KADOKAWA Technology Review
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Otto’s Self-Driving 18-Wheeler Has Made Its First Delivery

自律トレーラーが乗用車より早く実用化されれば、雇用への影響は甚大だ

自律トラックが初めて運んだ積荷は、2000ケースのバドワイザーだった。 by Jamie Condliffe2016.10.26

トラックに積まれたビールがコロラドスプリングス(コロラド州)に到着した。つまらないことのように聞こえるかもしれないが、今回この仕事をやってのけたのはトラックだ。輸送用トラック自身が運転したのだ。

自律運送をしてみせた自律トラック開発企業のオットーは、倉庫や店舗向け商品輸送を来年にも開始すると発表していたが、計画はどうやら見込みより早く実現したようだ。

ブルームバーグによると、今回の輸送はフォートコリンズ、コロラドスプリングス間を州間高速道25号線沿いに約193km走行する「ささやかな」運転だったという。しかしこのデモンストレーションは、自律トラックが自律自動車よりもかなり商業利用に近いところまで来ていることを示している。

進歩を快く思っていない人もいるようだ。ジャーナリストのファハド・マンジューが最近ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで指摘したように、自律トラックは経済を正真正銘の混乱に陥れる可能性をはらんでいる。もし18輪トレーラーで1日中輸送できるようになれば、流通網は作り変えられ、トラックドライバーは仕事を失う。テクノロジーが雇用に与える影響とはこういうことだ。

しかしオットーは、今のところトラック運転手の仕事を奪うつもりはなく、ただ変化させているだけだ、という。

大量のバドワイザーを運んだ今回のトラックには、醸造所から高速に乗るまでの間と、行程の最終部分で、人間のドライバーが乗り込んだ。自律運転だったのは州間高速道25号線を安全走行している間だけだ。ワイアードのインタビューで、オットーのリオール・ロン共同創業者は、少なくとも短期的な目標として、同社が目指しているのは、行程の最初と最後の部分は人間が運転し、中間部分を全自動システムが担うモデルだという。

最近ウーバーに買収されたオットーは、他のあらゆる自律運転構想と同様、法的な面で先行きが不透明な状況に直面している。というのも、連邦政府が自律トラックに関する法整備の方針を決めかねているからだ。オットーは現在カリフォルニア州でトラック数台をテスト走行させているが、近日中に大規模市場向けの発表をする意向は何も示されていない。

それでも、高速道路を走行中にトラックを追い越すとき、運転席を見上げても、そこに誰もいないなんていうことが起こる日は、そう遠くないかもしれない。

(関連記事:Wired, Bloomberg, “Uber Is Betting We’ll See Driverless 18-Wheelers Before Taxis,” “Self-Driving Trucks May Hit the Road Before Google’s Cars,” “Uber and Amazon Want to Muscle In on the Shipping Industry”)

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クレジット Image courtesy of Otto
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
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