KADOKAWA Technology Review
×
Tesla’s New AI Guru Could Help Its Cars Teach Themselves

テスラが強化学習の専門家を採用、自律自動車の開発を加速

テスラが強化学習の専門家をAI研究の責任者として採用した。テスラは新たなアプローチで自動運転車の開発を加速させるようだ。 by Will Knight2017.06.26

テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)が新たなAI研究担当責任者を採用したことは、自動運転のあり方を見直す同社の方針を示唆しているのかもしれない。

先週、マスクCEOによって引き抜かれたアンドレ・カルパシーは、マシン・ビジョン、深層学習、そして強化学習の専門家で、以前は非営利団体「オープンAI」に在籍していた。オープンAIは「安全で汎用性のある人工知能を完成させる」ことを目的とした研究団体で、マスクCEOも資金援助している。

AI業界から注目されているカルパシーは、以前、AI研究の第一人者フェイフェイ・リー准教授とともにスタンフォード大学で研究していた。現在グーグルのクラウド部門主任科学者を務めるリー准教授は、マシン・ビジョンが飛躍的に進化するきっかけとなった、画像データ・セットを開発したことで知られるテクノロジー業界の有名人だ。

カルパシーが持つコンピューター・ビジョンの専門知識が、テスラにとって重要な資産になることは誰もが認めている。しかし、テスラのオートパイロット事業にとってさらに重要なのは、強化学習システムの構築に関するカルパシーの実績だろう。

動物は、良い結果を導いた行動を反復して学習するが、強化学習はこういった動物の学習行動に着想を得て開発された。強化学習は、以前報じたようにプログラミングが難しい動作を行なうコンピューターを訓練する上で有効な手法だ(関連記事「2017年版ブレークスルー・テクノロジー10:強化学習」)。こういった機械学習の手法が、アルファベット(グーグル)の子会社ディープマインドが開発したコンピューター・プログラム、アルファ碁(AlphaGo)の核となり、伝統的なボードゲームである囲碁を超人的なスキルで習得した。

グーグル、ウーバー、そして最近インテルに買収されたモービルアイなど多数の自動車メーカーが、自動運転中に起きたアクシデントを車が自律的に解決する手段として、強化学習に期待している。自動車メーカーらが想定しているのは、たとえば複雑な状況下ではどのように運転すればいいのかといった判断だ。全方向一時停止の十字路や、混み合った交差点を思い浮かべてほしい。そのような状況下で自動運転する際のルールを明確に規定するのは困難だ。しかし強化学習の手法を用いれば、自動運転車が自ら対処法を学習できるかもしれない。

スタンフォード大学を離れたカルパシーは、強化学習の取り組みを重要課題とするディープマインドで、インターンとして研究に取り組んだ。オープンAIでも、強化学習は大きな研究テーマとなっている。

カラパシーは、強化学習について記述した長文のブログ記事の中で、テスラのオートパイロット事業と強化学習の関係について触れた。強化学習は一般的に実験コストが高くつく研究には適さないとしながらも、新たな手法と(テスラが収集している)数多くの実験データを組み合わせれば、良い結果が得られるかもしれないと述べている。

カルパシーがテスラのAI研究部門長に指名されたことで、自律自動運転が抱える課題にこれまでとは異なった取り組みがされるかもしれない。それでも、問題解決への道のりはまだ遠い(参照「試験中の自動運転タクシーはしばらく試験中のままな理由」)。

(関連記事:TechCrunch

人気の記事ランキング
  1. This new image shows off magnetic fields swirling around a black hole 周囲の磁場くっきり、初撮影チームがブラックホール最新画像を公開
  2. What are the ingredients of Pfizer’s covid-19 vaccine? ファイザーの新型コロナワクチンの成分は?専門家が解説
  3. Error-riddled datasets are warping our sense of how good AI really is AIモデル評価用データセットに多数の誤り、実は優秀ではなかった?
  4. Covid-19 immunity likely lasts for years 新型コロナ、免疫は長期間持続か=米新研究
  5. So you got the vaccine. Can you still infect people? Pfizer is trying to find out. ワクチンを打っても マスクを外せない理由
ウィル ナイト [Will Knight]米国版 AI担当上級編集者
MITテクノロジーレビューのAI担当上級編集者です。知性を宿す機械やロボット、自動化について扱うことが多いですが、コンピューティングのほぼすべての側面に関心があります。南ロンドン育ちで、当時最強のシンクレアZX Spectrumで初めてのプログラムコード(無限ループにハマった)を書きました。MITテクノロジーレビュー以前は、ニューサイエンティスト誌のオンライン版編集者でした。もし質問などがあれば、メールを送ってください。
Innovators Under 35 Japan 2020

MITテクノロジーレビューが主催するグローバル・アワード「Innovators Under 35」が2020年、日本に上陸する。特定の分野や業界だけでなく、世界全体にとって重要かつ独創的なイノベーターを発信していく取り組みを紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. This new image shows off magnetic fields swirling around a black hole 周囲の磁場くっきり、初撮影チームがブラックホール最新画像を公開
  2. What are the ingredients of Pfizer’s covid-19 vaccine? ファイザーの新型コロナワクチンの成分は?専門家が解説
  3. Error-riddled datasets are warping our sense of how good AI really is AIモデル評価用データセットに多数の誤り、実は優秀ではなかった?
  4. Covid-19 immunity likely lasts for years 新型コロナ、免疫は長期間持続か=米新研究
  5. So you got the vaccine. Can you still infect people? Pfizer is trying to find out. ワクチンを打っても マスクを外せない理由
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.3/Spring 2021
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.3/Spring 2021Innovation Issue

AI/ロボット工学、コンピューター/電子機器、輸送、ソフトウェア、インターネット分野で活躍する13人の日本発のイノベーターを紹介。併せて、グローバルで活躍する35人のイノベーターの紹介と、注目のイノベーション分野の動向解説も掲載しました。
日本と世界のイノベーションの最新情報がまとめて読める1冊です。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る