W杯新球「トリオンダ」
正確さ重視で進化も
ロングシューターには逆風か
半世紀以上、ワールドカップのたびに新しいボールが登場してきた。今大会の「トリオンダ」も例外ではないが、その進化は意外な方向を向いている。20年にわたって公式球を研究してきた物理学者ジョン・エリック・ゴフによれば、トリオンダは「極端な飛距離を犠牲に、予測しやすい弾道を得た」ボールだという。 by Jenna Ahart2026.06.10
- この記事の3つのポイント
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- W杯新球「トリオンダ」は深溝テクスチャーにより抗力危機を低速域に抑え、弾道予測性を向上させた
- 2006年以降のパネル削減・表面粗化の流れが、ジャブラニの失敗を教訓に進化してきた経緯がある
- 高速域の抗力増大によりロングキックが数メートル短くなる可能性も指摘される
まもなく開幕するFIFAワールドカップには、多くの新しい要素がある。今大会は米国、カナダ、メキシコで開催される。参加チーム数は過去最多を誇り、3カ国が共同開催する初の大会でもある。そして、半世紀以上にわたる歴代大会と同様に、まったく新しいデザインのサッカーボールが使用される。
過去20年にわたってワールドカップ公式球の物理特性を研究してきたある研究チームが、「Trionda(トリオンダ)」と呼ばれる今大会の新球を最近研究した。アディダス(Adidas)が製造したトリオンダは、深い溝と、3つの開催国を象徴するメープルリーフ、グリーンイーグル、星のエンブレムが刻まれたテクスチャーを持つ赤・緑・青の4枚のパネルで構成されている。研究チームは風洞実験を通じて、このボールが従来モデルに比べていくつかの点で改善されている一方、ロングキックの飛距離は過去のボールより短くなる可能性があることを明らかにした。
「簡単に言えば、トリオンダは極端な飛距離をわずかに犠牲にする代わりに、クリーンな技術と予測しやすい弾道を実現するボールだと言えます」。こう語るのは、今回の研究チームのメンバーで、スポーツ物理学を研究するジョン・エリック・ゴフだ(パデュー大学の工学実践教授に就任予定)。「目に見える違いが最も現れやすいのは、ゴールキーパー、ロングパスを打つディフェンダー、そして長距離シューターだと思います」。
アディダスは1970年代からワールドカップごとに新しいボールをデザインしてきた。最初の数十年間のデザイン変更の多くは外観上のものだった。1986年のボールはメキシコ大会に合わせてアステカ神殿からインスピレーションを得たグラフィックが施され、1994年のボールは月面着陸25周年を記念した宇宙をテーマにしたデザインが採用された。フォームコアの改良や耐水性の向上など、構造上の変更もあった。しかし概して、32枚の五角形パネルを縫い合わせた同じ設計が使われ続けた。
状況が変わったのは、2006年のドイツ大会でアディダスが「+Teamgeist(プラスチームガイスト)」を導入したときだ。このボールはわずか14枚の曲面パネルで構成され、縫い合わせではなく熱接着で固定されていた。このデザインにより水分の浸入を防ぎ、試合中にボールが重くなるのを抑えられるとゴフは言う。ゴフがサッカーボールの研究を始めたのもちょうどこの頃だ。それ以降、アディダスが異なる表面テクスチャーやさらに少ないパネル数のボールを発表するたびに、ゴ …
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