KADOKAWA Technology Review
×
新型コロナ、ワクチンで免疫獲得か ハーバード大などがサルで確認
Robbie Ross | Pixabay
More vaccines have protected monkeys against covid-19, suggesting they might work in people

新型コロナ、ワクチンで免疫獲得か ハーバード大などがサルで確認

新型コロナウイルスに一度感染すると免疫が得られることがサルを使った実験で示された。 by Antonio Regalado2020.05.22

マカク属のサルを用いた研究により、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)にいったん感染すると再感染に対する免疫が得られることが示された。ワクチンはウイルスの感染を防ぐのにある程度有効なようだ。

新型コロナウイルスに感染すれば免疫を獲得できるのか? ワクチンはそれと同じ効果をもたらすことができるのか? 5月20日にサイエンス(Science)誌に掲載された2つの研究で、ハーバード大学ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターの研究者が率いるグループが、マカク属のサルを用いて上記の疑問に対する答えを示している。

研究チームが9匹のサルを新型コロナウイルスに感染させたところ、サルはヒトと同様に肺炎を発症した。5週間後、研究チームはサルを同ウイルスに再感染させようとしたが、今度は感染しなかった。つまり、サルは(おそらくヒトも)感染後、ウイルスに対する免疫を獲得するということだ。ただし、免疫がどれだけ持続するかは依然として不明だ。

その後、研究グループは4種類の異なる「DNAワクチン」をサルに試した。今回接種したのは、新型コロナウイルスを構成するスパイク状のタンパク質を生成させる遺伝的指令を筋肉に注入する、すばやく作れるタイプのワクチンである。ワクチンは35匹のサルを新型コロナウイルスから保護し、ワクチンを接種したサルから確認されたウイルスの量は、(未接種のサルに比べて)はるかに少ないことが分かったという。

これまでに、中国のシノバック(SinoVac)が開発したワクチンとオックスフォード大学が開発したワクチンの2つのワクチンも、サルに対する防御効果を同様に示している。総合的に見て、これらの研究結果はワクチンが有効である可能性を強く示唆している。

世界中の人々が待ち望むワクチンの完成に向けた開発競争において、科学者は生成すべき抗体のタイプや量など、適切な免疫反応について理解を深める必要がある。ハーバード大学の研究チームは、サルを用いた実験結果は、免疫と「相関性」があるのは何かを定義するための一歩だと述べている。

(関連記事:新型コロナウイルス感染症に関する記事一覧

人気の記事ランキング
  1. Three reasons robots are about to become more way useful  生成AI革命の次は「ロボット革命」 夢が近づく3つの理由
  2. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  3. Job titles of the future: AI prompt engineer 未来の職種:LLMを操る「プロンプト・エンジニア」は生き残るか
アントニオ・レガラード [Antonio Regalado]米国版 生物医学担当上級編集者
MITテクノロジーレビューの生物医学担当上級編集者。テクノロジーが医学と生物学の研究をどう変化させるのか、追いかけている。2011年7月にMIT テクノロジーレビューに参画する以前は、ブラジル・サンパウロを拠点に、科学やテクノロジー、ラテンアメリカ政治について、サイエンス(Science)誌などで執筆。2000年から2009年にかけては、ウォール・ストリート・ジャーナル紙で科学記者を務め、後半は海外特派員を務めた。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Three reasons robots are about to become more way useful  生成AI革命の次は「ロボット革命」 夢が近づく3つの理由
  2. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  3. Job titles of the future: AI prompt engineer 未来の職種:LLMを操る「プロンプト・エンジニア」は生き残るか
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る