KADOKAWA Technology Review
×
カルチャー 無料会員限定
The grassroots push to digitize India’s most precious documents

貴重な書籍をデジタル化、インドで広がる草の根活動

14億人以上の人口を抱えるインドには公共図書館が5万館あるが、一般の人が利用しにくい状況にある。そこでボランティアたちが、大量の貴重な書籍を電子化してネット上で公開し、誰でも読めるようにする取り組みを進めている。 by Ananya2023.11.01

8月のある晴れた日、インドのベンガルールにあるガンジー・バヴァン記念館の2階の部屋で、作業員たちが5台の巨大な卓上スキャナーの前に座り、本を並べてフットペダルでページをめくっている。この記念館の建物には、カルナータカ州最大のガンジー哲学参考図書館がある。ここで今後1年かけて、マハトマ・ガンジーの著作集、自叙伝『真理の実験』のカンナダ語翻訳版、その他の貴重な品々を含む大量の書籍がデジタル化され、メタデータが記録されたあと、インターネット・アーカイブ(Internet Archive)の「知識の奉仕者(Servants of Knowledge:SoK)」コレクションに加えられる予定だ。

このデジタル化の推進は、SoKの最新の取り組みである。SoKは、入手困難な資料を保存するため、4年ほど前にボランティアで設立された。その後、インド全土のさまざまな図書館や公文書館と提携するなどして活動を拡大し続けてきた。

現在、SoKのコレクションは、15以上の言語のインド発またはインド関連の書籍、演説、雑誌、新聞、シュロの葉に書かれた古文書、音声、映画を検索可能なライブラリーとなっている。このコレクションは、科学、文学、法律、政治、歴史、宗教、音楽、民間伝承、その他多くのテーマに関する公有著作物および著作権切れの著作物を収蔵する、真にオープンなデジタル図書館である。すべてのコンテンツは誰でも自由にアクセスでき、検索やダウンロードが可能で、テキストから音声への変換ツールを使って視覚障害者も利用できる。ボランティアとスタッフがコレクションを拡大し続けており、ベンガルールのさまざまな場所で毎月約140万ページをスキャンしている。新たな提携の話も進行中だ。

SoKコレクションは、インドにおける図書館資源の不足を補うための取り組みである。インド政府が公共図書館運動を推進するために設立した団体「ラジャ・ラムホーン・ロイ図書館財団」によると、14億人以上の人口を抱えるこの国には、公的資金で運営されている図書館が約5万館ある。同財団の2018年の報告書によれば、各州の中央図書館の蔵書数は中央値で7万7000冊、すべての地区図書館で2万4000冊なのに対し、村や部族の図書館の蔵書数はわずか数千冊に過ぎない。一部の図書館は火事で蔵書を失った。放置されたことでボロボロになってしまった本も多数あり …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Inside the tedious effort to tally AI’s energy appetite 動画生成は別次元、思ったより深刻だったAIの電力問題
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2025 「Innovators Under 35 Japan」2025年度候補者募集のお知らせ
  3. IBM aims to build the world’s first large-scale, error-corrected quantum computer by 2028 IBM、世界初の大規模誤り訂正量子コンピューター 28年実現へ
  4. What is vibe coding, exactly? バイブコーディングとは何か? AIに「委ねる」プログラミング新手法
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る