KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
In 2017, China Is Doubling Down on AI

人工知能分野への投資で、中国企業が米国を追い越す勢い

中国では、大手インターネット企業もベンチャー企業も、AI分野に資金を投じている。 by Jamie Condliffe2017.01.18

今年、中国は人工知能と拡張現実(AR)で、これまで以上に大きな波を作り出しそうだ。

変化を率いているのは中国最大の検索企業バイドゥだ。すでにAI研究で相当な進歩を果たしており、1月17日には、マイクロソフトの陸奇(ルー・チー)元取締役が最高執行責任者(COO)に就任すると発表した。陸新COOはマイクロソフトでアプリケーションとサービス部門を担当していたが、ザ・バージによると、仕事の大半は人工知能とチャットボットの戦略を展開することだった。バイドゥは声明で「AIにおける世界的リーダー」になる計画の一部として、陸COOを採用すると述べている。

一方、バイドゥのアンドリュー・ング主任科学者は、ARの研究所を北京に新設すると発表した。コンピューター・ビジョンと深層学習を利用し、バイドゥは現実世界に数百万人が利用できるレイヤーを追加するARですでに進歩を果たしている。しかし新計画では55カ所もの研究所により、ARのマーケティング・ツール(将来的には、医療や教育用アプリケーションもあり得る)を構築することで売上高を増やそうとしている。

ただしバイドゥがAIやARで独走しているわけではない。昨年末、中国の大手インターネット企業テンセント(8億4600万人のアクティブ・ユーザーがいる大成功モバイルアプリWeChatの運営会社)は、強力なAI研究所を作ることにしたと発表した。今年もバルセロナで開催予定の「神経情報処理システム」カンファレンスで成果を発表し始める計画だ。

小さな会社にも資金が投入される。KPMGによると、中国のベンチャー企業向け投資は、今年AI研究に集中しそうだ。フィンテック・イノベーションの記事で KPMGのエジディオ・ザレラ・パートナーは「アジアで人工知能への投資額は日に日に増えている」と述べた。

同様の成長は中国の研究コミュニティで進行中だ。日本の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の調査によれば、2015年の有力な学術系カンファレンスで発表されたAIの研究数で、中国は米国に僅差で2位だとわかった。米国政府の報告書によれば、中国の研究者が「深層学習」に言及している論文の発表数は、すでに米国研究者による発表数を上回っている。

サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙は、自信家の中国人の投資ポートフォリオで、AIとARは「絶対に持つべき」と分類している。真面目な話、今年、多くの米国テック企業は競合を見定めようと東の方を見ることになるだろう。

(関連記事:Bloomberg, Reuters, 「米国政府も警戒する人工知能で進む中国企業のイノベーション」 「バイドゥは人工知能をどうビジネスに生かそうとしているのか?」 “バイドゥが「電脳コイル」を実現”)

人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る