KADOKAWA Technology Review
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Major Opponent of Phone Encryption Still Expects Congress to Roll the Technology Back

アップルがスマホ内のデータを捜査当局に開示すべきたったひとつの理由

ニューヨーク州地方検事局のトップは、スマホ内の暗号化データへの捜査当局のアクセスについて、アップルに強制できると考えている。 by Brian Bergstein2016.10.20

次期大統領と議会はアップルとグーグルに携帯電話の再設計を強制するだろうか?

マンハッタンにあるニューヨーク州地方検事局のトップ、サイラス・バンス・ジュニア地方検事は、完全に暗号化されたスマホは殺人や性的暴行などの重大犯罪の捜査で、警察が捜索令状を執行するのを妨げていると、すでに1年以上にわたって注意を喚起している。しかし、オバマ大統領の全面的な支持と議員の賛同にもかかわらず、バンス地方検事の望みどおりに、つまり、令状のある捜査官に携帯電話のデータへのアクセスを従来どおり認めるようにスマホメーカーに強制することが法制化される動きはない「アップルが間違っているのだろうか?」参照)。

しかし、バンス地方検事は水曜日、マサチューセッツ州ケンブリッジで開催されたEmTech MIT 2016で、物理的な形態や他のデジタルプラットフォームの場合に、捜査官(と弁護人)が利用できるある種の証拠(メモ、予定表の項目、連絡先、通信)をスマホが自動的に隠蔽するのはほとんど意味がないと、議員が最終的には理解すると確信しているという。

Brian Bergstein and Cyrus Vance Jr. on stage at EmTech MIT 2016.
MIT Technology Reviewのブライアン・バーグステイン記者とサイラス・バンス・ジュニア(EmTech MIT 2016の壇上)

「この問題は決して終わっていません。重大な事件が発生したとき、捜査当局がアクセスできず、他の人(メーカーやクラウド事業者)がアクセスし得る携帯電話の通信があることが証明されたら、間違いなく議会を活気づかせる効果があるでしょう。そのような事態になれば、振り子の揺れは必要以上にはるかに強く、速く元に戻る可能性があると考えています。それこそが、テック業界と政府が協力し、議会の指導の下で、この問題に取り組むべき理由です」

今のところ、バンス地方検事が論じているのは、地元警察がテクノロジーによってどのような制約を受けるか、完全に理解されていない、という点だ。これは主に、どれだけの数の未解決事件が携帯電話内の証拠によって影響を受けるかの集計記録がないことが理由だという。昨冬起きたこの問題は、カリフォルニア州サンバーナーディーノの大量射殺犯のiPhoneへのアクセスを米国連邦捜査局(FBI)が要請したがかなわず、結局、FBIは携帯電話をハッキングする手法を探り当て、あっけない形で議論は終結した。

2014年にアップルはディスクの完全暗号化に切り替え、ユーザーのパスコードを唯一のキーにしたが、それまでは、アップルは日常的に、捜索令状のある捜査官に端末の中身を明かしていた。(このテクノロジーを採用していない多くのアンドロイド端末では今でも可能であり、また、iPhoneやiPadについても、パスコードを教えられるか、推測できれば、今でも捜査官はそれらのデバイス内に入っていける)。アップルの変更により、ニューヨーク州地方検事局では約400台のiPhoneとiPadが捜索令状を執行できないでいる、とバンス地方検事はいう。

バンス地方検事の立場を批判する者は、捜査官はテクノロジーを元に戻すのではなく、完全に暗号化されたスマホに適応することに焦点を当てるべきだと主張する。捜査官には一般的に、携帯電話内に存在する証拠を得るための他に多くの方法があると論じており、それにはクラウド内の暗号化されていないバックアップからのアクセスが含まれる。

しかし、バンス地方検事は、そのような他の方法は想定しているほど実り豊かなものではないという。主な理由は人々は必ずしもすべてをバックアップするわけではないからだ。ニューヨーク州地方検事局は捜索令状を執行できなかったアップル製端末400件のうち、解決できたのは約4分の1だけだとバンス地方検事はいう。

これらの未解決事件の社会的コストは、アップル自身ですらロックを解除できないスマホを所有することで得られる高度のコンピューター・セキュリティと引き換えに、私たちが受け入れなければならないのか? バンス地方検事は、以下の問題は依然議論されるべき対象だと主張する。

「主たる関心が数十億台の携帯電話の販売である民間企業の決定を、どうすれば覆させられるのか?」

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テクノロジー・ジャーナリストとして、2000年から、ニューヨーク、シリコンバレー、ボストンを拠点に活動。AP通信でのテクノロジー担当編集者を経て、MITテクノロジーレビュー副編集長、編集主幹を歴任。
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