KADOKAWA Technology Review
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産業用ロボの安全性を劇的改善、MIT発の超高精度レーダー
Humatics
A Radar for Industrial Robots May Guide Collaboration with Humans

産業用ロボの安全性を劇的改善、MIT発の超高精度レーダー

これまでの産業用ロボットは、人間と共同作業をするにはパワフル過ぎて危険であることから、適用範囲が限られていた。マサチューセッツ工科大学(MIT)のスピンアウト企業が開発している人間の動きを非常に正確に追跡可能な室内用レーダー装置は、人間とロボットが同じ環境で協働する新しい未来の扉を開くかもしれない。 by Will Knight2017.09.22

産業用ロボットと一緒に作業するのはもどかしく、時として非常に危険な場合さえある。しかし、新たなセンサー・システムが人間とロボットの共同作業を容易してくれるかもしれない。

マサチューセッツ工科大学(MIT)のスピンアウト企業であるヒューマティクス(Humatics)が開発している室内用レーダー・システムは、ロボットやその他の産業システムが人間の動きを非常に正確に追跡することを可能にする。産業システムはかなり安全になり、作業員の動作を極めて詳細に追跡できるようになるだろう。人間と機械による共同作業の効率は改善され、形態も新しくなるかもしれない。

ヒューマティクスの共同創業者であり最高経営責任者(CEO)を務める、MITの航空・宇宙工学科のデビッド・ミンデル教授は、「このレーダー・システムにより、ロボットは人間と同じ環境で生活できるようになると思っています」という。

カメラや深度センサーといった既存のセンサーは照明に左右されることが多く、3次元空間での人間の位置情報を大まかにしか伝えられない。新たに登場した安全システムにより、人間がパワフルなロボットに接近して作業をすることが可能になったが、ロボットに近づきすぎると完全に停止してしまう。人間の動きを極めて詳細に追跡することにより、パワフルなロボットと人間の共同作業が可能になり、ロボットが人間の同僚に何かを手渡せるようになるかもしれない。ミンデル教授は「大型ロボットを取り囲んでいる柵を取り外せるでしょう」という。

ヒューマティクスのテクノロジーは、今後数十年くらいで手作業がどのように変化していくのかを考える際の手がかりを与えてくれる。ロボットと人間の共同作業の効率をもっと向上させるだけでなく、人間の作業を追跡したり改善したりするのに使われるかもしれない。例えば、倉庫で作業員の動きの効率を良くしたり、無駄な繰り返し作業を減らしたりできる可能性がある。「このテクノロジーを適用できる場所はたくさんあります」と、ミンデル教授はいう。

さまざまな状況で人間の代わりにロボットを使うことについて数多くの議論がある。人間の労働とロボットが組み合わされたときに、自動化の効果がより一層発揮されるというのがミンデル教授の信念であり、著書の『Our Robots, Ourselves』(2015年発行、未翻訳)でもそのことを述べている。

ヒューマティクスは自社の追跡テクノロジーを「ヒト空間のインテリジェンス・プラットフォーム」と呼んでいる。ラジオ波を用いる追跡装置は、30メートル先までにある複数の応答装置をミリ単位の精密度で追跡できる。作業員の動きを分析するソフトウェア・システムは、サードパーティ企業がアプリケーションを開発するためのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)を備える。

ヒューマティクスのテクノロジーにより、作業員はロボットが作業し終えたものを、怪我の心配なく受け取れるようになるので、工業生産ラインの効率を改善できるかもしれない。同社は開発中のシステムのコストについてはまだ発表していないが、既存のシステムよりもはるかに低いと主張している。

ロボットと人間の共同作業は、製造現場や商品の梱包・発送業務などでますます重要になりつつある。旧来の産業用ロボットは人間と一緒に働くには危険過ぎた。現在の軽量ロボットは生産ラインにいる人間の隣で安全に働かせられるが、人間の動きを追跡しないし、腕力がないのでできることは限られている。

一方で、アマゾンなどが運営している多くの倉庫や梱包・発送センターでは、作業員が商品を効率良く運べるように、ロボットの役割がますます増加している(「Inside Amazon’s Warehouse: Human-Robot Symbiosis」を参照)。

ヒューマティクスに投資した企業の顔ぶれからも、同社のシステムがどれほど広く利用される可能性があるのかを見て取れる。最初の重要な資金調達では、ロッキード・マーチン・ベンチャーズ(Lockheed Martin Ventures)やエアバス・ベンチャーズ(Airbus Ventures)などの投資企業から、1800万ドルの資金を引き出した。ロッキードもエアバスも、自社の製造ラインでロボット工学のさらなる活用を模索している。

エアバス・ベンチャーズのトーマス・デ・アルワン最高経営責任者(CEO)は、「ヒューマティクスのテクノロジーは、位置・動作追跡における構造的転換をもたらすと考えています」という。「追跡システムの精度が飛躍的に進歩すれば、数多くの新しいアプリケーションの可能性が生まれます」。

ミンデル教授はかつて、水中ロボット・システム向けの超精密レーダーを開発したことがある。加えて、航空宇宙工学における自動化の専門家だ。ヒューマティクスの創業アドバイザーには、沈没したタイタニック号の発見に関わった海洋探検家のボブ・バラードや、アポロ宇宙船の宇宙飛行士であるデイブ・スコットも名を連ねている。

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ウィル ナイト [Will Knight]米国版 AI担当上級編集者
MITテクノロジーレビューのAI担当上級編集者です。知性を宿す機械やロボット、自動化について扱うことが多いですが、コンピューティングのほぼすべての側面に関心があります。南ロンドン育ちで、当時最強のシンクレアZX Spectrumで初めてのプログラムコード(無限ループにハマった)を書きました。MITテクノロジーレビュー以前は、ニューサイエンティスト誌のオンライン版編集者でした。もし質問などがあれば、メールを送ってください。
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