KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
米国で初の新型コロナ再感染、1回目より症状悪化
Getty
A man caught coronavirus twice—and it was worse the second time

米国で初の新型コロナ再感染、1回目より症状悪化

米国で、2カ月間に新型コロナウイルスに2回、感染した事例が報告された。新型コロナの再感染が確認されたのは世界中で5人目だが、開発中の治療法やワクチンに影響を与えるかもしれない。 by Charlotte Jee2020.10.15

米国の男性が、わずか2カ月間で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に2回感染したことが、医学誌「ランセット感染症(The Lancet Infectious Diseases)」に掲載された研究により明らかになった。新型コロナウイルスに2度感染したことが正式に確認されたのは、これまでに香港、ベルギー、エクアドル、オランダで報告された事例に次いで、5人目となる(未確認の再感染例は必ず他にも出てくるだろう)。しかし、今回報告された症例における奇妙な点は、再感染時の症状の方が1回目の症状より重かったことだ。主治医らが1回目と2回目の感染時のウイルスのゲノムを比較したところ、同じ感染を引き起こしたとは思えないほどゲノムが異なっていたことが明らかになった。1回目よりも重症化した例は他には、エクアドルで確認された症例のみだ。

25歳の男性は、喉の痛み、咳、頭痛、吐き気、下痢などの症状が数週間にわたり出た後、4月18日に1回目の陽性判定を受けた。男性は4月27日までに完全に回復したと感じ、5月9日と26日に受けた2度の検査で陰性と判定された。だが、そのわずか2日後の5月28日、症状が再び現れ、熱とめまいも発症した。6月5日に陽性と判定され、肺が体に十分な酸素を供給できなくなり、低酸素症と息切れを引き起こしたため、入院が必要となった。男性に基礎疾患はなかった。男性は現在回復している。

世界で確認された4000万人近くの感染者のうち、再感染が確認されたのがわずか5人であることを考慮すれば、再感染例は無視できるほど少ない。しかし、一度感染すれば再感染しないというわけではない。つまり、新型コロナウイルスに感染したことがある人も引き続き警戒し、社会的距離、マスク着用、混雑した風通しの悪い場所の回避に関するアドバイスに従う必要があるということだ。このことは全く予想外というわけではなかった。コロナウイルスの専門家たちは、風邪(普通感冒)の原因となるような他のコロナウイルスが季節性ウイルスであると警告していた。

しかしながら、研究者が答えを出そうと急いでいる疑問はまだ多くある。新型コロナウイルスに感染することでどれだけの免疫を獲得できるのか。免疫獲得に主に関与するのは抗体なのか、T細胞なのか。免疫はどれだけ持続するのか。そうしたことが開発中の治療法やワクチンにどんな影響を与えるのか。例えば、ワクチンが1回の接種で済むわけではなく、全員が毎年接種する必要があるのか。少なくとも今回の新たな再感染例は、依然として新型コロナウイルスについていかに多くのことがわかっていないかを思い知らせるものになっている。

(関連記事:新型コロナウイルス感染症に関する記事一覧

人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る