脳インプラントで失明治療
米国で臨床試験始まる
カメラが捉えた画像情報を電気的なパルスに変換して、脳の視覚野の表面に埋め込んだ電極に送れば、目の見えない人でも光のパターンを知覚できるはずだ。こうした仮説に基づいた脳インプラント手術の臨床試験を、米食品医薬品局が条件付きで認可した。 by Emily Mullin2017.09.25
特定形態の失明患者が限定的に視力を回復できる世界初の商業用人工網膜を製造した企業が、より多くの失明患者の視覚回復を目指して脳インプラントの臨床試験を立ち上げつつある。
セカンドサイト(Second Sight)が実施を予定している臨床試験は、脳の表面に一連の電極を配置することで、部分的もしくは完全に失明した患者が限定的な視覚を回復できるかどうかを調べるためものだ。研究者たちは過去数十年間にわたって、失明した人が視覚を取り戻せる脳インプラントの開発を試みて来たが、成果は限られたものだった。セカンドサイトの装置がうまく機能すれば、片眼や両眼を失った人を含む、世界中の何百万人もの失明した人を救うことも可能になる。
「オリオン(Orion)」と呼ばれるこの装置は、カメラを取り付けた眼鏡と外部機器で構成するセカンドサイトの現行製品「アーガス II バイオニック・アイ(Argus II bionic eye)」の進化版である。米食品医薬品局(FDA)は、ベイラー医科大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の2拠点で、5人の患者による小規模な臨床試験を条件付きで認可した。セカンドサイトは臨床試験を開始する前に、まだ装置のテストを続け、いくつかの問題を解決する必要があるが、2017年10月には患者を登録して年末までには最初のインプラント手術を実施したい考えだ。
セカンドサイトは2011年、ヨーロッパでアーガスIIの認可を最初に獲得し、2013年にはFDA認可も受けた(「Bionic Eye Implant Approved for U.S. Patients」を参照)。同製品以降、ヨーロッパでは他に2つの網膜代替装置が認可されている。一つはフランス企業のピクシウム・ビジョン(Pixium Vision)のもの、もう一つはドイツ企業のレティーナ・インプラント(Retina Implant)のものだ。
「バイオニック・アイ(人工眼)」としても知られるこれら3つの装置は、網膜色素変性症と呼ばれる遺伝的な眼の病気の患者の視力を一部回復させることを目的としている。網膜色素変性症は、光受容細胞という光を感知する網膜(眼球の後ろ側にある膜)上の細胞が壊れて視力を徐々に失う病気だ。世界でおよ …
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