KADOKAWA Technology Review
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「落雷を100%防止」
570万ドル調達した
気象制御ベンチャーの実力
Getty Images
気候変動/エネルギー Insider Online限定
This startup claims it can stop lightning and prevent catastrophic wildfires

「落雷を100%防止」
570万ドル調達した
気象制御ベンチャーの実力

カナダのスタートアップ、スカイワードは、雲に金属繊維を散布して落雷を抑え山火事を防ぐと主張し、570万ドルを調達した。だが「落雷を最大100%防止」という同社の主張は、MITテクノロジーレビューの取材後に撤回された。実際の落雷防止効果や、環境や健康への影響などは明らかになっていない。 by James Temple2026.03.06

この記事の3つのポイント
  1. 2023年カナダで史上最悪の山火事が発生し、落雷が原因の60%を占め焼失面積の93%に達した
  2. 気象制御企業スカイワードが金属チャフ散布による落雷防止技術を開発し数百万ドルを調達した
  3. 過去の米政府研究では一定効果が示されたが環境影響や技術的課題について専門家は慎重な検証を求めている
summarized by Claude 3

2023年6月1日、うだるような熱波がカナダのケベック州を襲う中、州内各地で数千回もの落雷があり、120件以上の山火事が発生した。

猛火は乾ききった森林や枯れた草原を焼き尽くし、数週間にわたって燃え続け、カナダ史上最悪の「山火事発生の年」となりつつあった状況をさらに悪化させた。最終的に、カナダ全土で約7000件の火災が発生し、数十万平方キロメートルもの土地が焼け野原となり、5億トン近くの二酸化炭素が排出され、数十万人が避難を余儀なくされた。

山火事の約60%は落雷が原因であり、落雷による火災が焼失面積の93%を占めた。

そんななか、バンクーバーに拠点を置く気象制御スタートアップ企業であるスカイワード・ワイルドファイア(Skyward Wildfire)は、山火事の原因となる落雷を阻止することで、将来このような壊滅的な火災を防ぐことができると主張している。同社は先日、資金調達ラウンドで数百万ドルを調達したばかりで、この資金を製品開発の加速と事業拡大に充てる計画だ。

2023年の大火災における落雷の役割を強調する同社は、先週までWebサイト上で「落雷を最大100%」防ぐことができる技術を実証したと述べていた。

それは、人間が雷を抑制できる可能性を研究してきた研究者たちの常識をはるかに超える、目を引く主張であった。そして同社は、MITテクノロジーレビューからの問い合わせを受け、この主張を撤回した。

「あの記述は特定の条件下で観察された結果を反映したものです。普遍的な結果の示唆を意図したものではなかったので削除しました」と、スカイワードで政府連携を統括するニコラス・ハーテルはメールで述べた。「貴誌が話を聞いた専門家が正しく指摘したとおり、複雑な大気システムにおいて、100%の一貫した結果を得ることは現実的ではありません」。

同社は現在、「標的とした雷雨領域における対地放電(いわゆる落雷)の大半を防止できる」ことを実証したとしている。これまでのところ、スカイワードはその方法を公表しておらず、本誌の質問に対してハーテルは、その物質は「不活性であり、規制基準に従って選定されています」とのみ回答した。

しかし、オンライン文書によると、同社は米国政府機関が1960年代初頭に評価を開始した手法を使っているようだ。それは、金属チャフ、つまりアルミニウムでコーティングされた細いグラスファイバーの繊維を雲に散布するというものだ。

軍はこの物質をレーダー信号の妨害に使用しており、たとえば戦闘機が空中戦のさなかにこれを散布し、誘導ミサイルシステムを混乱させる。米国政府機関が数十年前に実施した実地試験では、少なくともある程度、かつ特定の条件下では、金属チャフが落雷を減らす効果がある可能性が示されている。

もしスカイワードがこの物質を大規模かつ確実に使用できれば、気候変動による気温上昇や森林の乾燥、さらには予想される落雷頻度の増加といった、高まる火災リスクへの強力な対策となる可能性がある。

スカイワードの創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるサム・ゴールドマンは、2025年にリンクトイン(LinkedIn)に投稿した声明で、「落雷リスクの高い日に雷を防ぐことで、人命が救われ、数十億ドル規模の山火事被害を回避できます。それは実施可能な最も効果的かつ即効性のある気候変動対策の1つです」と述べた。

