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AI-discovered molecules 人工知能が発見する分子

科学者たちは有望な薬品に類似する化合物を見つけようと、人工知能(AI)を活用している。 人工知能が発見する分子 ・なぜ重要か 新薬を商品化するには、平均約25億ドルの費用がかかる。その理由の1つは、有望な分子の発見が難し …

by MIT Technology Review Editors 2020.06.29
実現時期
3~5年

科学者たちは有望な薬品に類似する化合物を見つけようと、人工知能(AI)を活用している。

人工知能が発見する分子

・なぜ重要か
新薬を商品化するには、平均約25億ドルの費用がかかる。その理由の1つは、有望な分子の発見が難しいからだ。
・キー・プレーヤー
インシリコ・メディシン(Insilico Medicine)、キボティクス(Kebotix)、アトムワイズ(Atomwise)、トロント大学、ベネボレントAI(BenevolentAI)、ベクター研究所
・実現時期
3~5年

 

生命を救う可能性を秘めた薬に変わるかもしれない分子の宇宙は、驚くほど広い。研究者の推定では、およそ10の60乗もあるという。これは太陽系に存在する総原子数よりも多く、化学者が価値のある分子を見つけられれば、事実上、無限の化学的な可能性を提供する。

今や機械学習ツールは、既存の分子やその特性に関する大規模データベースを探索し、その情報を活用して新しい可能性を生み出そうとしている。これにより、より速く、より低コストで新薬の候補が発見できるかもしれない。

2019年9月、香港に拠点を置くインシリコ・メディシン(Insilico Medicine)とトロント大学の研究者チームは、人工知能(AI)アルゴリズムが発見した複数の新薬候補を合成して、この戦略の取り組みが適切だと示す説得力のある第一歩を踏み出した。

囲碁で世界チャンピオンを打ち負かした生成モデルや、深層学習に類似した手法を使って、研究者たちは有望な特性がある約3万の新しい分子を特定した。その中から6つを選び、合成してテストしたところ、そのうちの1つは特に活性が高く、動物実験で有望だと証明された。

創薬に携わる化学者は、しばしば新しい分子を夢見る。創薬は、業界でも最高水準の研究者たちが、長年の経験と鋭い直感によって作り上げる芸術ともいえる。今や科学者たちは、新しいツールを手に入れ、創造力を膨らませている。

(デビッド・ロットマン)

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