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歴史あるMITの研究用原子炉が担う新しい役割
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Inside MIT’s nuclear reactor laboratory

歴史あるMITの研究用原子炉が担う新しい役割

マサチューセッツ工科大学(MIT)のキャンパスには、1950年代に建設された研究用原子炉がある。MITは、この古い施設を次世代の原子炉技術の開発に活用すべく準備を進めている。 by Casey Crownhart2023.08.31

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

マサチューセッツ工科大学(MIT)のキャンパス内にあるレンガ造りの建物の裏に、1基の原子炉がひっそりと設置されている。施設の存在は10年以上前から知っていたが、これまで立ち入る機会はなく、いささか神秘的な存在に感じていた。だから先日、ついに自分の目でこの原子炉を見ることができときには、興奮したのだ。

MITの研究用原子炉は1950年代に建設されたもので、その目的は数十年の間に変化してきた。だが、一貫して次世代の原子力科学者の教育に使われており、また並行して、原子核物理学から内科的治療まで、その時々に応じてあらゆる研究に使用されてきた。

最も興奮したのは、新しい原子炉技術の実現を目指す、エネルギーに焦点を置いたプロジェクトの話だ。

事実上すべての商用原子炉は水を使って冷却されているが、水の代わりに溶融塩に注目するスタートアップ企業が増えている。MITの原子炉研究所は、代替技術が原子炉内の過酷な条件にどれだけ耐えられるか明らかにするため、新たな研究に取り組んでいる。

そこで、今回の記事では、MITの原子炉研究所見学ツアーにお付き合い願いたい。ツアーの途中で、溶融塩炉に関する話題についても触れる。

注目の話題

ツアーで最初に訪れたのは、フロント・デスクだ。ここで私を含む見学グループの全員が、放射線被ばくの可能性を追跡するため、それぞれ個人線量計を受け取った。その後、バッグと携帯電話を預け、何かに触れたり、ツアーガイドの目の届かないところをうろついたりしないように厳しく注意された。

そしてついに私たちは、何枚かの強化金属ドアを通って研究室の中に入った。黄色い実験用白衣が並ぶ中を通り抜けながら、ツアー・ガイドを務める原子炉実験の責任者、デイヴィッド・カーペンター博士が、この炉の歴史や基本的な事実について一通り説明してくれた。

この原子炉は、現在米国の大学で稼働している研究炉としては2番目に大きく、約6メガワットの熱出力を生み出している。商用原子炉はその数百倍もの能力を持つことが多く、熱出力は3000メガワット(3ギガワット)規模になる。

(原子力の簡単な基礎:原子炉は、ウラン原子が分裂する核分裂反応によって動作する。この反応により、放射線の一種である中性子と、電気への変換に利用できる熱が発生する)。

電力供給に使われている原子炉は、蒸気の形で熱を生み出し、それを電気に変える。しかし、この研究炉では、熱は基本的に副産物であり、焦点はすべて中性子に置かれている。

MITの原子炉は、より大型の商用原子炉における放射線条件を模倣する点で、他の大部分の大学の研究施設よりも優れている。そのため、この施設は現在工学分野の研究開発に多く利用されていると、カーペンター博士は言う。企業は、新しい材料やセンサーを原子炉の中や近くで実際に使う前に、研究用原子炉内の制御された環境において、同様の放射線、温度、圧力条件で試験ができるのだ。試験用のサンプルは炉心に直接入れることも、ビーム・ラインと呼ばれる管理された回廊内で放射線にさらすこともできる。

連鎖反応

原子炉室の入口に近づくにつれ、私は宇宙へ打ち上げられようとしているような、独特の感覚を覚えた。しかし原子炉室のドアは、驚くほど風変わりな薄緑がかった青色で塗られていた。カーペンター博士による一通りのセキュリティ・チェックの後、最初のドアが開き、小さなエアロック室と、入口と同じ青い二重ドアが現れた。

エアロック室の中で数秒待った後、2つ目のドアが開くと、いきなり原子炉との対面だ。燃料が格納されている炉心は高さ2フィート(61センチメートル)ほどしかないが、設備全体では建物数階分の高さがある。

カーペンター博士は私たちを連れて原子炉の周りを歩き、2000年代初期に中性子治療に使われていた専用の部屋を指し示した。研究は頓挫してしまったため、この空間は現在、改修が進められている。新たな用途は、溶融塩冷却炉をさまざまな面から試験することである。

溶融塩は、すでに1950年代には、原子炉を冷却する技術の候補の1つに挙がっていた。軽水炉の商業運転が始まると、関心は徐々に薄れていったが、2000年代初頭にMITを含む各方面の科学者たちがこの研究を復活させた。

現在はカイロス・パワー(Kairos Power)テラパワー(TerraPower)など、いくつかのスタートアップ企業が、溶融塩炉の商業運転を目指している。溶融塩炉の開発に取り組む企業は現在、冷却設備の実証システムを構築し、試験炉の運転認可を求めている。

MITの研究所が溶融塩炉を運用することはない。その代わりに、この技術が実際の世界でどのように機能するかということについて、より多くのデータを集めるのに貢献するだろう。新しい空間は、企業や学術研究者たちが、炉や個々のセンサーの製造に使用される材料の小片の試験に使用できるようになる。それだけではない。ポンプやパイプから成る運転設備全体の試験を実施し、高温の塩を移動させて、放射線に対してどのように反応するか確認できるようにもなるのだ。「新たな溶融塩炉産業が現在どの段階にあるのかを考えると、まだより基本的な機能を調査する必要があります」。カーペンター博士は見学の後、電子メールで説明してくれた。

MITや他の研究施設で得られるデータは、原子炉内部で現実に起こりそうなことに対し、溶融塩設備でどのように対処するか決定するのに役立つ可能性がある。この施設は2024年中に完成し、稼働する予定だ。

MITテクノロジーレビューの関連記事

本誌のジェームス・テンプル編集者も、2017年にMITの原子炉研究所を訪れている。それ以降、溶融塩研究の計画は少し変わったが、当時の記事を見れば、この施設についてもっと詳しく知ることができる。

次世代原子炉は、本誌の2019年版「ブレークスルー・テクノロジー10」に入っている。詳しくは、原子力発電の進歩の可能性に関するこの特集記事を読んでほしい。

原子炉は低炭素電力を安定して送電網に供給できるが、ドイツは今年、同国最後の原子力発電所の運転を停止した。

冷却方法を変えるだけでなく、装置を縮小することで原子力技術を変えようとしている企業もいくつか存在する。2月に掲載した記事で、小型モジュール式原子炉について紹介している。

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MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
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