しかし、研究者や環境専門家は、さまざまな気象・気候条件下での散布効果、必要となる物質の散布量や散布頻度、事業スケールでの雷抑制による2次的な環境への影響など、依然として不確実なことが数多く残っていると指摘する。

一部の専門家は、同社が広く住民に告知したり、雲にどのような物質を散布するかについて公に議論したりすることなく、カナダの一部地域で気象制御の実地試験を進めていたようであることに懸念を示している。

カナダの環境保護団体である「環境防衛(Environmental Defence)」でプログラム・ディレクターを務めるキース・ブルックスは、火災の危険性が高まっていることを考えると、その危険性を軽減する新しい技術の可能性を評価するのは「合理的」だと述べる。

「しかし、慎重かつ真に透明性のある方法で、精査可能な確固とした科学的手法を用いて評価するべきです」と付け加える。

雲への散布

スカイワードのWebサイトには、技術的な詳細はほとんど記載されていないが、同社は2024年と2025年にカナダの山火事対策機関と協力し、自社の技術を実証したと述べている。火災の原因となり得る落雷を予測する人工知能(AI)ツールも開発済みだという。

スカイワードは2025年2月に、昨年初めに完了したシードラウンドの延長として、790万カナダドル(570万米ドル)を調達したと発表した。投資家には、クライメート・イノベーション・キャピタル(Climate Innovation Capital)、アクティブ・インパクト・インベストメンツ(Active Impact Investments)、ダイアグラム・ベンチャーズ(Diagram Ventures)などが名を連ねている。

「最初のシーズンで、大規模な予防が可能であることを実証しました」と、ゴールドマンCEOは声明で述べた。「今回の資金調達により、新たな地域への展開、さらには緊急事態が発生する前に山火事のリスクを軽減するための信頼性の高い運用ツールを必要とするパートナーへの支援が可能になります」。

同社は自社サイトや最近の発表において、「クラウド・シーディング(日本版注:『人工降雨』や『雲への種まき』)」という言葉を使用していない。しかし、2025年、環境保護団体のファイア・グランド・チャレンジ(Fire Grand Challenge)で最終候補に選ばれたことにスポットライトを当てたプレスリリースには、ナーワル誌(The Narwhal)が以前報じたように、「安全で無毒な物質でクラウド・シーディングを実施し、雷の電荷を中和することで」雷を抑制すると記載されている。

さらに、スカイワードによるこの技術の「試験と導入」の取り組みを支援するために助成金を提供したアンオーソドックス・フィランソロピー財団(Unorthodox Philanthropy)は、ゴールドマンCEOに関する助成対象者紹介記事でより詳細な情報を提供している。

その記事には、「スカイワードチームは、アルミニウムで覆われたガラス繊維からなる不活性物質を採用した。これは、軍事作戦における敵レーダーの妨害・混乱の目的に通常使用され、雲を放電させることもできる」と書かれている。

さらに詳しい情報は「専有・機密情報」と記された文書で明らかにされた。世界銀行が、火災リスクへの対処手段を開発している企業から入手した資料一式の中でこの文書を公開したのだ。

スカイワードの図解には、「高リスク地域」での落雷を防ぐために、航空機が雲に粒子を投下する様子が示されている。同社はこの文書のなかで、雷雨の予測、対策の優先順位付け、雷雨領域の標的設定、飛行経路の最適化など、さまざまな目的でAIを活用しているとも記している。

ハーテルは、同社がこの技術を慎重に導入し、山火事リスクの高い嵐の発生時のみに活用すると強調し、そのような嵐は特定の地域における雷活動の0.1%未満に過ぎないと付け加えた。

そして、「私たちの目標は、火災が人命、重要インフラ、生態系を脅かし、火災の鎮圧コストと影響が急速に悪化する可能性がある、極めてリスクの高い限られた日に、発火の確率を低減することです」と話した。

世界銀行が掲載した文書には、スカイワードが2024年8月にアルバータ州山火事対策局と提携し、「航空機とドローンによる雷抑制効果を実証」したこと、そしてそのプロセスにより「対照群」(おそらく、散布を実施しなかった雷雨領域を意味する)と比較して雷が「60~100%減少」したと記されている。

この文書には、同社が2025年夏にブリティッシュコロンビア州とアルバータ州の山火事対策機 …

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