KADOKAWA Technology Review
×
【本日最終日!!】年間サブスク20%オフのお得な【春割】実施中
kidmograph
The FBI’s Facial Recognition Program Is Sprawling and Inaccurate

FBIの顔認識システムに米国成人の半数が登録、15%は間違い

FBIの顔認識システムには米国民の半数が登録され、しかも誤認率が15%もあることがわかった。顔写真は犯罪とは無関係に、パスポートや運転免許証など、顔写真付きの身分証明書の申請時に収集されている。 by Jamie Condliffe2017.03.29

朗報:米国政府が所有しているあなたの顔写真は、たぶん他人のものだ。

2016年、MIT Technology Reviewは、膨大な量の顔写真をFBIが運営していることを伝えた。検索可能な写真は4億1200万枚近くもあり、その多くは身分証明書など、犯罪とは関係のない文書から収集された。FBIは、たとえばケーブルテレビの映像に映る犯罪者を正確に特定できるシステムを構築しようとしているが、FBIのソフトウェアの精度や実際の捜査での利用状況は判然としていなかった。

最近、システムの一端が明らかになった。ガーディアン紙の記事によれば、先週の米下院監視委員会公聴会で、FBIの顔認識システムの利用状況と性能について、興味深い詳細が新たに明らかになったのだ。

まず、アメリカ人はデータベースに登録されている可能性が高い。犯罪と無関係の情報源から収集した画像がデータベースの80%を占めるため、データベースに登録済みの数百万枚の写真は、米国の成人人口の約半分をカバーするのだ。つまり、米国民がパスポートや運転免許証等の正式な身分証明書用に申請用紙に写真を添付して送信すると、データセットを増やすのに使われている可能性がある。

ただし、もっとも始末に負えないのは、FBIの顔認識の精度だ。公聴会では、ソフトウェアが15%の確率で個人を誤認していることが明らかになったのだ。一方、企業向けに販売されている最新の顔認識テクノロジーの精度は非常に高く、中国では決済の承認に使われるほどであり、中国の検索エンジン大手バイドゥによれば、99.77%の確率で顧客の正確に認識できるという。

FBIは、データベースに登録されている画像も、照合しようとする画像も、バイドゥ等の企業が入手できる画像より、かなり品質が低いせいだ、と弁明した。それでも15%のエラー率は高く、誤って捜査対象になり、プライバシーの侵害につながりかねない。

getty

また、顔認識ソフトウェアは、白人よりも黒人をより誤認する可能性が高そうだ。残念ながら、こうした問題は予測可能だった。MIT Technology Reviewは以前、顔認識システムの訓練に使われるデータセットは人種的に均等ではなく(訓練データに白人が多ければ、白人の認識率は高くなるが、黒人の認識率は比較的に低いままになる)、本質的に偏っていることを記事にした。

しかし、この問題は、さらに別の問題を引き起こす。ガーディアン紙が記事で述べているとおり、米国で、黒人は白人よりも逮捕される確率が高く、顔認識ソフトウェアで顔を照合される可能性も高い。つまり、黒人の顔を判別するために、未熟なツールを使うのは問題があり、不公平ですらある。

上記のような記事を読むと、プライバシーへの不安がかき立てられ、犯罪者を正確に特定できるシステムを構築したいFBIの構想にも疑念が生じる。だが、少なくとも、問題があることはわかった。今度はどう解決するか、だ。

(関連記事:The Guardian, “As It Searches for Suspects, the FBI May Be Looking at You,” “2017年版ブレークスルー・テクノロジー10:,” “FBIの人種差別的な顔認識システム”)

人気の記事ランキング
  1. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
  2. Here’s why we need to start thinking of AI as “normal” AIは「普通」の技術、プリンストン大のつまらない提言の背景
タグ
クレジット Animation by Kidmograph; Photograph by Ian Waldie | Getty
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
▼Promotion
年間購読料 春割20%off
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る