気候テック15:商業核融合「一番乗り」を目指すコモンウェルス
MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」の1社であるコモンウェルスは、長年の夢だった「核融合」発電の実用化を目指す企業だ。2030年代初頭には同社の核融合炉が送電網に電力を供給し始める可能性がある。 by Mark Harris2023.10.31
コモンウェルス・フュージョン・システム(Commonwealth Fusion Systems)は、核融合を研究室から市場に持ち出す最初の企業になりたいと考えている。
マサチューセッツ工科大学(MIT)のプラズマ科学・核融合センターからスピンアウトしたコモンウェルスは、電波で水素の同位体を1億℃以上に加熱するドーナツ型の装置である「トカマク」を使う点で、従来の成果を踏襲している。加熱した結果生じたプラズマを強力な磁場によって圧迫し、高エネルギーの電子と中性子が放出される核融合を実現する仕組みだ。
コモンウェルスを際立たせているのは、トカマクのサイズが非常にコンパクトなことだ。同社のプロトタイプ核融合炉の「スパーク(SPARC)」の大きさは、現在フランスで建設中の国際プロジェクトの核融合炉「イーター(ITER)」の40分の1であり、イーターより5年早く稼働する可能性がある。
基本データ
潜在的なインパクト
「すべてを電化しよう」と気候問題の専門家たちは声高に叫んでいる。モーター、電気自動車、ヒートポンプは本質的に、石油やガスを燃焼させる他の製品よりも効率的だ。しかし、温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にするには、 これらのシステムのために十分な再生可能電力を生産しなければならず、化石燃料を使用しない発電所がもっとたくさん必要になる。コモンウェルスの核融合発電所は、核融合反応からの熱を蒸気に変えてタービンを回し、有害な排出物を発生させずに電力を生成することが可能だ。
核融合発電は、他の数十のスタートアップ企業が共有するSFのような夢だ。独自のトカマクでコモンウェルスの足跡をたどっている企業もあるが、他の有望なアプローチをしている企業もある。パルス式核融合炉は核融合反応 …
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