KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
航続距離は自転車並み?
クリーンな「電動航空機」が
まだまだ離陸できない理由
Ms Tech | Envato
気候変動/エネルギー Insider Online限定
This is what's keeping electric planes from taking off

航続距離は自転車並み?
クリーンな「電動航空機」が
まだまだ離陸できない理由

電動航空機は、航空業界が排出する地球温暖化ガスを大幅に削減できる可能性を秘めている。だが、現在のバッテリー技術では航続距離はわずか50キロメートルほどが限界で、当面の実用化は難しそうだ。 by Casey Crownhart2022.08.30

飛行機での旅行によって排出される温室効果ガスは、世界の排出量の約3%を占めている。複数のスタートアップ企業が現在、電動航空機で空の旅をクリーンなものにする方法を研究している。問題は、現在の電動航空機では12人ほどの乗客を安全に運べる距離が、わずか50キロメートルほどだということだ。

航続距離が伸びない要因は電池、特は小さな空間に蓄えられるエネルギーの量にある。狭い窓際席に足を折り曲げて座ったり、重すぎる手荷物の超過料金を払ったりした経験があれば、飛行機にはスペースと重量に厳しい制約あることはご存じだろう。

現在の電池が持つエネルギー密度で飛ばせるのは、ごく軽量の飛行機だけだ。そのような飛行機でさえ、航続距離は自転車で遠出をするのと同じぐらいでしかない。

ここ30年間で、電池はより小さなスペースに大量の電力を詰め込めるようになった。技術改良の継続によって電動航空機の実現可能性は高まる可能性がある。だが、まだその域には達しておらず、結局のところ電動航空機の未来は、これからの電池テクノロジーの進歩にかかっていると言える。

スイッチオン

電動飛行の将来性は多くの点で魅力的だ。気候変動を引き起こす温室効果ガスの全世界での排出量において、航空機が占める比率は年々増加している。電池駆動の飛行機は成長産業となり、脱炭素化を加速するのに役立つはずだ。

電動航空機の実現による地球温暖化ガス排出量の削減効果は非常に大きくなる可能性がある。再生可能エネルギーで充電した電池駆動の飛行機は、ジェット燃料で飛ぶ現在の飛行機に比べて、排出量を90%近く削減できる可能性がある。こう指摘するのは、国際クリーン交通委員会(ICCT:International Council on Clean Transportation)の運輸アナリストであるジャヤント・ムコパダヤ研究員だ(依然として残る排出量は主に電池の製造によるもので、多くの飛行機では電池交換が毎年必要になると見込まれる)。

電池は、電気を効率良く使う方法でもある。電動航空機では、電池を充電するのに使われたエネルギーの約70%が、実際に飛行機の動力となる。電池とモーターでいくらか損失があるが、航空機の脱炭素化で検討されている他の方法に比べると、効率は高い。例えば水素と合成燃料では、効率はそれぞれ20%と30%に落ちる。

こうした可能性をにらんで、複数のスタートアップ企業が、小型電動航 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Lego bricks are making science more accessible 科学を身近にするレゴブロック、大学の実験装置にも応用
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. Inside the US government’s brilliantly boring websites 米政府系サイトの常識を変えた「デザインシステム」革命
  4. Why artists are becoming less scared of AI 見えてきた「生成AIの限界」がアーティストの不安を取り除く
  5. A way to let robots learn by listening will make them more useful 見落とされてきた「耳」、音を学んだロボットはもっと賢くなる
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る