KADOKAWA Technology Review
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Election Monitors to Use Social Media as a Way to Find Voting Problems

大統領選挙の不正や妨害はFacebook、Twitterで検出できるか?

数百人のチームが投票者への脅威や投票をさばけない投票所の兆しをWeb上で探し回る。 by Nanette Byrnes2016.11.08

11月8日火曜日、ほとんどの報道機関は候補者と、投票対象の法案(大統領選に合わせて実施される住民投票)のどちらが多くの票を獲得しているかに注目する。一方で、ジャーナリストと学生団体が、投票のプロセスそのものの問題を検知するために、ソーシャルメディアのデータを活用しようとしている。投票機に不具合がないか? 暫定投票用紙(本人確認ができない場合の投票用紙)は配布されているか? 投票者が不適切に身分証明を求められたり、嫌がらせを受けたりしていないか? 端的に言えば、米国民は投票権を行使できているか?

すでにネバダ州ジョージア州では投票の長い行列ができており、おかしなことは起きている。これらの州では異常なほど多くの投票者が大統領選挙日の前に投票した。

ニューヨークのタイムズスクエアにあるニューヨーク市立大学(CUNY)ジャーナリズム大学院の学生ニュース編集室には150人以上の人が集まるはずだ。プロのジャーナリストと学生が、グーグル等の企業に所属するデータ専門家と一緒に、ピザやコーヒーやスナックを食べながら投票日の大量のデータを精査するのだ。学生ニュース編集室は、非営利ニュースサイトであるプロパブリカ、グーグルニュースラボ、ニューヨーク市立大学(CUNY)等の合同祖機「エレクションランド」の司令部だ。エレクションランドは不審な投票状況を発見し、取材勧告を出すためにソーシャルメディアやその他のデータソースを利用しようとしている

データジャーナリストで、プロパブリカの開発者で、エレクションランドの発起人でもあるデレック・ウィリスは、選挙を管理しているのは各州の職員であり、(別の州の)誰かが懸念事項を見つけても素早く対処しにくく、組織的に投票を監視するのは難しい、という。

「国政選挙は、実際には50州の選挙なのです」

エレクションランドは、フェイスブックやツイッター等のさまざまなプラットフォームを利用し、データを収集して、投票プロセスを改善しようとしているのだ。

ウィリス等の関係者は、ソーシャルメディアやグーグル検索の傾向から即座に得られる情報は、よくいっても不完全な判断基準であり、悪くいえば操作対象だと認めている。「問題の特定と同じくらい、偽の主張の正体を暴くことに労力を取られてしまうのです」とニューヨーク市立大学のソーシャルジャーナリズム教育課程のディレクター、キャリー・ブラウンはいう。

投票の専門家で、マサチューセッツ工科大学(MIT)のチャールズ・スチュワート教授(政治学)は、エレクションランドがソーシャルメディアに注目すれば、かえって操作されやすくなる可能性があり、報道機関がソーシャルメディア発の情報にリアルタイムで巻き込まれ、情報の正確さを判断する前に急いで伝えてしまう可能性を「非常に、非常に心配している」という。 投票の行列の長さ(たとえば、特定の人種の投票者に本人確認をしつこくして妨害するなどが原因になる)といった問題に関する情報を広めるのは、たとえ情報が正確でも、投票者総数を減らす悪影響につながりかねない、とスチュワート教授はいう。

別の問題は、ソーシャルメディアの大部分は広く大衆を代表していないことだ。「都市部に偏っており、テクノロジーに精通した白人男性が多い傾向にあります。いろんな意味で偏っているのです」とスチュワート教授はいう。

この問題を最小限に抑えるために、エレクションランドの創設者はさまざまなソースからデータを抽出し、浮上してくる情報を注意深く審査するシステムを作ろうとしてきた。

データの大部分は自動化されたシステムからエレクションランドに流れ込んでくるが、入念に調査するには膨大な人手の判断が必要だ。600人の学生ボランティアが、フェイスブックのシグナルデータマイナーのようなツールを使って、ソーシャルメディアのプラットフォームで白熱している問題を拾い出す。さらに、一般ユーザーも、テキストメッセージでエレクションランドに直接、懸念事項を送信できる。エレクションランドは、市民権弁護士協会が運営するホットラインに持ち込まれる選挙違反情報も取り込む。

学生は画像の逆検索(画像検索によって、オリジナルか、流用かを判定する)や接続ユーザーの地理的位置(テキストメッセージが問題の投票場所の近くから送信されたかを確認する)などのツールで、さまざまな情報の信頼性と重要性を確証することになる。

学生による判定後、プロのジャーナリストが問題を再検討し、プロが合意すれば、担当地域にある投票所の問題の確認を志願した国中の地域レポーターに送られる。「何も特別な仕掛けはありません。最も市民を中心に考えたプロジェクトと同様、人間による入力なしに任務を遂行するアルゴリズムは存在しないのです」(ウィリス)

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ナネット バーンズ [Nanette Byrnes]米国版 ビジネス担当上級編集者
ビジネス担当上級編集者として、テクノロジーが産業に与えるインパクトや私たちの働き方に関する記事作りを目指しています。イノベーションがどう育まれ、投資されるか、人々がテクノロジーとどう関わるか、社会的にどんな影響を与えるのか、といった領域にも関心があります。取材と記事の執筆に加えて、有能な部下やフリーライターが書いた記事や、気付きを得られて深く、重要なテーマを扱うデータ重視のコンテンツも編集します。MIT Technology Reviewへの参画し、エマージングテクノロジーの世界に飛び込む以前は、記者編集者としてビジネスウィーク誌やロイター通信、スマートマネーに所属して、役員会議室のもめ事から金融市場の崩壊まで取材していました。よい取材ネタは大歓迎です。nanette.byrnes@technologyreview.comまで知らせてください。
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