KADOKAWA Technology Review
×
ヨーロッパで再生可能エネが化石燃料を抜いた日
Europe’s Blustery Weather Boosts Renewables to Record Highs

ヨーロッパで再生可能エネが化石燃料を抜いた日

2017年6月7日、英国、ドイツ、デンマークではクリーンエネルギーが化石燃料による発電量を大きく上回った。だが、クリーンエネルギーの課題も浮き彫りにしている。 by Jamie Condliffe2017.06.12

ここ1週間のヨーロッパ全土の天気は、心地よいと言えるようなものではなかった。確かに太陽はある程度の時間、顔を見せてはいたが、にわか雨や異常に強い風が吹き、北欧では屋外ダイニングの予定を台無しにし、英国ではクリケットの試合を中断させた。だが一方で、再生可能エネルギーの分野にはとんでもなく大きな恩恵をもたらした。

BBCは、6月7日の気象条件によって、英国では史上初めて、再生可能エネルギーの生産量がガソリンと石炭のエネルギー生産量を上回ったと報道している。英国はこれまでに風力発電に大きく投資しているが、6月7日の風力発電量は、この日に必要だった電力量の10%を占めた。太陽光、水力、バイオマス発電を加えると必要電力量の50.7%がクリーンエネルギーで賄われ、原子力発電を含めれば、なんと必要電力量の72.1%にまで跳ね上がったのだ。

ブルームバーグは、7日のある時点では、再生可能エネルギーの供給量がドイツの必要電力量の3分の2に達していたと報じている(ちなみにドイツの最高記録は、2017年4月に記録された85%だ)。また、7日未明には、風力発電量がデンマーク国内の必要電力量の137%に達した。

デンマークの数字は、再生可能エネルギーが直面している問題を示している。世界中にある発電用風車は、直近の問題解決にはならないということだ。風が吹けば発電量は莫大なものになるが、風が止まると、発電量はゼロになってしまう。また、発電量が過剰になっている時に電力を貯めておける大規模エネルギー貯蔵装置が、現時点では不足している。そのため、途切れ途切れになってしまう電力供給を安定させる方法はまだ存在しないのだ。バーチャル・パワー・プラント(VPP:仮想発電所)は役に立つかもしれないが、まだ初期段階だ。

とはいえ、再生ネルギーの流れは明白だ。再生可能エネルギーによって賄われるヨーロッパの必要エネルギー量はどんどん増えていて、その傾向は続きそうだ。風力発電への巨額の投資により、この先、北海に数百基の風車が立ち並ぶ光景が見られるようになるだろう。太陽光エネルギーのコストが急落を続けていることから、ヨーロッパ大陸全土で太陽光発電の導入はますます増加していくはずだ。今後、さらに新記録を観測する日々がやってくることは、間違いない。

幸運なことに、米国もヨーロッパに比べれば遅いかもしれないが、似たような歩みをたどっている。いま我々に必要なのは、いまだに実用化に至っていない、あの忌々しい蓄電装置だけだ。

(関連記事:BBC, Bloomberg, “北ヨーロッパの風力発電は 政治的にクリーンではない,” “高さ195メートル、世界最大の風力タービンが英国で稼働,” “出力が安定しない風力、太陽光発電を、どうすれば安定供給できるのか?”)

人気の記事ランキング
  1. Singapore’s police now have access to contact tracing data シンガポールの接触追跡アプリが方針転換、犯罪捜査でも利用可に
  2. The winners of Innovators under 35 Japan 2020 have been announced MITTRが選ぶ、日本発の35歳未満のイノベーターを発表
  3. Don’t panic about the latest coronavirus mutations, say drug companies 新型コロナ「変異種」を過度に恐れる必要がないこれだけの理由
  4. Don’t worry, the earth is doomed 人類を滅亡に導く、15の破壊的リスク
  5. The kitchen of the future is here, it’s just not evenly distributed 電子レンジ、真空調理器超える「キッチン・テクノロジー」の未来
タグ
クレジット Photograph by Frank Rumpenhorst | Getty
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
Innovators Under 35 Japan 2020

MITテクノロジーレビューが主催するグローバル・アワード「Innovators Under 35」が2020年、日本に上陸する。特定の分野や業界だけでなく、世界全体にとって重要かつ独創的なイノベーターを発信していく取り組みを紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Singapore’s police now have access to contact tracing data シンガポールの接触追跡アプリが方針転換、犯罪捜査でも利用可に
  2. The winners of Innovators under 35 Japan 2020 have been announced MITTRが選ぶ、日本発の35歳未満のイノベーターを発表
  3. Don’t panic about the latest coronavirus mutations, say drug companies 新型コロナ「変異種」を過度に恐れる必要がないこれだけの理由
  4. Don’t worry, the earth is doomed 人類を滅亡に導く、15の破壊的リスク
  5. The kitchen of the future is here, it’s just not evenly distributed 電子レンジ、真空調理器超える「キッチン・テクノロジー」の未来
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020SDGs Issue

今、世界中の企業や機関の技術者・研究者たちが各地で抱える社会課題を解決し、持続可能な世界の実現へ向けて取り組んでいる「SDGs(持続可能な開発目標)」。
気候変動や貧困といった地球規模の課題の解決策としての先端テクノロジーに焦点を当て、解決に挑む人々の活動や、日本企業がSDGsを経営にどう取り入れ、取り組むべきか、日本が国際社会から期待される役割について、専門家の提言を紹介します。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る