量子コンピューター時代を見据え、サイバー攻撃集団が準備中
将来の量子コンピューターの実用化を見越したサイバー攻撃者たちは、政府や企業の暗号化された機密情報をすでに収集し始めている。米国政府はこうした新たな脅威に対抗するために、ポスト量子暗号の取り組みを進めている。 by Patrick Howell O'Neill2021.11.05
米国の政府関係者は、ハッカーによる差し迫った危険に対処する一方で、もう一つの長期的な脅威にも備えている。それは、サイバー攻撃者たちが将来的に解読できることを期待して、今のうちに暗号化された機密データを収集しているという脅威だ。
この脅威は、現在使用されている古典的なコンピューターとは全く異なる仕組みを持つ量子コンピューターによってもたらされる。量子コンピューターは、「1」と「0」で構成される従来のビットの代わりに、異なる値を同時に表すことができる量子ビットを使用する。この複雑な性質により量子コンピューターは、特定のタスクをはるかに高速でこなし、現代のコンピューターでは実質的に解決不可能な問題を解決できる。例えば、個人情報や企業機密、国家機密などの機密データを保護するために現在使われている暗号化アルゴリズムの多くを解読できるのだ。
量子コンピューターはまだ初期段階にあり、莫大な費用がかかり、多くの問題を抱えている。だが、政府関係者は、この長期的な危険から国を守るための取り組みを今すぐ始める必要があると述べている。
米国立標準技術研究所(NIST:National Institute of Standards and Technology)の数学者であるダスティン・ムーディー博士は、次のように述べている。「国家の敵が、大型の量子コンピューターを手に入れ、機密情報にアクセスする脅威は現実のものです。彼らは暗号化されたデータをコピーし、量子コンピューターを手に入れるまで保持しようとしているのです」。
このような「今収穫して後で復号する」という戦略に直面して、政府関係者は、新たに登場してくる強力な機械から機密を守るための新しい暗号化アルゴリズムを開発・展開しようとしている。中でも米国国土安全保障省(DHS:Departm …
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