フェイスブック、VRからニュースフィードにライブ配信
フェイスブックが実質現実(VR)からニュースフィードにライブ配信できる機能を追加した。不振が伝えられるオキュラスのてこ入れになるかは未知数だ。 by Rachel Metz2017.07.13
実質現実はまだ大衆市場のテクノロジーにはほど遠い。最近の値下げから察すると、フェイスブックのオキュラス・リフト(Oculus Rift )のヘッドセットはまだまだ店頭で売れ残っているようだ。だがフェイスブックは、たとえヘッドセットで顔を覆わなくてもより多くの人が実質現実(VR)を体験できるようにしようと努力している。
フェイスブックの最新の試みは、こうした方向性を明確にするものだ。2017年7月12日には、VR上のたまり場となる「フェイスブック・スペース(Facebook Spaces)」を使って、コミック調の自身のアバターをフェイスブック上にライブ配信できるようにした。これなら、VRヘッドセットを持っておらず、スマホやコンピューターでフェイスブックを利用する20億人のユーザーともつながることができる。
フェイスブック・スペースの名前は、初めて聞いたかもしれない。2017年4月に公開されたスペースは、ユーザーのアバターをバーチャルなテーブルに座らせ、ユーザー同士で話をしたり、3Dマーカーで空間に落書きをしたり、360度の映像を見たりできる。
これまでのスペースはやや孤独なものだった。フェイスブック・メッセンジャーで非VRユーザーにビデオ電話を掛けたり、フェイスブックにバーチャル自撮り(セルフィー)画像を投稿したりできたが、没入型の体験ができるのはオキュラス・リフトのヘッドセットを持つ、ごくわずかな人に限られていた。市場調査会社カナリスの推定では2016年に40万台以上のオキュラス・リフトが出荷されたが、IDCの調査によると2017年の第一四半期に新たに出荷されたのは9万9000台にとどまっている。フェイスブックはスペースのユーザー数についてコメントを拒否した。
フェイスブックのマイク・ブース ソーシャルVR製品責任者によると、新たに追加されたライブ映像をスペースから配信するには、VR内の任意の位置に設置できるバーチャルなカメラを使う。フェイスブック上で投稿されたコメントは、スペースのビューアーでは小さな看板のように表示され、手に取ることもできる。
「まさにVRと非VRの間の壁を打ち破る方法です」(ブース責任者)。
フェスブック上ではライブ映像がますます人気になっている。同社によると、フェイスブック上で流れる映像の5本のうち1本はライブ配信だという。スペースの配信機能がフェイスブックの期待通りに使われれば、もっと多くの人がVRに親しむようになり、テクノロジーによる社会的な相互作用を目指すフェイスブックのビジョンとも一致する。
それでもおそらく、フェイスブックにはこの先、困難が待ち構えている。アバターを使って友人とコミュニケーションを取るのは斬新だが、普通の人が本当に長時間にわたってアバターでやり取りしたいかどうかはわからない。そもそもライブ配信を始める人だって多くはないのだ。私もオキュラス・リフトを使ってスペースを何度か試したが、同じことができる人は1人しか思い当たらない。
- 人気の記事ランキング
-
- A tiny new open-source AI model performs as well as powerful big ones 720億パラメーターでも「GPT-4o超え」、Ai2のオープンモデル
- The coolest thing about smart glasses is not the AR. It’s the AI. ようやく物になったスマートグラス、真価はARではなくAIにある
- Geoffrey Hinton, AI pioneer and figurehead of doomerism, wins Nobel Prize in Physics ジェフリー・ヒントン、 ノーベル物理学賞を受賞
- Why OpenAI’s new model is such a big deal GPT-4oを圧倒、オープンAI新モデル「o1」に注目すべき理由
タグ | |
---|---|
クレジット | Images courtesy of Facebook |
- レイチェル メッツ [Rachel Metz]米国版 モバイル担当上級編集者
- MIT Technology Reviewのモバイル担当上級編集者。幅広い範囲のスタートアップを取材する一方、支局のあるサンフランシスコ周辺で手に入るガジェットのレビュー記事も執筆しています。テックイノベーションに強い関心があり、次に起きる大きなことは何か、いつも探しています。2012年の初めにMIT Technology Reviewに加わる前はAP通信でテクノロジー担当の記者を5年務め、アップル、アマゾン、eBayなどの企業を担当して、レビュー記事を執筆していました。また、フリーランス記者として、New York Times向けにテクノロジーや犯罪記事を書いていたこともあります。カリフォルニア州パロアルト育ちで、ヒューレット・パッカードやグーグルが日常の光景の一部になっていましたが、2003年まで、テック企業の取材はまったく興味がありませんでした。転機は、偶然にパロアルト合同学区の無線LANネットワークに重大なセキュリテイ上の問題があるネタを掴んだことで訪れました。生徒の心理状態をフルネームで記載した取り扱い注意情報を、Wi-Fi経由で誰でも読み取れたのです。MIT Technology Reviewの仕事が忙しくないときは、ベイエリアでサイクリングしています。