Anti-aging drugs アンチエイジング薬
YOSHI SODEOKA 体内の自然な老化プロセスに狙いを定めた疾患治療を試みる薬は、将来有望なことが明らかになってきた。 アンチエイジング薬 ・なぜ重要か がん、心臓病、認知症など、さまざまな疾患が、老化を遅らせるこ …
by MIT Technology Review Editors 2020.06.29- 実現時期
- 5年以内
体内の自然な老化プロセスに狙いを定めた疾患治療を試みる薬は、将来有望なことが明らかになってきた。
アンチエイジング薬
- ・なぜ重要か
- がん、心臓病、認知症など、さまざまな疾患が、老化を遅らせることで治療できる可能性がある。
- ・キー・プレーヤー
- ユニティ・バイオテクノロジー(Unity Biotechnology)、アルカヘスト(Alkahest)、メイヨー・クリニック(Mayo Clinic)、オイシン・バイオテクノロジーズ(Oisin Biotechnologies)、シワ・セラピューティクス(Siwa Therapeutics)
- ・実現時期
- 5年以内
新しい種類のアンチエイジング薬の最初の波は、すでにヒト臨床試験に入っている。こういった薬で(まだ)長生きできるわけではないが、老化の根本的なプロセスを遅らせたり、逆行させたりすることで、特定の病気を治療しようとしている。
これらの薬は「セノリティクス(senolytics)」と呼ばれ、加齢とともに蓄積される特定の細胞を除去する。これらの細胞は「老化」細胞として知られ、細胞修復の正常なメカニズムを抑制したり、隣接する細胞に有害な環境を作り出したりして、低レベルの炎症を引き起こす。
2019年6月、サンフランシスコに拠点を置くユニティ・バイオテクノロジー(Unity Biotechnology)は、軽度から重度の変形性膝関節症患者を対象とした初期の臨床試験結果を報告した。より大規模な臨床試験の結果は、2020年後半に発表される予定だ。また、同社は加齢に伴う目や肺などの疾患治療を目的とした、同様の薬剤も開発している。
現在、セノリティクスは老化やさまざまな疾患の原因となる生物学的プロセスを対象とした、他の多くの有望な手法とともに臨床試験が実施されている。アルカヘスト(Alkahest)は、若者の血漿を軽度から中等度のアルツハイマー病に苦しむ患者に投与し、患者の認知力などの機能低下を抑制しようとしている。また、同社はパーキンソン病や認知症治療薬の臨床試験もしている。
2019年12月には米国のドレクセル大学医学部の研究チームが、免疫抑制剤ラパマイシン(rapamycin)を含むクリームで、人間の皮膚の老化を遅らせる作用について臨床試験をした。
こうした臨床試験は、心臓病や関節炎、がん、認知症といった老化に関連する多くの疾患の発症をハッキングによって遅らせることができるかどうか、研究者たちが確かめる取り組みの広がりを反映したものだ。
(アダム・ピオル)