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IVF技術の50年、「作り話だと思っていた」が普通になるまで
Photo Illustration by MITTR / Photos Getty
Here’s how technology transformed babymaking

IVF技術の50年、「作り話だと思っていた」が普通になるまで

世界初の試験管ベビーが誕生してから50年近くが経った。当初12〜15%だったIVFの成功率は、培養液の改良とガラス化技術の導入によって大きく向上した。「そんなことは不可能だ」「作り話だ」と思われていた技術が今や当たり前となり、生殖に対する私たちの考え方を大きく変えた。 by Jessica Hamzelou2026.05.12

この記事の3つのポイント
  1. 培養液改良や胚凍結技術の進化により、IVFの成功率は1990年代の12〜15%から大幅に向上した
  2. ガラス化凍結法の普及で多胎妊娠リスクや卵巣過剰刺激症候群が低減され、安全性が飛躍的に高まった
  3. IVFは不妊治療を超え、妊孕性温存やがん患者の生殖選択肢拡大など、生殖医療の根幹を再定義しつつある
summarized by Claude 3

テクノロジーは、私たちの出産のあり方を変えつつある。体外受精(IVF)を発明した科学者たちの先駆的な研究により、1978年に最初の「試験管ベビー」が誕生した。それ以来、私たちははるかに長い道のりを歩んできた。

先日、私はIVF技術の最前線と今後の展望について記事を執筆していた。人工知能(AI)やロボット、そして場合によっては遺伝子編集胚といった技術が登場しつつある。

取材を通じて、過去50年間でどれほどの進歩が遂げられてきたかを改めて考えさせられた。臨床医はホルモン療法を改善し、胚培養士は胚を実験室でより長期間培養する方法を考案してきた。現在のIVFクリニックでは、胚に対して複数の遺伝子検査が提供されている。

近年では、3人のDNAを持つ赤ちゃんの誕生、「移動式IVF」による赤ちゃんの誕生、数十年前の胚から生まれた赤ちゃん、さらには精子注入ロボットの補助によって「受精」した赤ちゃんの誕生といった報告が相次いでいる。

IVF技術は社会的にも大きな影響を与えてきた。家族の形の変化を可能にし、子どもを望む人々により多くの生殖の選択肢をもたらしてきた。ここでは、出産のあり方を一変させてきた技術について考えてみたい。

ボストンIVFの生殖内分泌専門医、アラン・ペンジアスは、1990年代初頭からIVFに携わってきた。当時、イェール大学の彼の研究室では、患者から卵子を採取し、受精させ、得られた胚を2日間培養していた。その時点で胚は2〜4細胞期に達していた。

当時、胚は体外ではそれ以上生存できなかったため、その時点ですべての胚が子宮に移植されていた。たとえば胚が5個あったとしても、すべてだ。典型的な健康な患者の成功率(生児出生率)は12〜15%程度だったと彼は言う。

その後、ペンジアス医師は他のチームが胚を3日間培養することに成功しているという話を耳にした。「そんなことは不可能だと思いました」と彼は振り返る。そして、科学者たちが、胚を育てる栄養豊富な液体である培養液に改良を加えることで、これを実現したと知った。

6〜10細胞期に達したその3日目の胚は、生児出生につながる可能性がより高いように思われた。胚をより長く培養したチームでは、同様の患者群において成功率が25%まで上昇したとペンジアス医師は言う。それでも彼には信じられなかった。「作り話だと思っていました」。

その後の数年間で、各チームは培養液をさらに改良してきた。現在、ほとんどのIVF胚は5〜6日間培養され、この時点で胚は80〜100個の細胞を持つ。培養プロセスはある種のストレステストとして機能する。6日目まで生き残った胚は、一般的に最終的に健康な赤ちゃんへと発育する可能性が高い。

同じ期間に、他の技術の進歩により、それらの胚に対してできることの選択肢が広がった。科学者たちは胚を凍結して後日使用できることを発見した。10年余り前、クリニックは胚を急速冷却してガラス状態にする「ガラス化(vitrification)法」と呼ばれる手法に移行した。ガラス化された胚は凍結・融解後の生存率が高いため、この手法はすぐに普及した

その結果、医師は複数の胚を一度に移植する必要がなくなった。これにより、患者が双子や三つ子を妊娠する可能性が低下した。多胎妊娠は妊娠合併症のリスクを高めることがある。

ガラス化はその他の面でもIVFをより安全にしている。たとえば、不妊治療の間に患者が少し時間を置けるようになった点が挙げられる。IVFの第一段階で使用されるホルモン療法は、採取できる成熟卵子の産生を増やすことを目的としている。これらの治療には、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼ばれる状態を引き起こす小さなリスクがあり、まれに生命を脅かすこともある。すべての胚を凍結して後日使用できるようになったことで、身体がホルモン療法から回復する機会が生まれ、OHSSのリスクが低減されると考えられている。

また、クリニックが胚を最長1週間培養できるようになったことで、胚を凍結する前に100個程度の細胞のうち数個を採取して遺伝子検査に送ることが可能になった。IVFを受ける人は、どの胚を移植するかを決める前に、すべての胚の遺伝情報を得ることができる。(ただし、これらの検査技術が完全ではない点は留意する必要がある。)

「これらは本当に革命的な変化であり、私たちはそれを当たり前のこととして受け止めています」とペンジアス医師は言う。

これらの技術はIVFの役割も変えてきた。かつては不妊治療として用いられていたものが、今では妊孕性(にんようせい)の温存にも活用されている。親になることを先延ばしにしたい人は、卵子や胚を凍結して後日使用することを選択できる。1年後に1つの胚を移植し、数年後にもう1つを移植するという選択も可能だ。「女性がより多くの生殖の選択肢を持ち、1回のIVFサイクルからより多くの生殖の可能性を引き出せるよう、力を与えることができるようになりました」とペンジアス医師は言う。

精巣や卵巣にダメージを与える可能性があるがん治療を受けようとしている人も、事前に卵子や精子を保存することを選択できる。科学者たちは卵巣や精巣の組織片を保存して後日再移植することにも成功しており、それによって健康な赤ちゃんを持てるようになった人もいる。

現在、これまで以上に多くの人々が、親になるための複数の道を提供する安全なIVFの選択肢を利用できるようになっている。その選択肢はさらに広がっていくと見られている。ただし、AIやIVFロボットについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をお読みいただきたい。

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ジェシカ・ヘンゼロー [Jessica Hamzelou]米国版 生物医学担当上級記者
生物医学と生物工学を担当する上級記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、ニューサイエンティスト(New Scientist)誌で健康・医療科学担当記者を務めた。
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

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