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中国テック事情:2024年のAI規制で注目すべき4つのこと
Leon Neal/Getty Images
Four things to know about China’s new AI rules in 2024

中国テック事情:2024年のAI規制で注目すべき4つのこと

中国政府が新しいテクノロジーに迅速に対応することはよく知られている。2024年、中国におけるAI規制がどのようになるかを専門家に聞いてまとめた。 by Zeyi Yang2024.02.05

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

2023年は、人工知能(AI)にとって大きな飛躍の1年だった。「チャットGPT(ChatGPT)」のようなサービスのおかげで、今や何百万人もの人々がAIと直接対話し、AIについて話し、その影響を日々感じている。

政策立案者もまた、AIの影響力を強く感じている人たちだ。政策立案者はAIサービスの利用を制限せず、一方でAIサービスが引き起こす問題にどう対処すべきか、取り組んでいる。

今年の初め、本誌は2024年の世界各国のAI規制の動向について調べた記事を公開した(こちらの記事にまとめている)。

中国において、2024年に注目すべき大きな動きの1つは、中国が欧州連合(EU)の足跡をたどり、独自の包括的なAI法を発表するかどうかである。昨年6月、中国の最高統治機関は、現在取り組んでいる法案のリストを発表した。ここに、「人工知能法」が初めて登場したのだ。

中国政府は、新しいテクノロジーに迅速に対応することに長けている。中国は、チャットGPTが大ブレイクしてからわずか数カ月後に、おそらく世界初となる生成AIに関する規制を導入した。だが、新しい包括的な法律(人工知能法)により、中国はAIが現在の物事の仕組みをどのように破壊するか(または破壊しないか)を、より制御できるようになる可能性がある。

本誌は、中国のAI規制事情に詳しい複数の専門家に話を聞いた。専門家が今年予測する主要な4つのトピックを紹介する。

1.中国「人工知能法」が、すぐに完成するとは期待しない方がいい

ディープフェイクなど、AIの一部に焦点を当てたこれまでの中国の規制とは異なり、この新しい法案は全体像を対象としたものである。そのため、草案の作成には時間がかかることになる。スタンフォード大学国際安全保障協力センター(Stanford University Center for International Security and Cooperation)の研究者であるグラハム・ウェブスターは、2024年に人工知能法の草案が提出される可能性は高いが、「最終的に成立したり、発効に至ったりする可能性は低い」と推測している。

大きな課題の1つは、何がAIで何がAIでないかを判断するだけでも非常に難しいため、1つの法律ですべてに対処しようとするのは非現実的である可能性があることだ。ポール・ツァイ中国センター(Paul Tsai China Center)で中国の法律を研究するジェレミー・ダウムは、「法律とテクノロジーでは、単一の法律が必要なのか、それとも他の分野への適用という点で対処すべきなのかが常に問題になります」と語っている。「生成AIコンテンツの規制というのは理にかなっていますが、AI単独ではどうでしょうか? それは実際に、やってみないとわかりません」。

2.中国政府はAI企業に対し、何を避けるべきかを伝えている

中国の国営研究機関である中国社会科学院が2023年に勧告した人工知能法の草案は、中国が達成したいことの参考になる。草案で特に興味深い項目の1つは、政府の明示的な承認がない限り、AI企業が避けるべき分野と既存の製品を挙げた「ネガティブリスト」である。このリストに何が掲載されるのか、そしてそれがEUによって設定された同様の禁止措置とどう違うのかを見るのは、非常に興味深い。

シンクタンク「AIガバナンスセンター(Centre for the Governance of AI)」研究員であるクリスティ・ロークは、「このリストは、一部の製品、サービス、モデル開発のみを厳しい監視の対象としており、中国企業の全体的な規制遵守の負担を軽減することを意図して作られています」と話している。このネガティブリストは、企業が政府に好かれるために何をしてはいけないかを正確に示しており、誤って政府を怒らせることを避けるのに役立つはずだ。

3.第三者機関が、AIモデルの評価を開始する可能性がある

規制は、施行されなければ意味がない。そのため、AIモデルを評価する方法を開発することが、中国の規制当局が2024年にすべきことのリストに載る可能性がある。そう述べるのは、ジョージ・ワシントン大学の政治学のジェフリー・ディン助教授である。

それはどのようなものになるのだろうか? 同助教授は、「1つ目は、AIモデルの安全性とセキュリティをテストおよび検証するための国家プラットフォームの開発。2つ目は、定期的なレビューを実施するための第三者評価機関のサポートです」と語る。

