ガソリンスタンドも駐車場も不要になる自動運転革命の衝撃的未来
自動運転は事故やドライバーだけでなく、駐車場や公共交通機関まで消してしまうかもしれない。電気自動車でガソリンスタンドがなくなるだけでなく、都市の景観まで変えてしまう可能性がある。 by Jamie Condliffe2017.04.04
電気自動車は環境にやさしく、自律型の移動手段(自動車に限らない)は交通事故数を減らすだろう。それだけはわかっている。だが、来たるべき自動車革命は、他にどんな影響があるだろうか?
まず、期待しすぎないようにしよう。政策的に刺激しない限り、アメリカの電気自動車普及率はゆっくりと伸びていく。さらに、第一世代の自律自動車は、期待ほど高性能ではない可能性がある。自動車メーカーとテクノロジー企業は、文字通り現在の車を再起動しようと競争し、自律化に欠かせないテクノロジーの進化を不可避にする一方で、達成までにはさらに時間がかかりそうだ。
自律自動車で私たちの社会がどう変わるかはもっとわからない。シリコンバレーのベンチャーキャピタル会社アンドレッセン・ホロウィッツのパートナーで、テクノロジー動向の分析に詳しいベネディクト・エバンズは、幹線道路で起きる「二次的、三次的混乱」に関しての見解を発表した。テクノロジーによって根本的に作り替えられる未来を描写した考察だ。
電化について考えてみよう。内燃機関がなくなるほうが地球環境によいことはわかっている。しかしエバンズは、ガソリンを大量に消費する社会を支えるインフラが消えることで、多くの変化が起きると指摘する。自動車修理のほとんどはモーターが対象になり、数多くの修理工が失業する。ガソリンスタンドは不要になるし、併設される売店は消える。アメリカではタバコの売上の半分はガソリンスタンドだ。
初期段階にある自動運転車産業に関わるあらゆる会社は、自律化により、人間が運転するよりも事故が減るという。しかし、自律運転車のメリットは、ただ人間をA地点からB地点に移動させることばかりではない。自動運転車は、人間なら不便すぎると考える場所に駐車して待機し、必要な時に合図されれば自動車が移動してくる。ということは、現在駐車場として使われている都市中心部の大量の土地を別の目的に使えることになり、不動産市場を転覆させる可能性すらある。
上記はエバンズによる予測のわずかな例に過ぎない。実際には、もっと多くのことを考えるべきだ。エバンズはあらゆる産業で電化が進むことで、どんな影響があるかをたどる。自動車充電用の家庭用太陽光発電・蓄電システムが普及すれば、ピーク需要に合わせて発電所を建設せずに済むし、自律自動車が高速に、フェンダーすれすれで行き交うように走れば、通勤圏は拡大するだろう。さらにオンデマンド型の自律型移動手段が、自動車やタクシー、バスの領域にまで侵食すれば、公共交通機関にも非常に大きな変化が起きる。
本当に興味深いのは、上記の結果の組み合わせだ。ガソリンスタンドのないアメリカ、駐車場がない都会、オンデマンド型移動手段と公共交通機関が競合し、交通事故が存在しない世界では、都市の景観まで再定義される。ヨーロッパでは、ほとんどの町は自動車より何世紀も古い歴史があり、そもそも徒歩で移動しやすく設計されているから、簡単に元の状態に戻ってしまうかもしれない。アメリカの都市はヨーロッパとは対照的に自動車中心に設計されており、テクノロジーによって、都市の使われ方まで変わる可能性がある。
最終的に、エバンズのシナリオのどれかが実際に起きた場合、自動車テクノロジー革命は私たちが乗る自動車を変えるだけではなく、私たちの生活環境まで変えてしまう可能性がある。
(関連記事:Benedict Evans, “米国の電気自動車業界に低迷の危機,” “完全ガッカリな自動運転 実用化でも晴れの日専用?,” “Rebooting the Automobile”)
- 人気の記事ランキング
-
- A tiny new open-source AI model performs as well as powerful big ones 720億パラメーターでも「GPT-4o超え」、Ai2のオープンモデル
- The coolest thing about smart glasses is not the AR. It’s the AI. ようやく物になったスマートグラス、真価はARではなくAIにある
- Geoffrey Hinton, AI pioneer and figurehead of doomerism, wins Nobel Prize in Physics ジェフリー・ヒントン、 ノーベル物理学賞を受賞
- Why OpenAI’s new model is such a big deal GPT-4oを圧倒、オープンAI新モデル「o1」に注目すべき理由
- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。