合成肉バーカーの安全性は
どの省庁が監督するのか?
スタートアップ企業が合成食品を数年以内に提供しようとしているが、どの規制当局が安全性を確認するのかはまだ決まっていない。 by Jamie Condliffe2016.08.26
数年以内に、合成肉のビーフで作った肉汁たっぷりなハンバーガーと合成乳製のまろやかなシェイクがファストフード店で販売される。だが、消費者が口にするようになる前に、誰かが食べても安全だと保証しなくてはいけない。
スタートアップと大学の研究員は、研究室生まれの食品を実現すべく奔走しており、動物を1匹も飼育せずに肉や乳製品を培養している。マーストリヒト大学の研究チームは、2013年に牛の筋肉から培養されたハンバーガーを実証済みだ。(試験では「驚くほどにカリカリ」だとすれば、ほとんど本物と変わらないと証明された)
現在、メンフィス・ミートやスーパー・ミート、モサ・ミート などのスタートアップが、2021年までに細胞から培養された偽肉を製造しようと競い合っている。ビヨンド・ミートやインポシブル・フーズなどの企業は、大豆タンパクなど、野菜の代用品から肉を合成しようとしている。また、パーフェクト・デイは、2017年末までに、朝の食卓に酵母菌で醸造された「牛なしミルク」を供給するつもりだ。

しかし、サイエンス誌が指摘するように、こうした製品の製造手法は、規制の隙間にある。米国農務省(USDA)が監督するのは、本物の肉と乳製品、卵である一方、米国食品医薬品局(FDA)が管理するのは、食品添加物と人間の細胞に由来する製品だ。現在 ホワイトハウスや全米アカデミーズが検討中とはいえ、ほとんどの人工食品の製造技術が適正かを監督する機関はない。
一部の食品の安全性は簡単に調べられる。たとえば、合成乳は、FDAによって安全とされたタンパク質が成分になるはずだ。多くの酵素及びタンパク質が、いかなる特別な製品認可も必要とせず、食品添加物として使用許可が下りるとすれば、飲食品メーカーは、規制を回避できるように製品を設計するだろう。

細胞の培養肉は、分類しにくく、問題が多いかもしれない。食品ではなく、生物組織を利用した製品として医薬品扱いされ、規制されるかもしれない。合成肉が医薬品に分類されれば、一気に新製品を展開したいスタートアップ企業の望みどおりにはならない。
合成食品を管理する規制の枠組みは、確実に時間とともに変化していく。FDAやUSDA、ホワイトハウスのすべてが規制の方針を検討する過程には、それなりの時間がかかるだろう。料理人が多すぎてスープが台無しにならないことを願おう。
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クレジット | Images courtesy of Impossible Foods |

- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。