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Satellite mega-constellations 人工衛星メガコンステレーション

  今や人工衛星を安価に製造して地球周回軌道に打ち上げ、数万基まとめて運用することができるようになっている。 人工衛星メガコンステレーション ・なぜ重要か 人工衛星メガコンステレーションを用いれば、世界中に高速 …

by MIT Technology Review Editors 2020.06.29
実現時期
実現済み

JULIA DUFOSSÉ

 

今や人工衛星を安価に製造して地球周回軌道に打ち上げ、数万基まとめて運用することができるようになっている。

人工衛星メガコンステレーション

・なぜ重要か
人工衛星メガコンステレーションを用いれば、世界中に高速インターネットを張り巡らせられる。だが同時に、地球周回軌道は宇宙ゴミの地雷だらけになるだろう。
・キー・プレーヤー
スペースX(SpaceX)、ワンウェブ(OneWeb)、アマゾン、テレサット(Telesat)
・実現時期
実現済み

インターネット端末にブロードバンド回線を届けられる人工衛星メガコンステレーション。インターネット端末が空を見渡せる状態にあれば、こうした人工衛星によって近くの端末にインターネット接続を提供できる。スペースXだけでも、スプートニク以来、人類が打ち上げた衛星の4.5倍以上の数の衛星を、この10年間に地球周回軌道上に打ち上げる計画がある。

メガコンステレーションが実現可能になったのは、より小型の衛星をより安価に打ち上げられるようになったからだ。スペースシャトルの時代には、人工衛星の打ち上げコストは1ポンド(453グラム)あたり約2万4800ドルだった。重さ4トンの小型通信衛星を打ち上げるには2億ドル近くかかった。

現在、スペースXのスターリンク(Starlink)衛星の重さは約227キログラムだ。再利用可能な構造と安価な製造方法により、何十基もの衛星をロケットに搭載してコストを大幅に下げることに成功。スペースXのロケット「ファルコン9(Falcon 9)」による1ポンドあたりの打ち上げコストは現在1240ドルだ。

ペースXは2019年に最初の120基のスターリンク衛星を打ち上げた。2020年1月から2週間ごとに60基の人工衛星を打ち上げていく予定だ。ワンウェブ(OneWeb)は、2020年後半に30基以上の人工衛星を打ち上げることを予定している(日本版注:ワンウェブは新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより資金調達ができなかったとして破産を申請した)。数千もの衛星が連携することで、地球上で最も貧しく、最も辺鄙な土地に住む人々にもインターネット接続を提供できるようになるかもしれない。

だがそれはうまく行った場合の話だ。メガコンステレーションが天文学の研究を混乱させる恐れがあるとして激怒している研究者もいる。さらに悪いことに、数百万個もの宇宙ゴミが衝突して大惨事に発展し、人工衛星によるサービスや将来の宇宙開発が不可能になる恐れがある。2019年9月のスターリンクと欧州宇宙機関(ESA)の気象衛星とのニアミス(異常接近)は、地球周回軌道上の物体をほとんど管理できていないことを知らしめる衝撃的な出来事だった。こうしたメガコンステレーションで今後10年間に起こることが、軌道空間の将来を決定づけるだろう。

(ニール・V・パテル)

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