KADOKAWA Technology Review
×
ランサムウェア攻撃と患者死亡に関係なし=ドイツ警察
Photo by Hush Naidoo on Unsplash
Ransomware did not kill a German hospital patient

ランサムウェア攻撃と患者死亡に関係なし=ドイツ警察

9月にサイバー攻撃を受けたドイツの病院で患者が死亡した件について、サイバー攻撃と患者の死との間に直接の関連性はないと警察は発表した。 by Patrick Howell O'Neill2020.11.18

今年9月、ドイツのある病院で、ランサムウェアによって救急医療が混乱に陥っている最中に患者が死亡した。このことを受け、警察は「過失致死」容疑で捜査を開始し、この患者の死に対してハッカーに刑事責任がある可能性について述べていた。この事件は、サイバー攻撃が人の死に直接関わった初めての事件として司法当局に扱われる可能性があったため、世界的に注目を集めていた。

しかし、3カ月に及ぶ捜査の結果、患者の当時の容態は深刻であり、いずれにせよ死亡していた可能性が高いとして、サイバー攻撃と患者の死との間に直接の関係はないと警察は発表した。

「サイバー攻撃で救命処置が遅れたことは、患者の死と関連性はありませんでした」と、ケルン検察庁のマルクス・ハートマン検事正はワイヤード(Wired)の取材に対して述べた。「患者の医学的な状態が唯一の死因であり、サイバー攻撃とは一切無関係です」。

警察は、過失致死容疑でのハッカーに対する捜査を終了したが、ドイツ司法当局は捜査を続けている。ハートマン検事正や多くのサイバーセキュリティ専門家らは、病院に対するサイバー攻撃がこうした悲劇を招くのは時間の問題だと考えている。

10月に入り、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染者数が急増し始める中で、一連のランサムウェア攻撃が米国各地の病院に仕掛けられた。この攻撃による死者は出ていないが、関与したハッカーらは身代金を手にした。欧米で新型コロナウイルスの感染者数が急増し続けている限り、ハッカーには今後も攻撃を仕掛けるインセンティブがある。

人気の記事ランキング
  1. The three big unanswered questions about Sora 時間も資金も溶かす? AI動画SNS「Sora」3つの疑問
  2. EV tax credits are dead in the US. Now what? 米EV減税が正式廃止、今後の動きをドイツの先例から予想
パトリック・ハウエル・オニール [Patrick Howell O'Neill]米国版 サイバーセキュリティ担当記者
国家安全保障から個人のプライバシーまでをカバーする、サイバーセキュリティ・ジャーナリスト。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
気候テック企業10 2025

MITテクノロジーレビューは毎年、気候テック分野で注目すべき企業を選出し、その一覧を発表している。 今回で3回目となる本特集では、なぜこれらの企業を選出したのか、そして米国の政治的変化をどのように考慮したのかについても詳しく解説している。併せてお読みいただきたい。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る