KADOKAWA Technology Review
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ビジネス・インパクト It’s All E-Commerce Now

すべての小売業がeコマースだ

小売りとeコマースはもう別物ではない。eコマース企業は実店舗に乗りだし、一等地に店舗を構えて小売業に君臨していた百貨店もネットに進出し、一等地を手に入れようと躍起になっている。 by Antonio Regalado2013.11.05

メイシーズと聞けば、サンタクロースや感謝祭のパレード、あるいは世界最大の店舗として知られているマンハッタンの旗艦店(11階建ての約20万平方メートルある)思い出すかもしれない。

米国を代表する百貨店メイシーズ本店の(マンハッタン)

だが、メイシーズは従来のファッションコーナーや香水売り場と、GPSやインターネット広告などのデジタル要素を融合させた店舗へと転身を遂げた。メイシーズの年次報告書によれば、実店舗とネットショップを同時に運営する「オムニチャネル」小売店となったのだ。

オムニチャネルは、「生き残り戦略」を言い換えた業界用語だ。廉価販売を武器に拡大するネットショップの脅威を背景に、伝統的な小売店はインターネットで買い物をする客層への対応を迫られている。その点、メイシーズの経営戦略は先進的だ。メイシーズのWebサイトを利用すると、訪問者のブラウザーには24 もの追跡用クッキーが保存される。テレビでは男性アイドルのジャスティン・ビーバーを起用したCMを流し、新しい世代の若者たちに専用アプリをダウンロードさせる。アプリには、最寄りのメイシーズ店舗の場所を知らせる「ストアロケーター」機能や、店内で商品のQRコードを読み取り、さらに詳しい情報を表示させる機能などがある。500の店舗裏の倉庫は2013年から小型配送センターとしても機能し、オンラインで受注した商品は、配送業者を介さずに直接発送される。

オンラインとオフラインの違いは何か? ガートナーの調査部門の責任者で、小売業向けにITについて助言するクリス・フレッチャーは「POSデータを分析しようとか、ウェブアクセスを解析しようとか、スマートフォン(スマホ)対応をどうするかといったことは、もはや重大な決断ではありません。もうEC(Eコマース)ではなく、単に『コマース』、もしくは『拡大型コマース』と呼ぶべきです。しかも拡大型コマースは未来の話ではなく、今取り組むべき問題。実店舗、ネットショップ、スマホアプリがすべて引っくるめて一つの購買体験になるという考えに、企業はようやくたどり着いたのです」と語る。

米国商務省国勢調査局によれば、2012年の米国のEC化率はわずか5.2%(ガソリンや食料品、自動車を含めれば13.1%)だから、今でも実店舗の売り上げの方がはるかに大きい。しかし、この数字はインターネットの影響を甘く見過ぎている。ベストバイなどの実店舗による顧客調査の結果、8割の顧客がネットで価格を調べてから、店の商品を購入していることが分かった。しかもその約3割が、店内でスマホを使って価格を確かめているのだ。実店舗を持つほぼすべての大企業の、テクノロジーに対する無理解ぶりは、ECをめぐる現状を端的に表している。

アクセンチュアの2008年時点の調査によれば、小売業者の売り上げに占めるIT投資の割合はたった2%である。一方、他の産業分野はその2~3倍の費用をかけていたのだ。こうした小売業者の鈍重な動きを尻目に、アマゾン・ドット・コムは、2013年には米国内で最大のライバルであるウォルマートのネット販売額の約8倍、600億ドルもの売り上げを達成した。

何千人ものエンジニアを雇っているせいで、アマゾンは副業としていろんなモノも売っているソフトウエア企業であるかのように見える(“No stores? No Salesmen? No Profits? No Problem for Amazon”参照)。しかし今、アマゾンやイーベイ、グーグルといったネット企業の主な投資先は、注文してから数時間で商品が届く当日配送サービスだ。米国のスーパー・マーケットなどに設置され始めたアマゾン専用の私書箱や、宅配トラック部隊を整備して、ネット企業は互いにしのぎを削りながら、「すぐ手に入るうれしさ」という実店舗に残された最後のメリットまで奪い取ろうとしている。

ネットでの足場が弱い昔ながらのチェーン店は、Web上のソーシャルメディアやスマホを使う買い物客をつかまえるために、搦めて手から攻めようとしている(“The Internet Killed Distance, Mobile Computing Brought it Back”参照)。ただし、ネット時代において経営者が「金食い虫」扱いしだした実店舗は、今後、その営業形態が強みに変わるかもしれない。例えば、「インドアマッピング」(屋内位置情報把捉システム)と呼ばれる最新技術は、店内で操作されているスマホの位置を特定できる。店内のW-Fiや監視カメラなどと組み合わせれば、ウェブの専売特許だった「行動ターゲティング広告」を、実店舗でも実現できるかもしれない。たとえば、そのチェーン店のアプリをインストールしている客が店内のバーベキューセット売り場をぶらつくと、そのスマホに向けて絶妙のタイミングでクーポンを発行できるだろう(“Stores Sniff Out Smartphones to Follow Shoppers”参照)。

ネットショップの起業を資金面で支援するレボリューションの共同設立者タイジ・サベッジは、最近の状況をこう述べている。「何が小売業なのか分からなくなっています。理由はもちろん完全にテクノロジーのせいです。自分が店に行くのか、店が自分の方に来るのか。スマホを持っていれば店はポケットの中にあり、小売業ではいかに時間と場所に関係なく、客の欲求を満たせるかが勝負になっているのです」

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アントニオ レガラード [Antonio Regalado]米国版 医学生物学担当上級編集者
MIT Technology Reviewの生物医学担当上級編集者。テクノロジーが医学と生物学の研究をどう変化させるかについて追いかけ、記事を書いています。2011年7月にMIT Technology Reviewに参画する以前はブラジルのサンパウロを拠点に、科学やテクノロジー、ラテンアメリカ政治について、サイエンス誌や他の刊行物向けに記事を書いていました。2000年から2009年にかけては、ウォールストリートジャーナルで科学記者を務め、後半は海外特派員を務めていました。
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