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MITTRが選ぶ、
「最低なテクノロジー」
8選【2022年版】
Stephanie Arnett/MITTR; Getty
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The worst technology of 2022

MITTRが選ぶ、
「最低なテクノロジー」
8選【2022年版】

MITテクノロジーレビュー は毎年、その年の失敗したイノベーションを選んで年末に発表している。2022年にリストアップしたのは、詐欺的な暗号通貨取引所、ウイルス入りのブタの心臓の移植、「ゼロコロナ」の崩壊、イーロン・マスクによるコンテンツ・モデレーションなどだ。 by Antonio Regalado2022.12.28

「最低なテクノロジー」のリストを発表する時期が今年もやってきた。このリストは、ブレークスルーの真逆を行くものであり、テクノロジーの失敗を招くような事故、誤用、ミスリード、悪いアイデアといったものだと考えてほしい。今年は、致死的な医薬品から、インターネットで嘲笑の的となった大規模な言語モデルまで、さまざまな破滅的な偉業がランクインした。

本誌の大失敗リストから浮かび上がってくるテーマが1つある。すなわち、テクノロジーの利用を統制するためのルール、プロセス、制度、理念といったポリシーが、いかに私たちを失望させうるか、ということだ。中国では、「ゼロコロナ」として知られるパンデミック制御のための広く普及した制度が、突然かつ予想外の終わりを迎えた。ツイッターでは、イーロン・マスクによって同サイトの運営ポリシーが意図的に破壊され、言論の自由、個人的な復讐、米国政治の右翼へのアピールを気まぐれかつ好き勝手に混ぜ合わせたようなものへと置き換えられてしまった。米国では、薬物の過剰摂取による死者数が過去最高になった。死の多くは60年以上の歴史を持つ化合物、フェンタニルによるものだが、そこには明らかに政策の失敗があった。

これらのテクノロジーがもたらした影響は、影響を受けた人々の人数で測ることができるだろう。中国で現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)に初めて曝露した人々の数は10億人以上となった。3億3500万人のツイッター・ユーザーがマスクの悪ふざけを眺めている。そして、フェンタニルは米国で7万人に死をもたらした。いずれからも、テクノロジーが失敗した原因について、教訓を学ぶことができる。ぜひ読んでみてほしい。

1. FTXの破綻

でっち上げられた通貨の終焉

次のような状況を想像してほしい。あなたは新しい種類の通貨を作り出すことができる。そして、他の人はそれをいくらか手にするため、本物の通貨をあなたに支払ってくれるのだ。彼らが購入してくれるものを「暗号通貨トークン」と呼ぶことにしよう。しかし、トークンにはあまりに多くの種類があり、そのせいで買ったり売ったりすることが難しい。そこで起業家は、それらを取引するための民間の取引所を作った。「暗号通貨取引所」と呼ばれるものだ。トークンには固有の価値が無く、他の取引所は倒産してしまったので、あなたは自分の取引所を超安全かつ、しっかりと規制されたものにしようとする。

それが、サム・バンクマン・フリードが創業した暗号通貨取引所、FTXトレーディング(FTX Trading)の背景にあるコンセプトである。バンクマン・フリードは20代の起業家で、先端技術を売りにしていた人物だ。例えば、常時稼働し続ける「自動リスクエンジン」がある。30秒ごとに、預金者が暗号通貨のギャンブルを埋め合わせるだけの本物の通貨を持っているかどうか、確認するというものだ。テクノロジーが「完全な透明性」を保証するだろう、とされたわけだ。

しかし、そんな見せかけの裏で、FTXはどうやら昔からよくある不正流用が起きていたようだ。米国の捜査当局によると、バンクマン・フリードは顧客の資金を受け取り、派手な邸宅を購入したり、政治献金をしたり、非流動的な暗号トークンを大量購入するの使っていたという。11月、それらすべてが崩壊することとなった。破綻したFTXの新CEOに就任したジョン・レイによると、FTXのテクノロジーは「先端でもなんでもなかった」という。 主張されている詐欺についても同様だ。「顧客から資金を受け取り、自らの目的のために使用していただけです」。

バンクマン・フリード創業者はマサチューセッツ工科大学(MIT)の卒業生であり、両親はともスタンフォード大学の法学教授である。バンクマン・フリード創業者は12月にバハマで逮捕され、詐欺、共謀、資金洗浄などの複数の容疑で起訴されている。

暗号通貨プロモーターについてより深く知るには、「もし『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の題材が暗号通貨だったら」というホマ・テックによる風刺動画がおすすめだ。

2. 医薬品から殺人へ

フェンタニルはどのように人殺しの道具へと成り果てたのか

1953年、ベルギーの医者であり化学者であるポール・ヤンセンは、最も強力な鎮痛剤の作成に取り掛かった。モルヒネを改良できると考え、100倍の効力があるが、有効時間の短い分子を設計したのである。発見された合成オピオイドである「フェンタニル」は、その後、手術中に最もよく使われる鎮痛剤となった。

現在、フェンタニルは暗澹たる記録を打ち立てている。米国において、年間7万人の事故死に関係しているのだ。薬物の過剰摂取による死者数のうち、約3分の2がフェンタニル絡みなのである。米国の50歳未満の成人の死因の第1位がフェンタニルであり、自動車事故、銃、そして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死者数の合計を上回る。

フェンタニルは呼吸を止めることで人を殺してしまう。フェンタニルが致死的となるのは、その効能のためである。ハチドリの羽程度の重さである2ミリグラムが、致死量となり得るのだ。

なぜ、1日あたり200人近い死者が出てしまうのだろうか? ジョンソン&ジョンソン傘下のヤンセン・ファーマ(Janssen Pharmaceuticals)がその一因となっている。ヤンセン・ファーマは処方オピオイド薬の依存性について誤った主張をし、人々が錠剤やパッチに依存していく中で荒稼ぎをしていた。今年になって同社は過ちを認めることなく、50億ドルの和解金を支払うことに合意した。

現在、フェンタニルはメキシコの麻薬カルテルが運営する秘密の研究所から薬物使用者の元へ届けられている。ヘロインに混ぜるために使用されたり、偽造された鎮痛剤へと成型されているのだ。状況が今以上、さらに悪くなることもあり得る。米国の複数の州で、誤ってフェンタニル入りの錠剤を飲んだ幼児の死亡が急増しているとの報告もある。

フェンタニルがもたらす危機についての最近の報告については、「カルテルRX」という、ワシントン・ポスト紙の新連載がおすすめだ。

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