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「一番ましな悪い選択肢」
人工芝の安全性をめぐる
論争はまだ終わらない
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Is fake grass a bad idea? The AstroTurf wars are far from over.

「一番ましな悪い選択肢」
人工芝の安全性をめぐる
論争はまだ終わらない

コーネル大学が新しいフィールドホッケー場に人工芝を敷設したのに対し、環境活動家たちが訴訟を起こし、科学者たちはPFASやマイクロプラスチックへの懸念を訴えた。しかし大学側の判断は変わらなかった。これと同じ対立が今、全米各地で繰り広げられている。人工芝は「一番ましな悪い選択肢」なのか。 by Douglas Main2026.04.27

この記事の3つのポイント
  1. 人工芝は利便性と耐久性から米国で爆発的に普及し、2024年には敷設面積が2001年比で約11倍に達した
  2. PFAS・マイクロプラスチック・ゴムチップ由来の有害物質が環境や健康に及ぼすリスクは科学的に未解明な部分が多く、論争が続いている
  3. 廃棄・リサイクルの困難さや温室効果ガス排出など長期的な環境負荷を踏まえた意思決定の枠組みが、社会的に未整備のままである
summarized by Claude 3

1月にしては珍しい暖かさで積もった雪が溶け、米コーネル大学がフィールドホッケー用に建設した最新の競技場が姿を現した。数カ月前まで、そこは鳥や虫が飛び交う牧草地だった。今では4000平方メートル以上の広さにわたり、ビリヤード台のフェルトのような色合いの人工芝が広がっている。その鮮やかな色は、まるでデジタル画像のようだ。私は近くの小川から歩いて丘を登り、その場所を見に行った。その日、グラウンドを取り囲む金属製のフェンスは施錠されていたが、誰かが廊下ぐらいの広さの新しい人工芝を外に置きっぱなしにしていた。それはゴワゴワしていて固かったが、ブーツで踏むと弾力があり、キュッキュッときしむような音がした。その上を走り回ることは想像できたが、慣れるには間違いなく多少の時間が必要だろう。

この日の散歩の同伴者は、その考えに対し私以上に好意的ではないようだった。地元の環境活動家である小泉弥生(Yayoi Koizumi)は、2023年からコーネル大学の人工芝プロジェクトに反対する運動を続けてきた。その日、緑がかった青色のベストの上に色あせたプラム色のコートを羽織り、サーモンピンクとスレートグレーとひまわり色のスカーフを巻いた小柄な女性の小泉は、歩きながら、そうせずにはいられない様子でプラスチックごみを拾っていた。赤色の使い捨てカップ、ダンキンドーナツのポリエチレン製容器、1.5メートルほどのビニール製パネルなどだ。そうしたものが放置され、分解してマイクロプラスチックの破片になることが、小泉には耐えられなかったのだ。この新しい競技場もそうなるだろうと、彼女は考えている。「大学は生きている大地を、プラスチックで覆い尽くしてしまったんです」と小泉は言った。「本当に腹立たしいことです」。

この新しい競技場は、大学構内のレクリエーション・スペースを拡充する7000万ドルをかけた計画の一部である。今春現在、コーネル大学は、約2万3000平方メートルの人工芝を敷設することを計画している。前世紀半ばから俗に「アストロターフ(AstroTurf)」と呼ばれてきたものだ。大学の広報担当者は、人工芝の敷設が「個人、社会、そして生態系の総合的な健全性を支える」役割を果たす「健康増進型キャンパス」の重要な一部になると述べている。小泉が運営する反プラスチック環境保護団体「ゼロ・ウェイスト・イサカ(Zero Waste Ithaca)」は、その主張はほとんど無意味だと指摘する。

この論争は、よくある「地域住民対大学」という単純な対立以上のものだ。人工芝はかつて、プロスポーツの競技場や、せいぜい郊外の1軒か2軒の家の庭に使われている程度のものだった。しかし現在、全米各地の地域社会で、遊び場や公園、ドッグランに人工芝を敷設すべきかどうかをめぐり、論争が起こっている。支持者たちは、人工芝は天然芝よりも安価で耐久性があり、水や肥料、手入れの必要性も少ないと主張する。さらに、天然芝のグラウンドよりも年間を通じてより多くの日数・時間にわたり整ったグラウンドを提供するため、より強固な運動プログラムを望む選手や学校にとって競争上の優位性になるという。

しかし、新世代の人工芝は前世紀半ばのものよりも見た目と触感が良くなったとはいえ、やはりプラスチックに過ぎない。人工芝が利用者や環境を危険にさらす微粒子を放出することや、多くの健康問題と関連する「永遠の化学物質」といわれる「PFAS(パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)」を含むことを示すいくつかのエビデンスもある。人工芝内部の緩衝材は通常、細断されたタイヤから作られており、これも健康リスクをもたらす可能性がある。また、人工芝のグラウンドは10年に1回程度交換する必要があり、大量の廃棄物を生み出す。

それでも、人々は大量に購入している。2001年、米国では700万平方メートル強、重さにして1万1000トン弱の人工芝が敷設された。2024年までにその数字は7900万平方メートルに達した。これは、マンハッタン島全域を覆ってもまだ余る広さであり、重量にすれば12万トン近くにのぼる。人工芝は2万カ所の運動場と、数万カ所の公園、遊び場、裏庭を覆っている。そして、米国は世界市場のわずか20%に過ぎない。

