KADOKAWA Technology Review
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気候担当記者が電池の「リサイクル」を10大技術に選んだ理由
Redwood Materials
Why you might recycle a battery—and how to do it

気候担当記者が電池の「リサイクル」を10大技術に選んだ理由

再生可能エネルギーへのソフトを進めるには、大量の電池(バッテリー)が必要だ。だが、電池の生産も環境に負荷をかける行為である。そこで「リサイクル」の重要性が高まっている。 by Casey Crownhart2023.03.08

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

私が気候変動担当の記者だと知ると、いろいろや質問や懸念をぶつけてくる人がいる。風力タービンに鳥が飛び込んでくる話や、大量の電気自動車(EV)が同時に充電すると停電になるという話をする人もいる。

これらの中には大げさなものもある。だが、そのような質問の中から、気候テクノロジーの本当の課題が見えてくることがある。

今回は、エネルギーの転換に不可欠な物理的事項について、よく耳にすることについて詳しく説明しようと思う。太陽光発電パネルや風力発電タービン、電池は、使い終わったらどうなるのか? また、新しいものを作るために必要な材料はどこから調達するのか? といったことだ。

これらの材料の出所と行く末については、しっかり把握する必要があるだろう。そこで私はこの数カ月、2023年版の「ブレークスルー・テクノロジー10」の1つである、電池のリサイクルについていろいろと考えてきたぜひこの特集記事も読んでもらいたい。だがその前に、なぜこのテーマがずっと私の頭から離れなかったのかを簡単に説明しよう。

以前の記事で書いたように、電池は、送電網に配置する蓄電装置と、電気自動車において重要な役割を担っている。つまり、電気自動車が増え、再生可能エネルギーへの支持が高まれば、より多くの電池が必要になるということだ。

そうして需要が増えることで、2つの付随する問題が露呈することになる。1つは、電池の材料となる金属を十分に確保しなければならないということだ。鉱物資源の採掘は人類にとっても環境にとっても破壊をもたらす恐れがあり、間違いなく高コストだ。もう1つは、電池の寿命には限りがあるため、最終的にゴミとして処理しなければならないということだ。

私が何を言いたいか、もう分かっただろう。電池をリサイクルできれば、循環の輪を作れるかもしれないのだ。古いバッテリーを新しいものに作り変えることができれば、材料調達の問題とゴミ問題の両方を解決できる。

ただ問題は、実際にそれを実現できるかどうかだ。

少なくとも理論上の話だが、ありがたいことに電池は、リサイクルに適している。電池に含まれる金属には価値があり、経年劣化も少ないため、何度でも再利用できる。ガソリン車が搭載している鉛蓄電池は現在、リサイクル率の高い製品の1つだ(その他の家庭用電池もリサイクルできる。捨てる前にぜひ確認してほしい)。

電気自動車に使われているリチウムイオン電池は、さらに後に生まれた発明だ。1990年代に小型電子機器に使用され、その後、電気自動車にも搭載されるようになった。リチウムイオン電池の普及に伴い、リサイクルへの取り組みも進んでいる。

リサイクル業者の作業工程は、外部から見るとどれも同じように見える。電池を分解して粉砕し、出てきた粉を溶かしてさまざまな化学的処理を施す。しかしこの細かな作業が、価値ある材料をどれだけ回収できるか、つまり、どれだけ儲かるかを決める重要なポイントになるのだ。

この作業工程は進化し、電池のリサイクルがビジネスとして成立する可能性は高まっている。太陽光発電パネルのリサイクルでも同じことが起きており、業者はリサイクル工程で銀などの貴重な素材を機器から回収する。

個人的には、廃棄物の量や、破壊的な採掘の必要性を下げるためにリサイクルや再利用の方法を探ることは、それ自体が価値ある目標だと思う。収益性を考えれば、電池のリサイクルが実現するのはより確実だ。

電池のリサイクルはまだ黎明期にある。中国は大規模な産業に資金を提供し、後押ししてきた。そして今、欧州と北米が追い付きつつあり、企業は数億ドルの投資資金を集め、数億ドル規模の施設を建設している。

今回私は、電池のリサイクルについて深堀りすべく、電池リサイクルを手掛ける企業の1つである、レッドウッド・マテリアルズ(Redwood Materials)から話を聞いた。同社が目指すものや直面している課題について詳しく知りたいという読者は、こちらの記事ををお読みいただきたい。さらに、レッドウッド・マテリアルズの創業者であり、かつてテスラで最高技術責任者(CTO)を務めたJ.B.ストラウベルに話を聞いている。電池リサイクルの産業が将来どのような方向に進むのか、彼の考えをまとめた記事も用意している

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ケーシー・クラウンハート [Casey Crownhart]米国版 気候変動担当記者
MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
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