KADOKAWA Technology Review
×
【4/24開催】生成AIで自動運転はどう変わるか?イベント参加受付中
My Self-Driving Uber Needed Human Help

ウーバーの無人タクシー実験
試乗レポート

ウーバーがピッツバーグで実証実験を始めた半自律型タクシーに乗ってみると、テクノロジーはまだ未熟であることを体験できる。 by Will Knight2016.09.15

14日の朝、大勢の人がピッツバーグでウーバーを予約し、自動運転の実証実験車で市内をドライブした。

ウーバー先進テクノロジーセンター(ピッツバーグ)のラフィ・クリコリアン所長は「ピッツバーグの特に重要なお得意様を少しずつ未来の体験に招待しています。いまこの街で配車を予約すると、自動運転のウーバーやって来るかもしれません」と述べた。

自動運転のウーバーには、実際には緊急時に運転を代わるドライバーも同乗する。今週初めに私自身が試乗したとき、この安全策はありがたかった。

ピッツバーグは、間違いなく、自動運転車にとって難易度の高い環境だ。道幅が狭く、混雑しているうえ、一部の道路には歩行者や自転車がとても多い。大雪が降ることもあるピッツバーグの気候も難易度を高める要因だ。従来、ほとんどの自動運転車は、カリフォルニアやネバダなど、日差しが強く、照度が高い条件の州で実験されていた。ウーバーは、自動運転車が雨や雪の中でも走行できるというが、その場合、監視を強化する必要がある。

クリコリアン所長は「ピッツバーグは、実験に最適の環境です。いろいろな意味で、上級車向けの運転コースです」という。

ウーバーの車両は各種センサーを装備している。ルーフトップには回転式ライダー(レーザー式測距装置)をはじめとする7つのレーザーを装備し、車両の前面と側面に20種類のカメラ、2台で周囲360度をカバーするレーダー、GPS、慣性計測装置(IMU)を搭載している。

鉄鋼業で栄えた古い産業地域にあるウーバーの実験施設から数kmの試乗中、難易度の高いさまざまな状況に遭遇したが、機械の運転はたとえば、路上に飛び出す歩行者にも対応するなど、見事だった。ただし、運転席にいる係員が制御する場面も何度かあった。トラックの後ろに付くように止めたり、別の自動車の急転回を避けるために介入したりしたのだ。

カーネギーメロン大学の全米ロボットエンジニアリングセンター(自動自動車などのロボット工学テクノロジーの事業化を支援する同大学の下部組織)のハーマン・ハーマン所長は、ウーバーが完全に運転手を必要としない状態になることには懐疑的だ。ハーマン所長は、今回の実験では、ウーバーが無人乗用車をどこに送るかを選べる点で有利だという一方で、安全性と信頼性の保証は十分にはできないだろうと付け加えた。

「自分が乗る立場になったら、立ち往生や衝突はごめんですよ」

事実上すべての自動車メーカーと、グーグルやアップルといった他業種の企業が自動運転システムを開発中だ。米国だけで市場規模が数兆ドルの運輸業界にテクノロジーで食い込めるチャンスだと狙っているのだ(「無人タクシー実車へ 実証試験に自動車業界が注目」参照)。

ウーバーの実証実験は、一般が参加する点で珍しく、このテクノロジーに人々がどう反応するかを見る絶好の機会になる。ウーバーの車両には、車載センサーや自動車が取ろうとしている動き(操舵やブレーキなど)を示すディスプレイが車内後部座席の前面に設置されている。ディスプレイは見ていて非常に面白いが、自動車が取ろうとする動きは、必ずしも常に明解には説明されない。

自動運転の実現に向けたウーバーの野心的取り組みは、輸送業界全体で感じられる動向を反映している。自動車メーカーやその他の企業がライドシェア型のビジネスを模索するなか、評価額500億ドルを超えるウーバーは、流れに取り残されないよう常にテクノロジーの成長曲線より先を行く必要に迫られているのだ。

そこでウーバーは、自社製の自動自動車を極めて短期間に開発した。ウーバーが設立されたのはグーグルが自社製自動運転車の開発に着手した2009年。ウーバーの先進テクノロジーセンターは、ほんの18カ月前に開設されたばかりだ。

人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
ウィル ナイト [Will Knight]米国版 AI担当上級編集者
MITテクノロジーレビューのAI担当上級編集者です。知性を宿す機械やロボット、自動化について扱うことが多いですが、コンピューティングのほぼすべての側面に関心があります。南ロンドン育ちで、当時最強のシンクレアZX Spectrumで初めてのプログラムコード(無限ループにハマった)を書きました。MITテクノロジーレビュー以前は、ニューサイエンティスト誌のオンライン版編集者でした。もし質問などがあれば、メールを送ってください。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る