究では何も発見されなかったのだ。

「もっとも大きいのは、23andMeのおかげで、うつ病研究は新たな段階に達したことです」と語るのは、精神科医でスタンフォード大学のダグラス・レビンソン教授(遺伝子研究者)。遺伝子捕獲を目的とする精神科ゲノミクス協会にも関わっているレビンソン教授は「わくわくします。これで楽観的になれましたし、とうとうここまで来たかという感じです」という。

23andMeは遺伝子解析キットを100万個以上販売した。製品価格は199ドルで、人種的背景を発見するような娯楽が主な目的だ。しかし半数以上の顧客が自分のDNAを研究に使うことに同意しており、健康状態に関するアンケートに回答した。

調査によって、23andMeは、うつ病の診断を受けたと申告した14万1000人以上の遺伝子を分類していた。「14万人」は、以前に最大だったうつ病研究の、約10倍の規模だとレビンソン教授はいう。

遺伝学者は、さらに大規模なデータベースの必要性を切実に感じている。こうした要請により、米国政府は2016年、100万人の適確医療データベース計画を実行に移した。うつ病の遺伝的リスクは、実際には非常に小さな効果しか持たない何百もの遺伝子が関わっている。

研究結果の報告者は、この発見を23andMeのデータの賜物と呼んだ。だがうつ病は顧客データベースの完璧なテストケースでもあるとレビンソン教授は指摘した。うつ病は一般的な疾病で、もはや強い偏見はない。人々はうつ病であることを米国ではためらわずに明かす。

「もし統合失調症や拒食症だったら、おそらく失敗したでしょう。そのことを注意しておきたいと思います」

人気の記事ランキング
  1. It’s time to address the looming crisis in entry-level work. 「コーディングを学べ」もう通用せず、AIが若者の雇用を奪い始めた
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2026 「Innovators Under 35 Japan」2026年度候補者募集のお知らせ
  3. Anthropic’s Code with Claude showed off coding’s future—whether you like it or not 「Claudeに任せてしまおう」 たった1年で激変したソフトウェア開発
アントニオ・レガラード [Antonio Regalado]米国版 生物医学担当上級編集者
MITテクノロジーレビューの生物医学担当上級編集者。テクノロジーが医学と生物学の研究をどう変化させるのか、追いかけている。2011年7月にMIT テクノロジーレビューに参画する以前は、ブラジル・サンパウロを拠点に、科学やテクノロジー、ラテンアメリカ政治について、サイエンス(Science)誌などで執筆。2000年から2009年にかけては、ウォール・ストリート・ジャーナル紙で科学記者を務め、後半は海外特派員を務めた。
▼Promotion
社会実装都市「ひろしま」の魅力に迫る ローカル ✕ イノベーション
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る