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機械学習で高齢者の歩行に寄り添うロボット・エクソスケルトン
Stanford University / Kurt Hickman
A robotic exoskeleton adapts to wearers to help them walk faster

機械学習で高齢者の歩行に寄り添うロボット・エクソスケルトン

スタンフォード大学の研究チームが、高齢者などの歩行をサポートするエクソスケルトン(外骨格)デバイスを発表した。機械学習を利用し、歩行に問題を抱える一人、一人に寄り添う補助が特徴だ。 by Rhiannon Williams2022.10.21

装着した人の歩き方に機械学習を利用して適応するエクソスケルトン(外骨格デバイス)は、移動に障害のある人の歩行を容易にできるかもしれない。

歩行速度の向上と移動時のエネルギー消費量の削減の両方を実現するこのエクソスケルトンの見た目は、モーターの付いた電動ブーツのようだ。軽量で、装着者は比較的自由に動くことができる。

スタンフォード大学の研究チームが開発したこのエクソスケルトンは、安価なウェアラブル・センサー、モーター、小型コンピューターのラズベリー・パイ(Raspberry Pi)で構成されており、腰に着用する充電池パックで動く。センサーはブーツに目立たないように埋め込まれており、力や動きの計測が可能だ。

ブーツで計測されたデータは機械学習モデルに送られ、デバイス装着者に合わせてサポートがパーソナライズされる。デバイスは装着者が足首に力を加えることで動くふくらはぎの筋肉の一部を代替し、一歩を踏み出すときに地面を蹴る力を補助する。これによって、より速く、より少ない労力で歩けるようになる。機械学習モデルが装着者個人の歩行に合わせてパーソナライズするようになるのにかかる時間は、わずか1時間程度だ。センサーのデータから常に学習しているので、装着者の歩き方の変化にも適応できる。

実験の結果、普通の靴で歩行した場合と比較して、歩行速度が9%向上し、歩行時の消費エネルギーは17%減少することが分かった。研究論文は、10月12日付けのネイチャー誌に掲載されている。ウォーキングマシンを使った他の同種の装置との比較では、装着者の労力を約2倍削減することも分かった。研究チームは、消費エネルギーの減少と歩行速度の向上を 「30ポンド(約13キログラム)のバックパックを下ろすようなもの」と例えている。

補助型エクソスケルトンは以前から存在しているが、大型で扱いにくいものが多く、装着者個人に合わせて調整するのが難しい。大型のエクソスケルトンによる補助効果は、主に研究室内のウォーキングマシンでの実験に限られており、しかも高価だ。今回スタンフォード大学の研究チームが開発したエクソスケルトンは、市販されている他の製品よりもはるかに小さく、持ち運びが容易なことも特徴だ。

研究チームは、今回のプロジェクトは、エクソスケルトンが実際の環境下で人間のエネルギー消費を減少させる能力を持っていることを初めて実証したと主張している。このエクソスケルトンを使うことで、運動を制限されている高齢者や筋肉に問題を抱えている人が、より自由に動き回れるようになることを期待しているという。

ロンドン大学クイーン・メアリー校先端ロボット工学センター(Center for Advanced Robotics)のカスパー・アルトホーファー所長(今回の研究には関与していない)は、「研究チームは、いずれこの製品を大量消費市場に投入できるはずです」と言う。

「体力が落ちてきてはいるが、もう少し歩きたいと思っている人には、とても便利なものになるでしょう」(アルトホーファー所長)。

論文の筆者らは、高齢者の支援に焦点を当てた研究を開始しており、試作機を製品化し、日常生活を送る人々を理想的に補助したい考えだ。

「電動自転車のようなものになればいいなと思っています」と語るのは、博士課程の学生としてこのエクソスケルトン研究に携わったパトリック・スレイドである。「(このデバイスは)日常生活の動きをすべて代行できるわけではありませんが、装着しても人々が心地よいと満足できるレベルには到達しています」。

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米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」の執筆を担当。MITテクノロジーレビュー入社以前は、英国「i (アイ)」紙のテクノロジー特派員、テレグラフ紙のテクノロジー担当記者を務めた。2021年には英国ジャーナリズム賞の最終選考に残ったほか、専門家としてBBCにも定期的に出演している。
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