未来の職種:猛暑から命を守る「最高熱波対策責任者」の仕事
世界初の「最高熱波対策責任者(CHO:Chief Heat Officer)」に任命された米国フロリダ州の公務員は、酷暑から自力で身を守れない脆弱な人たちを支援している。 by Allison Arieff2023.08.31
マイアミでは、猛暑は命に関わる問題だ。気温の上昇はいまやハリケーンや洪水よりも多くの人々の命を奪い、海面上昇よりも大きな被害を地域経済に及ぼしている。だからこそ、フロリダ州マイアミ・デイド郡は2021年、世界初となる「最高熱波対策責任者(CHO:Chief Heat Officer)」としてジェーン・ギルバートを採用したのだ。
暑さはマイアミにおけるサイレントキラーだとギルバートCHOは話す。「天候関連の死因の第1位は、異常な暑さによるものです。この問題があまり認識されていないことを、改善する必要があります」。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、米国では熱中症による救急外来が年間平均6万7512件あり、702人が亡くなっている。
総合的なアプローチ:ギルバートCHOはマイアミ・デイド郡のレジリエンス(回復)局に勤務している。同局には海面上昇、二酸化炭素削減、廃棄物低減に取り組む担当者がいる。「各担当者が一丸となって統合的な視点で取り組むようにしています」。彼女は、自分の役割に懐疑的な人がいるだろうと認めている。「もし、家や職場にエアコンを入れる余裕がある人なら、自力で暑さ対策ができます。私の力は必要ないでしょう」。
情報提供、準備、保護:ギルバートCHOは、猛暑から自分自身と家族を守ることが最も困難な人々に焦点を当ている。主に貧しい地域の住民や、黒人、ヒスパニック系の人々で、猛暑の影響をまともに受ける傾向にある。家庭や施設、地域を手頃な価格で涼しく保つためのに協力する彼女の活動は、屋外労働者を保護するプログラムの作成から、ヒートアイランド現象の影響を緩和するのに役立つ植樹まで、あらゆるものが含まれる。
キャリアパス:ギルバートCHOはニューヨーク市のバーナード大学で環境科学を専攻。ハーバード大学公共政策大学院では都市コミュニティ開発に重点を置いて取り組み、行政学の修士号を取得した。当時CHOという仕事は存在しなかったが、もしあったら「本当に興味を持っていたでしょう」と話す。問題のいくつかは変化したかもしれないとギルバートCHOは感じている。「ですが、私が研究していた80年代半ばには、気候変動はすでに科学として認められていたのです」。
- 人気の記事ランキング
-
- Two Nobel Prize winners want to cancel their own CRISPR patents in Europe クリスパー特許紛争で新展開 ノーベル賞受賞者が 欧州特許の一部取り下げへ
- The coolest thing about smart glasses is not the AR. It’s the AI. ようやく物になったスマートグラス、真価はARではなくAIにある
- Sorry, AI won’t “fix” climate change サム・アルトマンさん、AIで気候問題は「解決」できません
- Space travel is dangerous. Could genetic testing and gene editing make it safer? 遺伝子編集が出発の条件に? 知られざる宇宙旅行のリスク
- allison.arieff [Allison Arieff]米国版
- 現在編集中です。