KADOKAWA Technology Review
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接触追跡アプリ、英国で60万件の感染防止か=オックスフォード大
Yui Mok/PA Wire/Press Association via AP Images
The UK's covid app made a serious difference during the winter surge

接触追跡アプリ、英国で60万件の感染防止か=オックスフォード大

オックスフォード大学の研究チームは、英国の新型コロナ接触追跡アプリの有効性を証明する研究結果を発表した。日本では接触追跡アプリをめぐって混乱が続いているが、接触通知システム全般にとって一歩前進となる研究結果だ。 by Lindsay Muscato2021.02.23

オックスフォード大学の研究チームは、英国の接触追跡アプリが約60万件の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染を予防した可能性があるとの結果を算出した。今回の発表は、運用初期に深刻な問題に直面した同アプリにとって良いニュースだ。より一般的にいえば、接触通知システム全般にとっても一歩前進となった。

この研究では、200万人近くの人々が新型コロナに感染していた10月1日から12月31日の間に、英国国民保険サービス(NHS)のアプリが送信した150万件の警告通知の影響をモデル化した。検査で陽性が判明した後にアプリを使って他の人に警告した人は、1人当たり平均4.4件の通知を送信していたことが分析で明らかになった。この通知がなかったら、感染者は実際より20万人から90万人多かっただろうと同チームは推定している。

本誌が以前報じたように、接触追跡アプリは大々的に使用されなくても大きな効果を発揮する可能性があることを、今回の研究データは示している。「ユーザー数が1パーセント増加するたび、感染者数が0.8~2.3パーセント減少すると推定しています」と研究チームは述べている。

測定が難しいことで知られている接触追跡アプリの有効性を把握しようとしていた人々にとって、これは良いニュースだ。パンデミック期間中ずっと接触追跡アプリを研究していたマサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院の研究者であるラファエル・ヤハロム博士は、今回の研究論文について、「大規模展開のこれまでで最も包括的かつ体系的な分析であり、有効性の最も有力な証拠となります」と述べた。

プライバシーに関する懸念によって分析が特に難しくなっているため、接触追跡アプリが有効なのかどうかを研究するのは困難だ、とリナックス・ファウンデーション・パブリックヘルス(Linux Foundation Public Health)のプログラム部長を務めるジェニー・ウェンジャーは話す。多くの新型コロナ関連アプリは、ユーザーの匿名性を確保するシステムであるグーグルとアップルのプロトコルを使用している。このプロトコルはユーザーのプライバシーをしっかり保護するため、保健機関や研究者が情報をさかのぼったり、警告のパターンを確認したりするのは難しい。

この問題を回避するため、オックスフォード大学の研究チームは、送信された通知の数を調査し、そのデータを、新型コロナウイルス自体の動態に関する科学者の知識と比較した。そうすることで、警告メッセージを誰が受け取ったのかを正確に知らなくても、アプリの効果をモデル化できた。

ただし、新型コロナ追跡アプリが利用可能なすべての国で、この方式がうまくいくというわけではない。何よりも、通知を追跡するには、何らかの中央集権型医療システムが必要だ。例えば、米国は、国の中央データベースがないため、代わりに各州のアプリのデータの寄せ集めを使用しているが、それはバイデン政権で変わる可能性がある

接触追跡テクノロジーが誕生してから1年近くが経つ今、その有効性に関してより多くの研究がなされるようになる可能性がある。ヤハロム博士によると、ほかにもいくつかの研究が実施されており、2月には追跡アプリに関するスイスの研究も発表されている(一方で、これらの研究を直接比較するのは難しいとヤハロム博士は警告している)。

接触通知アプリにとっては厳しい時期が続いていた。アプリの利用が義務付けられていない国では、普及率の低さとプライバシーに関する懸念で行き詰まりを見せている。だが、アプリが効果的だと分かれば、ダウンロードして使おうと思う人も出てくるかもしれない。有効性を示すデータが多くなれば、投資の増加とダウンロード数の増加につながる可能性があると、接触通知アプリの開発と分析に携わるウェンジャー部長は話す。そして、アプリのユーザー数が増えれば、より多くの感染の鎖が断ち切られることになるだろう。

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MITテクノロジーレビューのパンデミック・テクノロジー・プロジェクト担当編集者。曝露通知など、新型コロナウイルス感染症対策にテクノロジーがどう活用されているかを取り上げている。以前は、より強力で代表的なジャーナリズムの構築を目指す「オープンニュース(OpenNews)」の編集長を務めていた。
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