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TikTok時代の昼ドラ、
中国発の短編スマホ動画は
週200万ドル稼ぐ
FlexTV
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China’s next cultural export could be TikTok-style short soap operas

TikTok時代の昼ドラ、
中国発の短編スマホ動画は
週200万ドル稼ぐ

スマホに最適化された2分間の短編ドラマを配信する「フレックスTV(FlexTV)」が中国で大人気だ。低予算・短期間で制作され、視聴者の感情を揺さぶる「TikTok時代の昼ドラ」は世界を席巻するか。 by Zeyi Yang2024.03.08

米国ミズーリ州在住の声優タイ・コーカー(28歳)は昨年まで、主にビデオゲームやアニメに声を当てる仕事をしていた。しかし昨年12月、コーカーはオーディションに招待され、初めて実写コンテンツに挑戦することになった。『Adored by the CEO(CEOに愛されて)』という米国の視聴者向けにリメイクされる中国ドラマのシリーズだ。コーカーは採用され、主要キャラクターの1人の吹き替えを担当することになった。

ただし、『Adored by the CEO』はテレビやネットフリックスでは見ることができない。その代わり、こうした短編ドラマがたくさん見られる中国のアプリ「フレックスTV(FlexTV)」で公開されている。フレックスTVの番組はスマートフォンの画面に合わせて撮影されており、各話約2分のエピソードがおよそ90回に分割され、極端に集中力が短い現代の潮流に合わせて最適化されている。コーカーはこうしたコンテンツを「ティックトック(TikTok)時代の昼ドラ(soap operas)」と呼んでいる。

ここ数年、こうした短編ドラマは中国で大きな人気を博している。ドラマは100話近くに及ぶことも多いが、1話の長さが1分か2分であるため、シリーズ全体の長さは従来の映画と変わらない。中国国内で最も成功を収める作品は、数日で数千万ドルを稼ぎ出す。中国の短編ドラマ全体の市場規模は、2023年に50億ドル以上になった。

中国での成功を受けて、中国国外でもこのビジネスモデルを展開しようとする企業がいくつか出てきた。フレックスTVは、中国ですでに公開された番組の翻訳や吹き替えを手掛けているだけでなく、米国文化をより反映した視聴体験を提供するために、米国内での番組撮影にも着手している。

これらのアプリを「クイビ(Quibi)」のようなアプリと比べるのはたやすい。クイビは、2020年に1年ももたずに失敗に終わったことで悪名高い、当時注目を集めた動画サービスだ。

しかし、最新の中国製アプリはそれらとは違う。最新の中国製アプリは、高い制作費をかけて洗練された作品をつくることを目指しているわけではない。シンプルな脚本を選び、シリーズ全体を2週間で撮影し、ネットで大々的にマーケティングを実施し、うまくいかなければ次のプロジェクトに移る。

「短編ドラマと映画の最大の違いは、視聴者に届けるものが異なるということです。短編ドラマの制作では、視聴者の心理的なニーズを分析し、視聴者が何を見たいのか理解する必要があります。そして、感情的な満足感を提供するよう心がけています」。フレックスTVのジャウジョウ・ガオ最高執行責任者(COO)は、MITテクノロジーレビューの取材にこう話す。

番組が適切な視聴者層にリーチできれば、米国でも大きな収益を上げられる。ガオCOOによれば、フレックスTVで収益トップの番組は、制作費が15万ドル以下であるにもかかわらず、週に200万ドルを売り上げることがあるという。

「リールショート(ReelShort)」や「ドラマボックス(DramaBox)」のような他のいくつかのアプリも競争に加わり、中国の短編ドラマを世界中の視聴者に届けようと試みている。こうしたアプリは、アプリストアのダウンロード・ランキングで度々上位に名を連ね、大ヒット作を生み出している。短編ドラマは、中国では成功することが実証された。異なる市場でビジネスモデルを展開するのは必ずしも容易ではないが、仮に成功を収めれば短編ドラマは中国の次の大きな文化輸出になるかもしれない。

ルーツは中国のWeb小説

『Adored by the CEO』のような短編ドラマは、別の中国独自の大衆文化作品、Web小説を原作として脚色したものが多い。

Web小説は、ここ20年近く中国のインターネット上で人気を博してきた独自の創作形態だ。Web小説では長編小説の1つの章が毎日書かれ、投稿される。各々の章は10分もかからずに読めるが、新しいエピソードが数カ月、場合によっては数年にわたって追加され続ける。読者は熱心なファンになり、毎日新しい章が公開されるのを心待ちにして、数セントを支払って新しい章にアクセスする。

中国の才能ある作家の中には、Web小説を書いて大ブレイクを果たした人もいるが、こうした作品の大半は、毎日一口サイズのドーパミンを与えてくれる、文学のポップコーンである。2010年代の一時期には、海外でも読者を獲得した作品もあり、中国企業がWeb小説を英語に翻訳するWebサイトを立ち上げた事例もあった。

しかし、ティックトックの時代において、長文テキストの投稿はネット上で人気を失い、Web小説業界は軸足を移そうとしている。企業経営者たちは、こうした小説を脚色して超短編ドラマに仕立てられると気づいたのだ。Web小説も短編ドラマもターゲットとする市場は同じだ。それは、通勤時間や休憩時間、ランチタイムに短い時間で暇つぶしができるものを求める人たちだ。

現在、中国の大手短編ドラマアプリの多くは、中国のWeb小説企業と密接に連携を取っている。リールショットは、中文在線集団(COL Group)が一部を所有している。 …

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