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HIV、結核、マラリア——WHO報告書が示す「目標未達」の現実
Stephanie Arnett/MIT Technology Review | Getty Images
The world is on track to miss its health targets

HIV、結核、マラリア——WHO報告書が示す「目標未達」の現実

世界保健機関(WHO)が5月13日に発行した世界保健統計2026年版は、厳しい現実を突きつけた。HIV新規感染者は年間130万人、結核感染者は1070万人、マラリア感染率は8.5%増加。2030年までの目標達成に向けて「いかなるWHO地域も軌道に乗っていない」と報告書は結論づけている。 by Jessica Hamzelou2026.05.22

世界保健機関(WHO)は毎年、世界保健統計報告書を発行している。この報告書は世界の健康動向を数字で示すとともに、2015年に設定された野心的な目標の達成に向けて順調に進んでいるかどうかを評価するものだ。いわば健康通知表のようなものである。

2026年版の報告書が5月13日に発行された。その結果は芳しいものではない。一部では改善が見られるものの、その進捗は不均一であり、あまりにも遅すぎる。

これらの目標そのものは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の一部だ。SDGsは世界中の生活改善を目的とした、広範かつ野心的な計画である。17の目標は、貧困や気候変動への対処、教育・ジェンダー平等・健康・福祉の向上など、多岐にわたる生活の質に関する課題に取り組むために設定された。これらの目標は2030年までに達成される予定だった。

おそらく、目標は少々野心的すぎたのかもしれない。今年の世界保健通知表で筆者が注目した数字と統計を以下に紹介する。

2024年のHIV新規感染者数:130万人

SDGsの前には、ミレニアム開発目標(MDGs)があった。MDGsの目標の一つはHIVの感染拡大を阻止し逆転させることであり、その目標は2015年までに達成された。当時、私たちは「2030年までにエイズの流行を終息させる」という目標に向けて順調に進んでいると見なされていた。

それだけに、2024年のHIV推定新規感染者数が130万人だったという事実は暗澹たる気持ちにさせる。この数字は2010年の数値より40%低い。しかしそれでも、130万人が新たにHIVに感染したことに変わりはない。SDGsの目標は2030年までにHIV感染率を90%削減することだが、達成は難しそうだ。

結核の新規感染者数:1070万人

結核の状況はさらに深刻だ。結核はWHOの世界死因ランキングで10位に位置する疾患である。目標は2015年から2030年の間に感染者数を80%削減することだったが、これまでのところわずか12%しか減少していない。地域別に見ると、南北アメリカでは感染者数が13%増加している。

マラリア感染者数:8.5%増

次にマラリアについて見てみよう。蚊が媒介するこの感染症は、重症化すると致命的になり得る。欧州地域は2015年以降マラリアのない状態を維持しているが、グローバルサウス、特にアフリカの多くの国々では依然として深刻な問題となっている。目標は2015年から2030年の間に感染率を90%低下させることだったが、2024年の世界全体のマラリア推定感染者数は2億8200万人に上り、感染率は8.5%増加した。

抗マラリア薬への耐性がここでの大きな課題となっている。WHOの別の報告書によると、薬剤耐性を持つマラリア原虫がアフリカの8カ国で確認または疑われているという。また、一般的に使用される殺虫剤に耐性を持つ蚊がアフリカの9カ国に存在する。さらに、蚊の生息域を変化させる可能性がある気候変動が、状況を悪化させている可能性もある。

消耗症の子どもの数:4280万人

子どもの健康に関する目標も達成できていない。栄養不良を例に挙げると、2024年時点で子どもの消耗症(ウェイスティング)の世界的な有病率は6.6%に上る。これは、食料不足によって文字通り衰弱しつつある子どもが4280万人もいることを意味する驚くべき数字だ。一方、スペクトルの反対側では、5.5%の子どもが過体重と見なされている。どちらの数値も2030年までに5%以下にする目標だったが、今となっては達成は難しそうだ。

南北アメリカでワクチン接種率が低下

小児ワクチン接種率の改善に向けた進捗は停滞している。世界全体では、推定76%の子どもが麻疹ワクチンの2回目の接種を受けているが、この数字はアウトブレイクを防ぐために必要とされる約95%を大きく下回っている。南北アメリカでは現在、4種類の「中核」ワクチンのうち3種類について、2015年時点よりもワクチン接種率が低くなっている。

ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院の疫学者グーダルズ・ダナエイによると、これは一部には投資不足が原因だという。「しかし今は、ワクチンに関する誤情報キャンペーンが広まっており、状況をさらに悪化させています」と彼は付け加える。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックも状況の改善には役立たなかった。医療サービスへの影響により、何百万人もの子どもが定期予防接種を受けられなくなった

パンデミック関連死者数:2210万人

もちろん、パンデミックはより直接的な形でも健康目標の達成に影響を与えた。COVID-19で700万人が死亡した。WHO報告書は、この死者1人につき、医療の混乱などを原因とするパンデミック関連の「超過」死亡がさらに2人発生したと推計している。これにより、パンデミック関連死者数の合計は2210万人に上る。

「母体に起因する」死亡が2分に1人

妊産婦死亡率は2020年から2023年の間に約40%低下した。しかし現在の死亡率は、毎日712人の妊産婦が死亡していることに相当する。これは2分に1人の割合だ。WHO報告書は、2030年の目標を達成するためには、死亡率を年間約15%削減する必要があると指摘している。これは非常に難しいと思われる。特に、米国による世界援助プログラムへの資金が最近大幅に削減されたことを考えると、数千人規模の追加的な妊産婦死亡が生じると予想されるだけになおさらだ。

がん、糖尿病、心血管疾患などの非感染性疾患による死亡リスクの低減においても、進捗は鈍化している。「全体として、世界全体でも、いかなるWHO地域においても、現時点では2030年のSDG目標達成に向けた軌道に乗っていない」と報告書は述べている。

医療費の負担に苦しむ人口:21億人

医療費の負担軽減に向けた計画にもかかわらず、人口の相当数が医療費によって貧困に追い込まれている。2022年には21億人が医療費による経済的困難に直面しており、そのうち16億人は貧困状態にあるか、貧困に追い込まれていた。

全体的に見ると、世界の健康状態にはいくつかの重要な改善が見られた。しかし、その成果は十分とは言えない。「良いニュースは、進歩があるということです」とダナエイは言う。「しかし、いつものように、コップの水は半分しか入っていません」。

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生物医学と生物工学を担当する上級記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、ニューサイエンティスト(New Scientist)誌で健康・医療科学担当記者を務めた。
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