こうした数字の増加が、マイクロプラスチックや環境汚染を研究する人々を懸念させている。実際のリスクを正確に把握するのは難しい。プラスチック製造業界は、人工芝のグラウンドは適切に敷設されていればに安全であると主張するが、多くの研究者はそう考えていない。「人工芝は非常に高価で、有毒な化学物質を含んでおり、子どもたちを不必要なリスクにさらしています」。鉛やマイクロプラスチックなどの環境有害物質を研究してきたボストン・カレッジの疫学者、フィリップ・ランドリガン教授は言う。

しかし、土地が限られている一方で運動施設への需要が高いコーネル大学では、人工芝は魅力的な選択肢だった。コーネル大学の芝生科学教授フランク・ロッシは、私にこう話した。「結局のところ、土地と需要の問題なのです」。

1965年、米テキサス州ヒューストンの新しいドーム型野球場は、宇宙時代のデザインを象徴するアイコンだった。しかし、この球場「アストロドーム」には、1つ問題があった。太陽である。テキサス州中心部の奥まった場所にあるアストロドームでは、太陽が天窓を通して明るく輝いた。その輝きがあまりに強烈だったため、フライを落球する選手が続出した。そこで球団は天窓を塗りつぶした。日光が遮られた外野の芝生はしおれ、枯れてしまった。

そのときすでに、代替品の開発が進んでいた。1950年代後半、フォード財団の資金提供を受けたある教育研究所が、柔らかく芝生のような表面素材があれば、都会の子どもたちに屋外の遊び場所をより多く提供できると判断し、そういう素材を考案するように化学メーカーのモンサント(Monsanto)を口説き落とした。その結果生まれたのが、ゴム製の土台に短く切りそろえたナイロン製の葉を貼り付けたものだった。モンサントはこれを「ケムグラス(ChemGrass)」と名付けた。それがアストロドームの外野に敷設されると、より話題性のある新しい名前が付けられた。「アストロターフ」だ。

第一世代の人工芝は脆くて硬かったが、品質は向上していった。現在、競合製品がいくつかある。しかしそれらはすべて、石油系ポリマー(つまりプラスチック)を小さな穴から押し出すことで生成された繊維を、カーペットのような基布に縫い付けたり熱融着したりして作られる。基布は、やはりプラスチックで出来た何らかの緩衝材に貼り付けられる。1970年代に業界は、人工芝を充填材(通常は砂)の上に重ねるようになった。1990年代までに、「第三世代」の人工芝はより柔らかいポリエチレン製の繊維に切り替わった。その下には、砂と、柔らかくて安価な細断ゴムを組み合わせた充填材が追加された。細断ゴムは、毎年数億本が廃棄される自動車のタイヤから作られる。この「ゴムチップ(crumb rubber)」が緩衝機能を提供し、人工芝の葉と裏地の間の隙間を埋めている。

1980年代初頭、米国のプロ野球およびプロフットボール競技場のほぼ半数が人工芝だった。しかし、多くの選手は人工芝を好まなかった。人工芝は天然芝よりも高温になる上、ボールの跳ね方が異なり、選手の怪我の発生率も高めているように見えた。1990年代以降、ほとんどのプロスポーツは天然芝へと回帰している。水やりやメンテナンスのコストは、選手の満足度維持や、怪我のリスク回避の重要性に比べれば、取るに足らないものだからだ。

しかしその一方で、大学や高校では人工芝を購入するところが増えている。その利点は、特に雨が多すぎる地域や足りない地域で明らかだ。天然芝のグラウンドは、気温が低くて雨の多い米国北部では1年間にわずか8カ月間、時間にしてせいぜい800時間強しか使用できない。人工芝のグラウンドなら、年間3000時間の活動が可能である。冬の終わりから始まるラクロスのようなスポーツにとっては、この利点が人工芝をより魅力的なものにしている。現在、ラクロスの競技場のほとんどが人工芝だ。フィールドホッケーのほぼすべての競技場も同様であり、選手たちは、均一で弾力性のある人工芝がボールをよく跳ね返す点を好んでいる。

さらに、人工芝の支持者たちは、天然芝よりもメンテナンスの必要性が少なく、費用や資源の節約になると主張する。それは必ずしも真実ではない。固くなった競技場のフィールドをほぐしたり、鳥の糞の除去や冷却のためにホースで水をかける作業は、依然として必要である。充填材の補充が必要になることもある。しかし、天然芝は競技可能な時間がより少なく、損傷を避けるため競技場所を交互に休ませる必要があるため、ローテーションの敷地が不要な人工芝の方が少ない面積で済む。そのような理由で、人工芝の市場は21世紀に爆発的な成長を遂げた。

イサカの市と町(コーネル大学の建設プロジェクトに対して重複する管轄権を持つ2つの別個な行政機関)は、同大学の新たな人工芝競技場(フィールドホッケー場と複合施設「マイニング・フィールドハウス=Meinig Fieldhouse」)に関する住民公聴会を複数回開催した。小泉の団体は大勢が出席し、コーネル大学の職員数名も人工芝競技場のアイデアに反対するために姿を見せた。そして、人工芝のリスクに関する文献の引用や研究論文を何ページにもわたり提出した。

それらの集会のうち、2つにはコーネ …

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