オープンAI株を米政府に? アルトマン「AI配当」構想の真意
オープンAIが自社株の5%を米政府に付与する案を、トランプ政権と協議していると報じられた。実現すれば、米国の1世帯当たり約320ドルの株式が分配されることになるが、サム・アルトマンCEOは同様の構想を5年前から語っており、政策というよりも、人々を納得させるための物語として機能することを狙っているのかもしれない。 by James O'Donnell2026.07.08
- この記事の3つのポイント
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- アルトマンCEOがオープンAI株5%を米政府に付与する案をトランプ大統領と協議中と報じられた
- 付与の根拠はAI学習に用いた人間の創作物への補償と、雇用崩壊リスクへのセーフティネットの2点
- 実現可能性は低く、AIブームの恩恵が広く共有されると世論を説得する「物語」として機能している
オープンAI(OpenAI)のサム・アルトマンCEO(最高経営責任者)が繰り返し語ってきた「人工知能(AI)が生み出す富を米国人と分かち合う」という約束が、再び注目を浴びた。フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)は7月2日、アルトマンCEOがトランプ大統領とオープンAIの株式5%を米国政府に付与することについて協議中だと報じた。
ある意味で、アルトマンCEOの計画は目新しいものではない。彼は2021年にすでに、より急進的な案を提示しており、一定の評価額を超えるすべての企業(AI企業に限らず)が毎年、市場価値の2.5%を基金に拠出し、米国民に毎年配当を支給することを提案していた。2026年4月にオープンAIが公表した限定的な提案は、アルトマンCEOがトランプ大統領と協議中と報じられている内容により近い。この構想は幅広い政治的支持を集めており、バーニー・サンダース上院議員は主要AI企業の株式50%を米国民に付与することを提案している。
この構想の理屈は何か。 受益者となる側にとっては、2つの理由がある。第一に、AIは書籍、映画、芸術作品といった人間が生み出したコンテンツから直接学習しているにもかかわらず、AI企業はそれらの創作者に対して一般的に対価を支払っていない。無償の株式付与は、遅ればせながらの補償として機能しうる。第二に、AIが労働市場の崩壊を招くという広範な不安(経済学者の見解は分かれているが)に対するセーフティネットとして、配当が機能し得る。
そのセーフティネットがどれほど大きなものになるかは議論の余地がある。オープンAIの最新提案の詳細は明らかになっていないが、仮に政府がこの株式持分を米国民に直接分配するとしよう。同社は3月の資金調達ラウンドで8520億ドルと評価されており、5%の持分は現在約426億ドルに相当する(同社は1兆ドルの評価額に達するまでIPOを延期する方針と報じられているが、データセンターへの多額の投資が続き、いまだ黒字化していないことを考えると、高いハードルだ)。
この426億ドルを米国の約1億3300万世帯に均等分配すれば、1世帯あたり約320ドルの株式を受け取る計算になる。しかし他の政府系ファンドと同様に運用するのであれば、政府は株式を直接国民に渡すのではなく、基金を運用・成長させたうえでその運用益の一部を国民に分配する形となるだろう。AI企業が持続的な黒字化を実現できれば、より大きな配当をもたらす可能性もある。
この配当が実現した場合、テック企業にとっての旨みは何か。アルトマンCEOは、配当の約束によって世論をAI企業に対してやや好意的な方向に動かせると期待しているのかもしれない。米国人の大多数は企業がAIを責任ある形で活用することを信頼しておらず、自分たちの地域へのデータセンター建設に反対しており、半数はAIが日常生活にじわじわと浸透していることに期待よりも不安を感じている。
しかしオープンAIにとってより大きな果実は、トランプ政権がテック分野の取引を好んでいるという点にあるかもしれない。インテル(Intel)への株式参加や、エヌビディア(Nvidia)の対中販売収益の分配など、その他の案件も含め、政権との良好な関係を維持することは、現在のAI企業にとって極めて重要だ(アンソロピック=Anthropic)の例を見れば明らかだろう)。それは、自社モデルがサプライチェーンリスクと認定されるのを回避することや、中国のライバル企業を牽制するためのホワイトハウスからの支援を得ることを意味しうる。
私が最も感じるのは、これらの計画が現時点では政策というよりも一種の物語として機能しているということだ。 アルトマンCEOはこのアイデアについて何らかの形で5年間語り続けており、トランプ大統領の就任直後にも提案したと報じられている。だが、具体的な制度設計が進みつつある兆候はいまだほとんど見られない。サンダース上院議員による、より野心的な提案が支持を得る可能性はさらに低いだろう。
しかし、これらの構想が真に明らかにしているのは、AIの未来がいかに議論の余地を残しているかということだ。アルトマンCEOは、1970年代にアラスカ州民が石油収益の一部を受け取れるよう設立されたアラスカ永久基金から着想を得た。この構想は2つの前提に基づいていた。石油は共有資源であること、そしていつかは枯渇するということだ。
アルトマンCEOはAIについても最初の主張、すなわち共有資源であるという点は喜んで認めるようだ。しかし第2の点、つまり枯渇するという主張には難色を示すだろう。彼はAIが今後数十年にわたって莫大な富を生み出すと約束してきたからだ。米国民が実際に小切手を受け取れるかどうかは本質的な問題ではない。この提案の本当の目的は、AIブームが分かち合えるほど大きなものになると人々を納得させることにあるのかもしれない。
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- 自律自動車や外科用ロボット、チャットボットなどのテクノロジーがもたらす可能性とリスクについて主に取材。MITテクノロジーレビュー入社以前は、PBSの報道番組『フロントライン(FRONTLINE)』の調査報道担当記者。ワシントンポスト、プロパブリカ(ProPublica)、WNYCなどのメディアにも寄稿・出演している。
