KADOKAWA Technology Review
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Super-efficient solar cells: 10 Breakthrough Technologies 2024 超高効率の太陽電池

従来のシリコンと最先端のペロブスカイトを組み合わせた太陽電池は、太陽光の変換効率を大幅に向上させる可能性がある。2024年には最初のパネルが配置される予定だ。

by Emma Foehringer Merchant 2024.01.19
Simon Landrein
キープレイヤー
ビヨンド・シリコン(Beyond Silicon)、ケーラックス(Caelux)、ファースト・ソーラー(First Solar)、ハンファQセルズ(Hanwha Q Cells)、オックスフォードPV(Oxford PV)、スウィフト・ソーラー(Swift Solar)、タンデムPV(Tandem PV)
実現時期
3~5年後

2023年11月、話題の太陽光発電技術が変換効率の世界記録をまたもや更新し、それまでの世界記録はわずか5カ月ほどで破られることになった。そしておそらくこの新記録も、塗り替えられるまでそう長くはかからないだろう。この驚異的な効率の加速をもたらしているのは、「ペロブスカイト・タンデム太陽電池」と呼ばれる特殊な次世代太陽電池技術だ。この太陽電池は、従来のシリコンにユニークな結晶構造を持つ材料であるペロブスカイトを重ねたものである。

科学者たちがペロブスカイト太陽電池技術に取り組んできた10年間、ペロブスカイト太陽電池は変換効率の記録を更新し続けてきた。変換効率とは、電池に当たった太陽光のうちどれだけが電力に変換されたかを示す値である。ペロブスカイトは、現在の太陽電池市場の95%を占めるシリコン電池が吸収する光とは異なる波長の光を吸収する。シリコンとペロブスカイトをタンデム型太陽電池として組み合わせると、太陽光スペクトルにおけるより多くの波長域を利用できるようなり、電池あたりの発電量が増加する。

シリコンベースの太陽電池の技術的な変換効率は最高でも30%以下である。一方、ペロブスカイトのみの太陽電池の変換効率は、実験でも約26%に達している。そして、ペロブスカイトタンデム太陽電池は、実験室ですでに33%を超える変換効率を達成しているのだ。このことはこの技術の魅力的な展望を示している。ペロブスカイトタンデム電池を大規模に配置できれば、従来の太陽電池より低コストでより多くの電力を生成できる可能性がある。

しかし、実際の配置の時点で、ペロブスカイトはつまずいてしまった。シリコン太陽電池は何十年も使うことができる。しかしペロブスカイトタンデム太陽電池のパネルは、屋外でのテストもほとんどされていないのである。

ペロブスカイトの電気化学的構造は、ペロブスカイトが水分の吸収や熱によって劣化しやすいことを示している。研究者たちはパネル周辺により強力な障壁を作り、より安定したペロブスカイト化合物に移行することに取り組んでいる。

2023年5月、英国に本拠を置くオックスフォードPV は、商用サイズのペロブスカイトタンデム太陽電池の変換効率が 28.6% に達したと発表した。これは、同社の実験室でシリコンとペロブスカイトをテストするために使用された太陽電池よりも大幅に大きな値である。オックスフォードPVは2024年に最初のパネルを配置し、量産を進める予定だ。他の企業も、2024年の後半に製品を発表する可能性がある。

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