KADOKAWA Technology Review
×
Earth’s Continued Warming Has Taken Us into Uncharted Territory

2017年に入っても続く地球温暖化による異常現象

過去最高の気温、前例のない海氷面の低下、過去400万年で最高の二酸化炭素レベル。2017年に入っても地球温暖化による異常現象が続いている。しかし、人類の選択、行動しだいで未来は変えられるはずだ。 by Jamie Condliffe2017.03.22

Nussiance high tides are even hitting Washington, D.C..
ワシントンDCにも打撃を与えている満潮は対処が難しい

気候変動で地球は未知の領域に入った。

世界気象機関による新たな分析によれば、2016年に発生した気候関連の「極めて異常な」測定値や事象は、2017年に入っても続いている。地球の将来に、広範囲にわたり多様に、しばしば予期できない影響を及ぼすだろう。

昨年、気候科学者はずっとハラハラした状態だった。海氷面は両極で記録的な低さに達した。大気の二酸化炭素レベルは400ppm(象徴的な閾値でしかないが)を上回り、過去400万年で最高レベルになった。海水面は急激に上昇し、海洋が温暖化、漁業資源に影響を与え、珊瑚を壊滅させた

確かに、世界気象機関の評価の全体的な主旨は、エルニーニョの気候サイクルが今や衰えているとはいえ、世界は温暖化しつつあり、これからも続くだろう、ということだ。世界気象機関の報告によると、2016年の世界の平均気温は産業革命以前より1.1℃高く、2015年の前回の記録を0.06℃上回った。

世界気候研究プログラムのデイビッド・カールソン・ディレクターは「2017年に強力なエルニーニョ現象が起こらなくても、世界中に別の顕著な変化が起こり、気候システムについて、人類の理解の限界を知ることになるでしょう。私たちは今まさに未知の領域にいるのです」と声明で述べた。

さまざまな面で、継続する温暖化により、同様のことが今後も続き、悪化するだけだ。もちろん、海氷がさらに溶け、さらに海面が上昇し、洪水を引き起こすだろう。また、世界的に気温が上昇し、干ばつが増え、作物が生育しにくくなる。

しかし、地球の激変は気候やその直接的影響だけに限らない。以前MIT Technology Reviewが指摘したように、複雑な社会的、副次的影響もあるだろう。気温の上昇は社会的緊張を増大させ、暴力の増加につながる。そうなれば経済的な安定は損なわれ、生産性が低くなり、国内総生産の大幅な低下につながりかねない。その結果、不平等が高まるのだ

また、カールソン・ディレクターが示すとおり、人類は以前、これほどの温暖化を体験したことがない。したがって、人類は全く準備できておらず、対処する設備も十分ではないことが他にもたくさん起こる可能性はある。

気候変動が人類を苦しめ続ければ失うものは明らかに多くなるのだから、迅速かつ積極的に対処すれば得るものは多い。米国政府はほとんど戦いから抜け出てしまったかもしれないが、他の国は戦いに戻る時であり、目前に何が起ころうと、準備を整える時だ。

(関連記事:World Meteorological Organization, “Trump’s Budget Would Mean Catastrophe for U.S. Climate Programs,” “パリ協定発効でも地球を救えない理由,” “気候変動で日本のGDPは35%減少、ロシアは419%増加”)

人気の記事ランキング
  1. Hydrogen could be used for nearly everything. It probably shouldn’t be.  水素は万能か? 脱炭素のための現実的な利用法
  2. Three reasons robots are about to become more way useful  生成AI革命の次は「ロボット革命」 夢が近づく3つの理由
  3. Cancer vaccines are having a renaissance がん治療のルネサンス到来か、個別化mRNAワクチンの朗報続く
タグ
クレジット Photograph by Mark Wilson | Getty
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Hydrogen could be used for nearly everything. It probably shouldn’t be.  水素は万能か? 脱炭素のための現実的な利用法
  2. Three reasons robots are about to become more way useful  生成AI革命の次は「ロボット革命」 夢が近づく3つの理由
  3. Cancer vaccines are having a renaissance がん治療のルネサンス到来か、個別化mRNAワクチンの朗報続く
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る