新型コロナ対策、エボラ出血熱流行から学ぶべきだった「教訓」
新型コロナウイルス感染症が米国でここまで蔓延してしまった原因は何なのか、今後どのような取り組みをすべきなのか。2014年の西アフリカエボラ出血熱流行に対する米国の対応について分析した、クリストファー・キルヒホフ博士に聞いた。 by Konstantin Kakaes2020.04.27
2014年のエボラ出血熱の米国の対応について、米国国家安全保障会議で事後分析を執筆したクリストファー・キルヒホフ博士に、感染症の流行から得られた教訓や今後とるべき対応について聞いた。
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——2014年にエボラ出血熱が発生した後、米政府はどのような対策をしたのでしょうか?
2014年12月に議会を通過した緊急支出法案において、当時のオバマ政権は、極めて深刻な弱点を補強するために10億ドルを使いました。当時、世界中の多くの国には、新型の病原体や命にかかわる病原体が出現した際に検知できるような検査体制がありませんでした。我々はこの資金を使って60カ国以上と連携し、病原体が初めて出現した際に検知することができるよう、それまでよりもずっと大規模な検査体制を取り入れました。その後、国ごとに緊急事態への対応と公衆衛生の体制がどれほど強固なものかを評価し、各国と共同で準備と対応の体制を強化しました。
我々はまた、エボラ治療センターのネットワークを作り上げました。これは、米国全土に点在する35の病院と、連邦政府に指定された多くの研究所で構成されるネットワークです。もし誰かがエボラやその他の致死率の高い病気にかかったときに2時間以内で行ける場所に治療可能な病院があるようにしたのです。
もう1点、非常に重要だったのは、オバマ政権の終わりに向けて、ホワイトハウスに世界健康安全保障局(Global Health Security Directorate)と呼ばれる新しい組織を作ることでした。
米国国家安全保障会議内のこの新しい組織には2つの役割がありました。1つ目は、将来、危機的な事態が発生した際に対応を調整することです。そして2つ目の役割として、多くの省や機関で大規模な構造改革を実現させる任務を担っていました。これらの構造改革は、ホワイトハウスによって組織化された遂行無しには、省や機関それ自体では起こり得ないような改革でした。
——その構造改革がどのようなものだったか、もう少し教えていただけますか?
国内面では、米国で発生したエボラの事例が非常に少なかったことで、連邦政府と各州、地方自治体の対応に大きなギャップが浮き彫りになりました。米国では、公衆衛生当局の大半が実際には地方レベルで存在するものの、機能の大半は連邦政府にあるという連邦制度を取っているので、将来対応に迫られた際にはさらに密に連携する必要がありました。
国外面では、外国で感染症が発生した際に、政府内のさまざまな体制を利用してどのように対応するかというまったく新しい方針を作成しました。民間の医療従事者を支援するために米軍を西アフリカに派遣しましたが、過去に前例のないことです。
——そのよう …
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