KADOKAWA Technology Review
×
夏割実施中!購読料20%オフ。
Sick Dogs Could Be Key to Unlocking Mysteries of Immunotherapy

なぜヒトのがんの研究に、マウスよりイヌが適しているのか?

ヒトとイヌの発がん遺伝子変異は、共通の部分がある。そこで米国政府は、イヌのガン研究に資金を提供している。 by Emily Mullin2016.11.07

患者自身の免疫系を利用するがん治療の新薬は、一部の患者には効果を発揮する。しかし研究者は、なぜ免疫治療の効果がある患者とない患者がいるのか、完全には明らかにできていない。

免疫治療薬の効果を研究するには、ヒト免疫システムに似た動物モデルが必要だ、と米国国立衛生研究所(NIH)の研究者はいう。今週NIHの研究部門である米国国立がん研究所(NCI)の諮問委員会は、2017年開始の新プログラムで、がんを発現しているイヌで実験的な免疫治療を研究すると発表した。国立がん研究所は、2003年からイヌのがんを治療する別の治験を実施中だが、今回のプログラムは研究所が後押しする最初の大規模なイヌの免疫治療研究になる。

NIH is recruiting dogs to test a new type of promising cancer drugs called immunotherapy.
NIHはイヌを集めて、実用化が期待される「免疫治療」によるがん治療薬を試験する

米国国立がん研究所の橋渡し研究プログラムのトビー・ヘクト副ディレクターは、5年で計1500万ドルの研究補助金を5つのがんセンターの研究資金(治験は獣医大学と提携して実施)として利用できるという。精密な動物モデルによる研究で、免疫治療のヒトへの効果を明らかにできる、と研究者は期待している。

先行する製薬会社や他の研究グループには、免疫治療でイヌのがん治療に成功したと報告しる場合がある。

「イヌはヒトに非常によく似たがんを発症します」とヘクト副ディレクターはいう。ヒトとイヌの発がん遺伝子変異は一部共通しており、寿命が伸びたため、イヌもヒトも、がん発症率が増加している。マウスの動物モデルを多くの疾患研究が利用しているが、マウスの免疫システムはヒトとの違いが大きく、がん腫瘍はヒトほど遺伝子的に複雑でないため。マウスではヒトの免疫反応を評価できない。

免疫療法薬の基本設計は、患者の免疫システムを抑制するがん細胞の働き(がん細胞が生体信号によって免疫システムをだまし、検出されにくくしている)を無効化することだ。すでにいくつかの免疫療法が食品医薬品局(FDA)の承認を受けており、現在数百の臨床試験がヒトの免疫療法を試験中だ。今週初め、フレッド・ハッチンソンがん研究センターのゲーリー・ギリランド所長は、研究所が10年間で多くの種類のがん治療に効果のある免疫療法の実現に取り組んできたとワシントンD.Cのイベントで述べた。

昨年、米国国立がん研究所は、6種類のがん(B細胞性リンパ腫、黒色腫、膀胱がん、骨肉腫、神経膠腫および乳がん)について、獣医大学と共同研究する8つのがんセンターに資金を提供し、25以上のイヌ腫瘍の遺伝子配列を明らかにする。この資金提供は大きな関心を集めたため、計17の研究申請が受理された。そこでお、米国国立がん研究所は研究を継続するプログラムを開始することにした、とヘクト副ディレクターはいう。

2017年上期には研究計画の要請を発表し、2017年9月までに選出した研究計画に資金を与える予定だ。

ヘクト副ディレクターは、イヌの臨床試験が免疫療法を開発している製薬企業の関心を集めることを期待している。研究が始まると、得られた全てのデータはオンラインデータベースに公開され研究者の資料として利用できる。

人気の記事ランキング
  1. Promotion AI White Paper 2026 松尾・岩澤研協力『AI白書2026』発売、サブスク版も開始
  2. The next big thing in hydrogen could be underground 足元に眠る天然水素、21世紀の「ゴールドラッシュ」が始まった?
  3. What’s behind this summer’s heat, and why 2027 could be worse 記録ずくめの猛暑の夏、しかし本番は来年かもしれない
  4. Scientists just created female clones of male mice オスのマウスからメス作製、日本チームが遺伝子編集で性逆転に成功
タグ
クレジット Photograph by Leon Neal | Getty
エミリー マリン [Emily Mullin]米国版
ピッツバーグを拠点にバイオテクノロジー関連を取材するフリーランス・ジャーナリスト。2018年までMITテクノロジーレビューの医学生物学担当編集者を務めた。
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る