KADOKAWA Technology Review
×
発表!MITテクノロジーレビューが選ぶ
2022年のイノベーター14人。
【12/15 Summit開催】
抗マラリア薬に死亡リスク増の可能性、トランプ大統領も服用
Wellcome Collection / Lauren Holden
The antimalarial drug Trump took for covid might actually be dangerous

抗マラリア薬に死亡リスク増の可能性、トランプ大統領も服用

トランプ大統領が新型コロナウイルス感染症対策として服用していると公言した抗マラリア薬の効果について、死亡リスクを高める可能性があるとの新研究が発表された。 by Neel V. Patel2020.05.25

ドナルド・トランプ大統領が公の場で繰り返し宣伝しているおかげで、クロロキンとヒドロキシクロロキンが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療法として話題となっている。トランプ大統領は先週、新型コロナウイルス感染症の予防策としてヒドロキシクロロキンを服用していることを記者団に伝えた。しかし、5月22日に医学専門誌の「ランセット(Lancet)」に発表された新たな研究では、ヒドロキシクロロキンが新型コロナウイルス感染症の患者に対して実質的に何の役にも立たないばかりか、心臓に悪影響を与えたり死亡リスクを高めたりする可能性があることが示されている。

クロロキン、あるいはその代替薬でより毒性が低いヒドロキシクロロキンは、抗マラリア薬として広く使われている。クロロキンが85年ほど前に発見されてから広範な研究が実施され、現在では非常に安価に製造でき、その副作用についても分かっている。過去の複数の研究では、クロロキンによってウイルスが宿主細胞内で複製されるのを防げることが示されている。だが、クロロキンとヒドロキシクロロキンが、新型コロナウイルス感染症の治療でどれだけ有効であるかはまだよく分かっていない。

米国の研究者チームは、新型コロナウイルス感染症の入院患者のうち、次の4つの治療法のいずれかを受けた1万4888人分の記録に注目した。クロロキンのみ投与、クロロキンとマクロライド(抗生物質の一種)を併用して投与、ヒドロキシクロロキンのみ投与、ヒドロキシクロロキンとマクロライドを併用して投与、である。これらの患者の記録を、上記の4つの薬物療法のいずれも受けなかった患者8万1144人分の記録と比較した。

論文を執筆した研究者グループは、基礎疾患など交絡因子の調整をした後、単独使用あるいは他の投薬方法のいずれでも「ヒドロキシクロロキンまたはクロロキンの有効性を確認できなかった」と述べている。そればかりか、実際にこれら4つの薬物療法による治療は、死亡や心臓病のリスク上昇に関連があった。最大のリスク上昇は、ヒドロキシクロロキンとマクロライドを併用して治療されたグループで確認され、この治療を受けた患者の8%で不整脈が発生した。これに対し、この薬物療法を受けなかったグループにおける不整脈の発生率は0.3%であった。

ただし、今回の研究はこれまでの医療記録を観察したものに過ぎず、実際にヒドロキシクロロキンおよびクロロキンの安全性や有効性に関する事項を証明できる臨床研究ではない。そのため、ここから何らかの強力な結論を導き出すことはできない。結論を出すためには、クロロキンおよびヒドロキシクロロキンに焦点を当てたより大規模な研究が必要だ。

(関連記事:新型コロナウイルス感染症に関する記事一覧

人気の記事ランキング
  1. Here’s how a Twitter engineer says it will break in the coming weeks ツイッターで「非公式RT」が一時復活、崩壊の始まりか
  2. Recommendations for NIHONBASHI SPACE WEEK 2022 まもなく開幕「NIHONBASHI SPACE WEEK 2022」、見どころは?
  3. Former Twitter employees fear the platform might only last weeks 「ハードコア」大量離職で、元従業員らがツイッターに余命宣告
  4. A bot that watched 70,000 hours of Minecraft could unlock AI’s next big thing ユーチューブを7万時間見続けたAI、最高のマイクラボットになる
  5. We could run out of data to train AI language programs  大規模言語AIにアキレス腱、訓練用データが2026年にも枯渇か
ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。
日本発「世界を変える」35歳未満のイノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Here’s how a Twitter engineer says it will break in the coming weeks ツイッターで「非公式RT」が一時復活、崩壊の始まりか
  2. Recommendations for NIHONBASHI SPACE WEEK 2022 まもなく開幕「NIHONBASHI SPACE WEEK 2022」、見どころは?
  3. Former Twitter employees fear the platform might only last weeks 「ハードコア」大量離職で、元従業員らがツイッターに余命宣告
  4. A bot that watched 70,000 hours of Minecraft could unlock AI’s next big thing ユーチューブを7万時間見続けたAI、最高のマイクラボットになる
  5. We could run out of data to train AI language programs  大規模言語AIにアキレス腱、訓練用データが2026年にも枯渇か
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.8
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.8脱炭素イノベーション

2050年のカーボンニュートラル(炭素中立)の実現に向けて、世界各国で研究開発が加速する脱炭素技術、社会実装が進む気候変動の緩和・適応策などGX(グリーン・トランスフォーメーション)の最新動向を丸ごと1冊取り上げる。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る