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Tiny AI 小さなAI

今や強力な人工知能(AI)アルゴリズムを、手元のスマートフォンだけで実行できるようになった。 小さなAI ・なぜ重要か クラウドに接続することなく、最新のAI技術の恩恵を受けられるようになった。 ・キー・プレーヤー グー …

by MIT Technology Review Editors 2020.06.29
実現時期
実現済み

今や強力な人工知能(AI)アルゴリズムを、手元のスマートフォンだけで実行できるようになった。

小さなAI

・なぜ重要か
クラウドに接続することなく、最新のAI技術の恩恵を受けられるようになった。
・キー・プレーヤー
グーグル、IBM、アップル、アマゾン
・実現時期
実現済み

 

人工知能(AI)には1つ問題がある。より強力なアルゴリズムを開発するために、大量のデータと計算能力を使い、集中管理型のクラウド・サービスに依存しているのだ。この方式では途方もない量の二酸化炭素を排出する上に、AIアプリケーションの実行速度が制限され、プライバシーの問題も抱えている。

だが、「小さなAI(tiny AI)」により、こうした傾向は変わりつつある。大手テック企業や研究者たちは、既存の深層学習モデルの能力を保ちながら軽量化する、新しいアルゴリズムに取り組んでいる。一方、次世代の専用AIチップは、小型化したチップにより多くの計算能力を詰め込み、はるかに少ない消費電力でAIを訓練して実行しようとしている。

これらの技術の進歩は、ようやく消費者に届き始めたばかりだ。2019年5月、グーグルは、リモート・サーバーに情報を送信することなく、ユーザーのスマホでグーグル・アシスタントが実行できるようになったと発表した。アップルは、iOS13でシリ(Siri)の音声認識機能とクイックタイプ(QuickType)キーボードをアイフォーン単独で実行できるようにした。IBMとアマゾンも現在、小さなAIを開発・デプロイ(配置・展開)するための開発者向けプラットフォームを提供している。

これらはすべて、多くのメリットをもたらす。まず、深層学習モデルを実行する際にクラウドにアクセスする必要がなくなれば、音声アシスタント、オートコレクト(入力ミスの自動修正)、デジタルカメラなどの既存のサービスは、より使いやすく、より速く動くようになるだろう。次に、モバイル・ベースの医用画像解析や迅速な反応が求められる自動運転自動車のような新しい応用分野への展開も実現するだろう。最後に、端末に搭載されたAIは、プライバシーの面でも優れている。サービス向上や機能改善のために個人データを端末からクラウドへ送信する必要がなくなるためだ。

だが、AIの利点が広まるにつれ、すべての課題も広まるだろう。たとえば、監視システムやディープフェイク動画との闘いが難しくなる可能性があり、差別的なアルゴリズムも急増するかもしれない。研究者、エンジニア、政策立案者は、こうした潜在的な被害について技術的・政策的抑制を進展させるため、今すぐ協力しする必要がある。

(カーレン・ハオ)

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