これについては、中国のテクノロジー企業と研究者が2023年に発表した、AIモデルを評価する方法を示す非常に詳細で興味深い文書についての記事がある。こちらを参照してほしい。

4.中国は、著作権に対して寛容になる可能性が高い

生成AIは著作権の悪夢のような状況を生み出している。現在の法律は、誰が誰に何の責任を負い、そしてなぜ負うのかを解明するのに十分ではない。香港大学のアンジェラ・チャン准教授(法学)は、来年には中国からさらなる政策ガイドラインや裁判所の判決が出され、潜在的な知財の問題が明確になると予想している。

中国政府は、AI企業に対して寛大になる可能性が高い。「AI分野の成長と発展を促進することが国家の最重要課題であることを考慮すると、中国の行政機関がAI関連の侵害について、企業の調査に積極的に取り組む可能性は非常に低いでしょう。それまでの間、中国の裁判所は知財訴訟の判決において、ビジネス寄りのアプローチを取ることになると思います」とチャン准教授は述べる。

言うまでもなく、2024年はこれら4つの分野すべてに注目し、最新の情報についてお知らせする予定だ。

中国関連の最新ニュース

1. 1月13日の台湾総統選挙で、政治的姿勢が中国政府にとって最も歓迎されていなかった頼清徳(ライ・チントー)が当選した。(アルジャジーラ

  • 台湾検察庁がネットジャーナリストを逮捕した。中国の偽情報キャンペーンの一環として捏造された選挙世論調査結果を発表したというのがその理由だ。(ポリティコ
  • 台湾人の多くは、中国にルーツを持つ民間の神を崇拝している。これらの宗教的な系譜は、今回の選挙期間中にますます政治化されてしまうことになった。(BBC

2.北京にあるマイクロソフトのAI研究ラボは、かつては国際的な研究協力の成功例だった。しかし現在の米中の政治的緊張の中で、このラボはマイクロソフトの負債となってしまっている。(ニューヨーク・タイムズ

3.中国政府は、スマートシティとされる雄安新区の建設に、650億ドル以上を費やした。しかし多くの人は移住をためらっており、街は依然として閑散としている。(ブルームバーグ

4.北京市政府は、テック企業に依頼してアップルのエアドロップ(AirDrop)の暗号を解読させ、匿名の抗議メッセージを送信した人物を突き止めたと自慢した。(AFP

5. 中国の万里の長城は、数千年にわたって劣化をどのようにして耐え抜いたのだろうか? 新しい研究によると、根のない小さな植物や微生物の「生きた殻」が助けになっているという。(CNN

6.紅海を通過する船舶はイエメンの武装勢力による攻撃を避けるため、中国とのつながりを放送している。(ブルームバーグ

中国企業、CESでの存在感に陰り

パンデミックにより、数年間国境を閉鎖していたため不参加だった中国のテック企業が、1月9日~12日にラスベガスで開催されたCESに戻ってきた。しかし、呉暁波チャンネル(Wu Xiaobo Channel)によると、中国企業が占有している展示スペースは最盛期の5分の1から3分の1程度にすぎなかったという。特に、中国の電気自動車(EV)企業が米国に来ず、中国における電気自動車製造の急速な発展が聞けなかったのは残念だとの声が聞かれた。唯一の例外は、空飛ぶ自動車モデルで大きな注目を集めたXペン(Xpeng)だった。

あともう1つ

新しいAIモデルにより、歌手の声を忠実に模倣した曲を簡単に生成できるようになった。ミュージシャンの中にはそれを嫌って法的な措置をとっている人もいるが、中には大いに活用している人もいる。75歳の香港の歌手であるワン・クォンは、昨年、AIが生成した若い頃の自分の声のクローンをフィーチャーした曲をリリースした。ワンは若き日の自分と一緒に、長く実りある芸術の旅を振り返った。「自分の声が昔と同じではなくなったら、AIに人生の使命を託す」とのことである。これは私が最近出会ったAIアートワークの中で、最も感動的なものの1つである。実際の曲はこちらで聴くことができる。

 

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ヤン・ズェイ [Zeyi Yang]米国版 中国担当記者
MITテクノロジーレビューで中国と東アジアのテクノロジーを担当する記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、プロトコル(Protocol)、レスト・オブ・ワールド(Rest of World)、コロンビア・ジャーナリズム・レビュー誌、サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙、日経アジア(NIKKEI Asia)などで執筆していた。
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