KADOKAWA Technology Review
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White House Hopes More Companies Follow Google in Using Ad Tech Against ISIS

グーグル、
アドテクでISISと交戦中

ネット広告は、爆薬や弾丸と同じく、対テロ戦争の武器になる。 by Tom Simonite2016.09.16

ターゲティング広告のアルゴリズムは、グーグルやフェイスブックといった企業の利益を劇的に押し上げたことで効果を証明した。オバマ政権のジェン・イースタリー大統領補佐官(テロ対策担当)は、イスラム国(ISIS)の引き締めにも役立つという。

イースタリー補佐官は15日、グーグルでISISに好意的な検索語を使った者に、過激思想の離脱者やイスラム指導者が英語とアラビア語でISISを批判しているYouTube動画のリンクを提示する実験プロジェクトを称賛し、政府はテック企業に何かしろという立場にないとしながら、グーグルのようなプロジェクトが増えることを歓迎した。

大統領補佐官であり、国家安全保障会議でテロ対策の上級局長職を務めるイースタリー補佐官は、クラウドフレア主催のインターネットテクノロジーと政策についてのイベントで「それなりに成功したといえる大変面白いアイデアでした。このプロジェクトはとてもよいと思います」と述べた。

イースタリー補佐官や民間のテロリズム専門家は、ISISの台頭に対して、ソーシャルメディアによる機転のきいたメッセージが重要な役割を果たした、という(“Fighting ISIS Online”参照)。イースタリー補佐官は15日、ソーシャルメディアの勧誘戦略に基づいた巧妙な動画広告がISISに支持者を引き寄せることや、他の国の支部組織の始動に寄与し、昨年のブリュッセルやパリの攻撃をもたらした、といった。

グーグルによるISIS支持者への広告テクノロジーの使用は、テック業界がISISとの戦争にどう貢献できるかについて政府高官とテック企業の幹部が検討した会議に影響されたようだ。この会議は昨年12月に起きたサンバーナディーノ(カリフォルニア州)で発生したISIS支持者2人による銃乱射事件を受けて開かれ、ホワイトハウスの上級職員がISISのオンライン活動をどう制御できるか話すためにテック企業の幹部と会った。

政府とテック企業のトップ同士の会議以降、ツイッターは、ISIS支持者がソーシャルネットワークを使いづらくしようとしており、8月には2015年中頃からテロリズムを賞賛する36万のアカウントを停止したと発表した。

グーグルやツイッターといったシリコンバレーの企業は長く、プラットフォーム上でユーザー同士が話す内容には責任を負わないと主張してきた。ホワイトハウスは、テック企業にテロ対策の協力を要請することは「多くの複雑な、憲法修正第1条で保障された権利(政教分離原則,信教・表現の自由)をめぐる問題」を引き起こすと認めている。

しかし、テロリストの発言を制御できなければ、その企業は、テロ関連組織への「物質的援助」を禁止する米国法上の責任を負うことになるかもしれない。最近グーグルは、給与担保型ローンの広告を禁止し、サイト上のコンテンツの規制について、より積極的な役割を果たそうとしている。

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トム サイモナイト [Tom Simonite]米国版 サンフランシスコ支局長
MIT Technology Reviewのサンフランシスコ支局長。アルゴリズムやインターネット、人間とコンピューターのインタラクションまで、ポテトチップスを頬ばりながら楽しんでいます。主に取材するのはシリコンバレー発の新しい考え方で、巨大なテック企業でもスタートアップでも大学の研究でも、どこで生まれたかは関係ありません。イギリスの小さな古い町生まれで、ケンブリッジ大学を卒業後、インペリアルカレッジロンドンを経て、ニュー・サイエンティスト誌でテクノロジーニュースの執筆と編集に5年間関わたった後、アメリカの西海岸にたどり着きました。
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